NO団体名主な企画内容
47 (株)今治.夢スポーツ ヒューマンディベロップメントグループ「しまなみ野外学校」(愛媛県) 「シーカヤックで海を渡り無人島を目指す 第3回「島の冒険キャンプ8泊9日」」
"最小限の道具で暮らす技と暮らしを学んだら、シーカヤックに詰めるだけの荷物を積み込んで仲間と共に無人島を目指す。“冒険する・チャレンジする・体験する”を通じて、当たり前の豊かさの根っこを探すプログラム。"

速報レポート1 『島の冒険キャンプ8泊9日』

開催日:2019年7月24日(水)~8月1日(木) 8泊9日
開催場所:しまなみアースランド里山野営地(2泊)・比岐島(3泊)・平市島(2泊)・しまなみアースランド(1泊)
参加者:小学生13人(▲男女比 男10:女3/▲学年別 小学4年5人、5年5人、6年3人/
▲地域別 愛媛県7、香川県1、福岡県1、愛知県1、静岡県1、和歌山県1、千葉県1)
    スタッフ3人・学生スタッフ2人・サポートスタッフ(島民含む)2人
◆1日目

全国から13人の小学生が集まり、島の冒険キャンプ8泊9日が始まりました。
開村式では、初めて出会う仲間たちと自己紹介を交わしながら、どんな仲間で冒険の旅に出るのか お互いを知る事から始まります。様々な期待を持って集まった仲間たち、これから始まる冒険を前に「どんな事を大切にしたらいいのか」みんなで話し合いながら、自分達で冒険のルールを決めていきました。そして、みんなで決めたルールは2つ『仲間を傷つけるようなことはしない事』『どんな時にもしっかりと話し合う事』を共有して、いよいよ冒険のスタートです。各自ザックを背負って、本日の野営地まで、まずは徒歩で移動します。野営地に着いてからは、私たちの暮らしに必要不可欠な水の使い方、テントの建て方や、冒険の旅で使う道具の説明、今後の暮らしの中での役割を決める班会議などを行いました。不安でいっぱいの中で始まったキャンプ1日目は、仲間とコミュニケーションを少しずつ取りながら、今治の暑さに体を少しずつ慣らしながらの活動となり、あっという間に過ぎていきました。




◆2日目

昨日に引き続き、島暮らしの準備のための活動がスタート。今日は朝から、マッチの擦り方、薪の話といった感じで、火にとことん向き合う1日が始まりました。マッチに初めて触れる子どもたちも、出来た仲間にアドバイスをもらいながら、徐々に火に慣れていきます。12時15分までに自分で火を起こし 昼食用のご飯を炊くことがみんなに与えられたミッションです。マッチに火を付けるのも初めてだった子どもたち、もちろん 薪に火をつけてご飯を炊くのは初めての経験です。現代の私たちの暮らしの中では、もうほとんど使う事のないやり方でご飯を炊くという事は、楽しくもありますが、なかなか思い通りにはいかないもの。ここで教わる事は、明日からの島暮らしの中ですぐに必要な事ばかりなのですが、気持ちは焦る一方で、なかなか理解できません。『火は下から上に燃える・薪は乾いていたほうがいいなど聴いて知ってはいるものの・・・』いざ、行動に移すと、ただただひたすらにマッチを擦り、火の付いたマッチを無造作に釜戸に投げ込んで・・・なぜ着かないのか、どうすれば着くのかなど想像して動作に移すという事が、なかなか出来ないのです。終いには、渡されたマッチは底をつき、仲間からマッチを譲ってもらうも上手くいかず、時間内にミッションをクリアできたのは2人だけでした。みんなの手元に残っていたマッチは全部で19本。もう一度 なぜ火が着かないのか一人一人が考え1人1本のラストチャンスに望みをかけます。最初から丁寧に、芝、粗朶、薪と組み直し、木々と向き合い、風を感じ取り、ご飯を炊きたいという強い思いを形に変えていきました。出来ない不安が失敗に対する恐れがみんなを襲いますが、仲間の言葉に励まされ、ご飯を炊きたいと言う思いを形に出来た時、子どもたちの顔は汗と煤で真っ黒で、自分を信じていいんだって顔つきに変化していました。自分で炊いた初めてのお米は、少し固かったり、柔らかかったり、焦げていたけど、お米を食べていたみんなの顔は、諦めそうだったけど最後まで向き合った自分をどこか誇らしげに思っている笑顔で溢れていました。当初のスケジュール内容から変更し、本気で火に向き合った1日。いよいよ、明日からは島の暮らしが始まるのです。





