NO団体名主な企画内容
13 社会福祉法人 扶助者聖母会 星美ホーム(東京都) 「星美ホーム百名山 〜海抜0mからの挑戦〜」
"海抜0m(海)を触ってスタートし、その間に百名山を2つ以上登り、反対側の海をゴールするか、スタート後、百名山を3つ登る。移動は全て徒歩。テント泊、自炊し、約1週間〜10日かけて活動する。"

速報レポート1

実施日  8月2日(木)~8月11日(土) 
開催場所 新潟県糸魚川市~白馬岳~五竜岳~鹿島槍ヶ岳
参加者数 中学生 10人   
スタッフ 当施設職員3名 
活動目的

野外活動という逃げ場のない非日常の中で、自分自身へのチャレンジ、グループとしてどのように活動していくかなどを考え、向き合う機会とする。
困難を乗り越えた後の達成感、充実感、自己肯定感、仲間意識などを体験的に学ぶ場とする。

活動内容

海抜0m(海)を触ってスタートし、その間に百名山を2つ以上登り、反対側の海にゴールする
「横断スタイル」か、海抜0m(海)スタート後、百名山を3つ以上登り、その山頂をゴールとする
「山頂ゴールスタイル」。移動は全て徒歩。テント泊、自炊し、ゴールまで交通機関は一切使用しない。
今回は、「山頂ゴールスタイル」を子ども達が選択し、新潟県糸魚川の「ヒスイ海岸」の海を触ってスタートし、白馬岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳の3つの百名山を登頂した。

8月2日(木)
東京から車で新潟県糸魚川市の「美山公園キャンプ場」へ。明日からの活動に備え、近くのスーパーで5日分の食料・行動食などを購入し、各自のザックに詰め込む。

8月3日(金)晴れ
 ヒスイ海岸 ~ 平岩駅 歩行距離約28km 
 午前3時50分 ~ 午後3時34分  活動時間:11時間44分
糸魚川市「ヒスイ海岸」まで移動し、いよいよ活動スタート。少しずつ明るくなり始める中、国道148号線を歩き続ける。グループで進まなければならず、なかなか思うように進まない。暑さ、疲労、荷物の重さうまくいかないグループへの葛藤などを抱え、それでも進んで行く。途中から峠道に入り、
そのアップダウンに体力も気力奪われそうになりながら、約12時間かかって今日の目的地に到着。
平岩駅付近にてテント泊。

8月4日(土)晴れ
 平岩駅 ~ 蓮華温泉 歩行距離約21km
 午前3時20分 ~ 午後1時5分 活動時間:9時間45分
白馬岳登山のために、その登山口である蓮華温泉まで歩く。通常はバスで行くルートだが、この百名山は全て徒歩。ひたすら続く上り坂をグループで歩いていく。昨日のミーティングで「どのようにしたらグループとして進めるのか」を話し合ったはずだが、なかなかうまくいかない。
蓮華温泉キャンプ場にてテント泊。

8月5日(土)晴れ
 蓮華温泉 ~ 白馬岳 ~ 白馬岳頂上山荘
 午前3時20分 ~ 午後12時51分 活動時間:9時間31分
登山のコースタイムは7時間だが、グループでの登山、テント・食糧などのフル装備の荷物を持っての登山なので、足取りは重い。それでもコースタイムより2時間30分程度の遅れで本日の目的地に到着。
白馬」頂上山荘にてテント泊。









8月6日(日)晴れ
 白馬岳頂上山荘 ~ 大雪渓 ~ 猿倉 ~ 五竜テレキャビン駐車場
 午前4時20分 ~ 午後13時46分 活動時間:9時間26分
白馬岳頂上山荘は夜通し非常に激しい風が吹き荒れていた。早朝もその状況は変わらず、テントの撤収に苦戦。しかし、スタートしてからは天候にも恵まれ、快調に進む。大雪渓も無事に通過し、猿倉へ。
今回の百名山は、縦走もできるのだが、白馬岳から五竜岳のルート、五竜岳から鹿島槍ヶ岳のルートはいづれもキレットなど岩場が切り立っており、中学生では危険だろうと判断し、1回ごとに登山口を変えて登り直すという過酷なルートになっていた。猿倉に下山後、次の目的の山、五竜岳の登山口である五竜テレキャビンの駐車場を目指して、約16km徒歩で移動。フル装備、しかもグループで時速6km程度で歩き続け、約2時間30分で歩き切った。
五竜テレキャビン 駐車場付近でテント泊




その日のミーティングで、グループに対する力を子ども達が感じたという発言がみられた。
しかし、この百名山のもう一つの醍醐味は、登山の前日のミーティングで「リタイヤ宣言」と称し、自分で「リタイヤするか、しないか」を決める時間がある。つまり「あきらめないか、あきらめてしまうか」、「がんばれるか、がんばれないか」を自分の意志で決める。全員が顔を伏せ、お互いの状況がわからない中で、スタッフの声に耳を傾ける。
「この百名山、今日でリタイヤする人は手を挙げてください」。全員、顔を伏せたまま、3名の子どもの手が挙がった。全て中学1年生だった。
今年は3名がリタイヤとなった。しかし、これは決して無駄なことではない。リタイヤした者は、期間中頑張り続ける他の子どもの姿や表情を見て、後悔や自分を見つめることになる。あきらめた自分を誰よりも知っているのは自分であり、その悔しさは来年につながる。中学1年生や2年生でリタイヤした場合でも、中学3年生になってリタイヤした者は、過去に1度もいない。

