NO | 団体名 | 主な企画内容
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31 |
京都産業大学附属中学校(京都府) |
「生命の不思議に触れる環境生物学 -鴨川の水質・生物調査体験-」 京都市内を流れる鴨川水系の、本格的な生き物調査を実施。また、堤防上のセミ殻調査なども行い、京都の環境と変化の動向を探る活動を計画。 |
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「生命の不思議に触れる環境生物学 −鴨川の水質・生物調査体験−」 [5/19-2008/1]
日 時:水生生物・水質調査 平成19年5月19日(土)、6月16日(土)
源流域調査 平成19年7月28日(土)
補足調査 平成19年8月〜平成20年1月
場 所:鴨川(京都市)
参加者:中学生11名、高校生3〜10名、指導者2名
<内容と特徴>
「生命の不思議に触れる環境生物学」は
教室での授業では味わえない生命の不思議を
フィールドに出かけ、五感を使って体験・学習するものである。
鴨川水系の水質・水質生物調査は
源流から下流域にかけて足を運び、網・素手で水生生物を採集し
COD、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、リン酸態リン、水温、流速、川底の状態などを調査する。
<源流域で見つかった生物の感想>
石の表面のトビケラ類、カゲロウ類、ウズムシ類などを丁寧に探す
えらが外に出ているサンショウウオの幼生が見つかり、うれしかった。
ぶちぶちがあり、あしが4本あり、オタマジャクシとはかなりちがっていた。
ウズムシ類は、在来種のナミウズムシ(下流のものに比べ大きかった)だけが見つかった。
水がきれいである証拠。窒素やリンもほとんどなかった。
ニホンヒキガエルを見つけて驚いた。大きいし、赤や黄色の色が不気味だった。
ミミズクって、鳥のミミズクに似て突起が2つあって面白かった。
羽があって、セミにも似ていたが、とても小さかった。
ミヤマカワトンボやヒグラシの抜けがらも見つけた。
下流では見られない生物が次々に見られて、感激した。
水温測定 |
水質検査 |
鴨川源流「雲が畑」方面調査 調査風景 |
ニホンヒキガエル発見 |
ミミズク(昆虫)を発見 |
サンショウウオ類の幼生 えらが外にある(外鰓期) あしが4本ある |
<鴨川水系のウズムシ類>
従来ナミウズムシ1種のみが知られていた。
ナミウズムシ
イズミオオウズムシ
アメリカナミウズムシ
アメリカツノウズムシ
ナミウズムシ Dugesia japonica サンカクアタマウズムシ科
体長30mm以下。頭部の耳葉はあまり尖らない。
体色は暗褐色から明るい褐色のものが多い。
在来種で水質調査の指標生物となっており、
水質階級がⅠで比較的きれいな水に生息するとされてきた。
しかし、実際には水質のやや悪いところにも出てくるので
水質階級Ⅰ・Ⅱを指標するとした。
鴨川水系では、源流域、上流から中流域にかけて分布する。
イズミオオウズムシ Bdellocephala brunnea オオウズムシ科
体長2〜3cm。からだは太く、あたまは小さい。耳葉はない。
多くの文献では
ナミウズムシよりも上流の水温が低いところに生息するとされている。
従来まで谷川や湧き水など、とてもきれいな水域にしかいない
と思われてきたが、鴨川にも生息していることが判明した。
絶対数は少ない。分布域などまだ謎が多い。
アメリカナミウズムシ Girardia tigrina サンカクアタマウズムシ科
体に斑点があり、耳葉がかなり尖っている。ア
メリカ大陸原産だが、ヨーロッパやアフリカなど世界各地に帰化している。
京都でも鴨川水系で繁殖していることが判明、生息域は中流・下流域に偏る。
流れののないところ、ゆるやかなところにも多い。
また、住宅街の水路でも発見されている。水質階級はⅡ・Ⅲを指標している。
アメリカツノウズムシ Girardia dorotocephala サンカクアタマウズムシ科
体に小さい斑点がある。耳葉は顕著に尖り、角状に見える。
アメリカ大陸原産で、日本の河川での生息と定着を
京都産業大学附属中学高校生物部がはじめて確認した。
卵殻と孵化の様子も観察された。本種の自然下での繁殖確認は初。
生息域は在来種やアメリカナミウズムシよりも下流で
あまり水質のよくないところを好む。水質階級はⅢ・Ⅳを指標している。
調査のまとめ
1.アメリカナミウズムシは中流域から下流域にかけて、水質が悪化するにつれ、割合が大きくなる。
また、アメリカツノウズムシは、下流域に出現し、ナミウズムシと混生することはない。
両帰化種とも、鴨川に定着・繁殖していることが判明した。
2.ナミウズムシ類は従来水質階級Ⅰ(きれいな水)を指標するとされてきたが
種によって、指標する質階級は異なることが判明した。
つまり、ナミウズムシは水質階級Ⅰ・Ⅱ(少しきたない水)
アメリカナミウズムシは水質階級Ⅱ・Ⅲ(きたない水)
アメリカツノウズムシは水質階級Ⅲ・Ⅳ(大変きたない水)をそれぞれ指標することが判明した。
3.これにより、環境省の水生生物調査表に手を加え、独自の調査票を考案した。
<鴨川堤防の定点セミ殻調査>
毎朝、長い竿をもちいて、セミ殻を回収する。
この樹は胸高直径95cmのアキニレの大木で、堂々とした枝ぶりである。
多い年には、2000匹を超えるセミ幼虫が羽化した。
この樹から羽化した成虫は、市街各地に広がっていく。
また逆に、この樹をめざして飛んでくる成虫もある。
そういう意味で、この樹は
京都市街地のセミ羽化変動のセンサーとしての役割を果たしている。
本調査は、生物部が1997年より毎年調査してきた。
2007年「生命の不思議に触れる環境生物学」としても協力して
この調査に取り組んだ。
定点:京都鴨川葵橋北 樹種:アキニレ(胸高直径95cm) 調査期間:7月〜8月
調査のまとめ
1.2007年、クマゼミは少なかった2006年を下回り、過去最少を記録した。
アブラゼミも過去9位の少なさであった。
2.ここ11年のセミ羽化数の変動をみると、京都市街地のクマゼミ、アブラゼミともに減少傾向にある。
3.原因は、年々進行する都市の再開発、緑地面積の減少、街路樹の根際までの舗装、宅地開発などによる
京都市街地の緑地環境の悪化。セミがすみづらくなっている。
■別年度のレポート
2008年度 京都の森と水探検、調査 実施レポート
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