◆3日目

里山にある野営地で学んだ野外生活術を胸に、朝からベースキャンプを撤収し、いよいよ島へ出発です。暮らしの道具を防水バックに積み込んで、青い海と空の中みんなを乗せた船は今治の沖合5キロに位置する「比岐島」へと移動しました。比岐島に到着後、島唯一の島民に挨拶をして、班毎で生活の基盤を作りあげていきました。「全部できたら海に行こうよ」の掛け声と共に、みんな暑さにも負けず設営をがんばって準備がどんどん進んで行きます。火照った体を海で冷やすついでに、浅瀬を泳いでいる小魚や磯にいるカニを獲ったり…、島民の漁師さんの所に行って世間話をしながらタコをおねだりする子もいたりして…、里山では考えられないほど豊かな食材を初日からゲットしてくる子ども達でした。『豊かさとは、その想い』海と島の豊かさに包まれた子ども達は、やりたいを形に 色んなことを発見して次から次へと自分たちに必要な知識や技術をどんどん吸収していくのでした。




◆4日目

いよいよ、シーカヤックに乗る練習をする日が来ました。コミュニケーションの形も、仲間との時間から、個の時間、そしてバディとの時間へと変化していきます。シーカヤックのバディも決まり、陸上で漕ぎ方や艇への乗り降りなども学び、いざ海へと出ていくのですが、なんだか思うようには行きません。2人で一つのシーカヤックに乗り漕ぎ進めるも、まっすぐに進まないのです。前に進みたいのか、止まりたいのか、曲がりたいのか…相手の気持ちが全く分からなくて、自分もどうしたら良いのか分からなくて…。理由が分からないから、上手く進めないのは相手のせいだし、自分はちゃんとやってるし…、出来ないイライラが積もれば積もるほど、焦り、人のことなんてもうどうでも良くなってきて辞めたくなるし…終いには、涙をぽろぽろ流していました。それでも、まだ見ぬ無人島への想いを形にすべく、大きな声を出して声をかけあってみたり、ちょっと怒りながらも漕ぎ方を相手に教えてあげたり、自分達で答えを見つけ出していきます。シーカヤックに慣れるころには、腕も肩もパンパンで、クタクタになっていました。夕ご飯の前に、今日も火照った体を海で冷やし、食材を潜って探し、今夜は牡蠣をゲットしました。夕暮れの中、自分達が目指す無人島をみんなで見つめ、やっぱりあの島へみんなで行こうと気持ちを固めます。このままでは、まだ海を渡れない事、明日、再び練習して比岐島1周の冒険へ出かける事を伝えました。みんなの中の一人から、信じあえる仲間になるためには…自分を信じきるには…動きながらぶつかり合いながら、自分たち自身で感じるしかないのです。




◆5日目

無人島を目指すために、今日もシーカヤックの練習の日が続きます。自信をつけるためにも、無人島へ渡る前に、お世話になっている比岐島を一周する旅に出るのですが、海を横断するための練習も沢山しなくてはいけません。海を漕いでいる時に、仲間が海に落ちたらどうするのか、無人島にはどんな機材をシーカヤックに積み込んでいかなければならないのか、そんなことを学びながらの島巡りです。まずは、シーカヤックで海に出て、仲間が海に落ちた時にどうしたらよいのかを実際に体験しながら学んでいきます。1つの班に3艇から4艇ずつで班毎に分かれて挑戦しますが、一所懸命に仲間を助ける艇もあれば…何をしたらよいか分からず離れた場所でボーっとしている艇、ついつい自分達の艇に入った水に気を取られ相手の事なんてこれっぽっちも考えず自分達のことばかり気にしている艇などなど。
毎日行われる朝と晩のミーティングで、みんなは口々に「もっと協力して暮らしを作る」「仲間が大変な時は手伝う」って言葉では伝えてくれているのですが、実際の行動と言葉が全く伴っていないのです。ここに集う13人の仲間たちは、みんな体力も違うし、経験も違います。それでも、今日まで助け合って暮らしてきた仲間であり、共に旅をする仲間であり、なんといっても『人を傷つけたりせず、命を大切にする』という旅のルールもみんなで決めた仲間なのです。本当に苦しい時にこそ、相手を思いやり、助け合うことでしか、無人島へは渡れないことをみんなで活動を振り返りながら、話し合いました。本当に仲間を思うという事は何なのか…本当の協力とは何なのかを考え感じながら、今日も空いた時間には海で泳ぎ魚を狙い、火を起こしご飯を作ります。そして、ついに 明日無人島へと渡る事を信じて、潮の流れや天候を確認しながら、明日の行動計画も立てて今日も1日が終わっていきました。