8月7日(月) 雨・曇り・やや晴れ
 午前3時10分 ~ 午後11時6分(五竜山荘まで)
 五竜テレキャビン ~ 五竜山荘  7時間56分
 五竜山荘 ~ 五竜岳 55分 
 五竜岳 ~ 五竜山荘 45分    活動時間:9時間36分
やや天候が悪い中、リタイヤ組を残し出発。リタイヤ組の今後は、伴走車のスタッフと待機することになる。
見上げれば立派なゴンドラがあるのだが(出発時間にはもちろん動いていない)、もちろん徒歩。見上げればひっくり返りそうなゲレンデを約2時間30分かけて歩き、ようやく登山口へ。しかし、リタイヤを自ら拒否し、目標に向かってまとまったグループはすごい。ほぼコースタイムで五竜山荘まで。そこからテントを張り、五竜岳を制覇した。あいにく景色は雲に隠れて見られなかったが、山頂もグループもほんのり明るく、穏やかな印象だった。
五竜山荘にてテント泊。




8月8日(火) 晴れ
 午前4時 ~ 午後9時6分(五竜テレキャビンまで) 
 五竜荘 ~ 五竜テレキャビン 
 五竜テレキャビン~ 青木荘キャンプ場 約9km  午前10時20分~午前11時20分 
 活動時間:7時間6分
心配された台風の影響もなく、コースタイム以上の速さで下山。そして、そこからまた今回の最後の山、鹿島槍ヶ岳を目指し、青木荘キャンプ場までの約9kmを歩く。猛暑の中、それでもペースは落ちず、時速4.5kmで歩き、到着。青木荘キャンプ場 テント泊。




下山時ももちろん徒歩→

明日、最後の山を控え恒例の「リタイヤ宣言」。誰も手を挙げず、全員がゴールを目指すことが決まった。

8月9日(水) 曇り・晴れ
 青木荘キャンプ ~ 大谷原登山口 ~ 冷池山荘 ~ 鹿島槍ヶ岳 ~ 冷池山荘
 青木荘キャンプ場 ~ 大谷原登山口   午前2時 ~ 午前4時10分
 大谷原登山口 ~ 冷池山荘       午前4時30分 ~ 午前9時
 冷池山荘 ~ 鹿島槍ヶ岳        午前10時15分 ~ 午前11時37分

「明日、鹿島槍ヶ岳に登頂するために、出発時間を午前2時にしたい」と子ども側から提案があり、登山口まで約9kmの道に大きな危険がないこと、伴走車がいることから午前2時出発となる。登り坂だが相変わらずグループのペースは乱れない。登り坂を計算して3時間と見越していたが、2時間足らずで登山口まで到着。
鹿島槍ヶ岳の最初の急坂を乗り切り、赤岩尾根を経て4時間30分で冷池山荘へ。テントを張り、鹿島槍ヶ岳を目指す。午後11時37分、山頂に立ち、今年の百名山のゴールとなった。





その日の夕食は冷池山荘の夕食とする。今までレトルト食品やウィダーインゼリー、カロリーメイトなどの行動食だったため、その食事に絶賛の声が上がった。日頃の食べ物のありがたさを実感する子どももいた。
冷池山荘にてテント泊。

8月10日(金)
 冷池山荘 ~ 大谷原登山口
ここまで下山し、伴走車が迎えに来る。車に乗り込み青木荘キャンプ場へ。安堵、達成した喜びなど様々な感情が読み取れる。
青木荘キャンプ場にて今回の活動のふりかえりを実施。

8月11日(土)
 JR茅場駅より青春18キップで東京・赤羽へ。帰京。

2005年からこの活動を開始し、今回の百名山で34個の山を登ってきた。毎年多くのドラマを見せてくれるこの活動。今回も子ども達の心を大きく揺さぶったように思う。

子どもの感想より (抜粋・原文のまま)

  • 「初めは簡単だと思っていたけど、やってみると足や体が痛くなって弱音を吐きそうになったけど、最後まで登ことができた。もうリタイヤしようという気持ちもあったけど、最後まであきらめず、やりきるという気持ちが打ち勝ったんだと思いました。達成感とうれしい気持ちがいっぱいでした。」
  • 「この2年間の達成感、苦しい思いを忘れず、これからの日常生活に活かしていけたら良いと思います」
  • 「僕は毎日普通のご飯だと思っていたが、百名山でご飯のありがたさを知った。山荘でご飯を食べたら一気に味の世界が広がったと感じがし、おいしいご飯が毎日食べられるということがとてもありがたいということに気づいた。」
  • 「クリアしたときの達成感はすごかった。」
  • 「リタイヤしたときはやっと終わったといく気持ちになりましたが、今考えるとリタイヤしなければよかったという後悔の気持ちが出てきます。」
  • 「リタイヤしたことを後悔しています。体力ではなく、精神やメンタルの面で負けたことです。みんなと最後の頂上に登ることができず、気持ちがついていけなかったことは自分でもとても残念だと思っています。だからこそ、ここで学んだことを日常生活に活かして、来年は絶対にクリアしたいと思っています。」



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