◆6日目

いよいよ、無人島を目指す日の朝を迎えました。準備は万端。仲間と協力することを手に入れたみんなは、出発の時間を目指して、朝ご飯を作る人、荷物を片づける人、声を掛け合いながら、自分に出来る事を見つけて作業を進めていました。そして、予定通りに出艇!ひと漕ぎひと漕ぎ進んで行くのですが、目指す無人島は目で見ていたよりもずっと遠くに感じて、本当に本当にきつかったのです。手には豆が出来るし…海は湾から出ると波が大きくなって漕いでも漕いでも進んでいないような気がするし、ちょっぴり船酔いもするし…。みんなで漕いでいるつもりでも、振り返って後ろの艇を見てみると、いなかったり、ぶつかり合っていたり。シーカヤックを漕ぎながらも仲間同士で言い合いもしたりしながら、それでも諦めずに歯をくいしばって、みんなで渡り切ったのでした。みんなで掲げた無人島到着時間は過ぎてしまいましたが、無人島の『平市島』へとついに渡りきることが出来ました。『平市島』に到着すると、みんなは仲間と協力して自分達だけで生活の場を作りあげ、無人島の海岸沿いへ探検に出掛けました。探検というよりも、食料の調達です。昨日とは違う島ですから、どんな生き物たちに出会うのかワクワクを胸に、海を泳ぎ獲物を狙いました。今日は 海に沈んだ筒からアナゴをゲットし、大きな岩の陰に隠れているタコも見つけました。バケツの中に入れていたアナゴは、みんなが他の生き物を探しに行っている間に逃げてしまったけど、今夜の夕食はタコ飯にタコ刺しでした。静かに上がる釜戸からの煙を囲み、島にはみんなの笑い声と笑顔と自信で溢れていました。




◆7日目

島暮らしもいよいよ後半戦!自由を手に入れた子どもたちは 朝から無人島生活を満喫しています。「ウサギの足跡があるぞ」と島に落ちている物で、ウサギを夕ご飯にするために落とし穴をいくつもいくつも作っている子。「ビッグフットを見つけたぞー」って、やはり島に落ちている物で槍を作りビッグフット狩りに出掛ける子。もちろん、海の生き物を狙おうと、こちらも落ちているロープとペットボトルでアナゴやタコを獲るための仕掛けを作って海の中へ沈めている子。想像力を全開に、子どもたちの豊かさは無限に広がっていきます。朝から晩まで磯を歩き、海を泳ぎ、魚を狙うも取れず、牡蠣やウニなどの食べられる物を探したり、挙句の果てにはイソギンチャクやアメフラシ、ヒトデを捕まえて遊んでは、これも食べられるかなって笑いながら話していました。いっぱい泳いで疲れたころには、砂浜に上がり鬼ごっこをしたり、相撲を取ってみたり、槍を持って踊っていたり、火を囲んでみんなでゴロゴロ過ごしてみたり…。みんな自然に声を掛け合い 役割を分かち合いながら生活をし始めているため、以前のような口喧嘩は減り、仲間を認め助け合いながら暮らしを作りあげているのです。真っ黒に日焼けして、虫にぼこぼこに刺されながらも、笑って駆けずりまわった島の生活も明日で最後です。夕食には、みんなで獲った食材と余った食材で小さな島のパーティーをして楽しみました。もちろん、明日は最難関の四国本土までの横断が待っているのですから、行動計画も念入りに立て、準備は万全です。




◆8日目

朝から、島での最後のご飯を済ませ、出発の準備を着々と進めていく子どもたち。私たちの冒険の旅を見守っていてくれていた大きな島、四国本土の今治を目指して、いよいよ横断です。照り付ける太陽の暑さは変わらないものの、風も弱くみんなの見方になってくれました。冒険の集大成、『本土目指して仲間と共に海を渡りきる』。班の航海士たちは地図と潮の流れから、行く先と進む方向を念入りにチェックします。ひと漕ぎひと漕ぎやはり進んで行くのですが、潮の流れもあり、冒険の疲れと無人島を旅立つ寂しさもあり、その上、暑さがみんなの体力を奪います。途中で「少し休もうか?」と何度も航海士たちがみんなに声をかけ水分補給とエネルギー補給を促しながら、仲間が仲間を思いやり、最後の力を振り絞り漕ぎ進んで行きました。「声を出すとパワーが生まれてくるんだ」ってみんなに力が出る方法を教えてあげる子もいたりして、到着予定時刻の12時に、無事に四国本土の今治へ戻ってきました。到着後は、共に旅をしたシーカヤックを片付け、蛇口をひねればお湯が出る久しぶりの真水でのシャワータイムも満喫しました。そして、アースランドの全てが整えられた施設に戻り、蛇口から水が出て、電気がある暮らしに戻り、冒険で使用した道具たちを洗って片付けを行い、冒険の旅を振り返る時間を過ごしました。




◆9日目

8泊9日の冒険キャンプも、最終日。冒険の旅の締めくくりとして、班毎で冒険の報告書を作成しました。閉村式には、家族も来られ、冒険の報告と保護者の方からの冒険の旅に関する質問コーナーを終え、無事にキャンプは終了しました。キャンプの初日に「これから始まる旅はみんなで作っていくんだからね」って言われて、少しびっくりしたけど、自然の中にどっぷり浸かり、水を大事に使い、火を起こしたり、獲物を獲ったり、朝から晩までよく笑い、よく話し合い、時に喧嘩をして怒ったり、涙流したりして過ごした日々は、みんなに本当の豊かさとは何なのかをほんの少しだけ教えてくれたような気がします。






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