NO団体名主な企画内容
23 カメハメハ王国(静岡県) 「相良自然環境塾 -博士と過ごす発見の3日間-」
相良の川・池・沼などで「固体から遺伝子へ」を課題に生物を採取して個体を観察。さらに「個体から生態系へ」で、行動学、生態学といった体系的なプログラムに基づいた自然体験学習をおこなう。

「相良自然環境塾 −博士と過ごす発見の3日間−」 検証・ミシシッピアカミミガメ [7/25-27]

日  時:
場  所:



参加者:
講  師:






2008年7月25日(金)10:00〜27日(日)12:30
牧之原市相良公民館
牧之原市勝間田川(調査フィールド)
牧之原市波津区コミュニティーセンター(宿泊)
牧之原市子生まれ温泉(入浴)
子ども30名、ボランティア9名、スタッフ9名
亀崎直樹(東京大学大学院 客員助教授・京大博士・国際自然保護連合 ウミガメ専門委員・NPO法人日本ウミガメ協議会 代表)
花崎勝司(大阪自然史博物館 淡水魚専門学芸員)
小菅康弘(NPO法人カメネットワークジャパン代表 淡水カメ専門)
中本真理子(NPO法人日本ウミガメ協議会 研究員)
川下優里奈(NPO法人日本ウミガメ協議会 研究員)
宍戸康太郎(NPO法人日本ウミガメ協議会 研究員)
 <プログラム>

--- 7月25日 ------------------
10:00  開講式:参加者30名でスタート 来賓:田久副市長
10:30  講義:この講座の目的の説明及びチーム分け(相良公民館)
12:00  昼食
13:00  カメ罠仕掛け(勝間田川流域5ヶ所30個)
17:30  夕食(相良公民館)
18:30  解剖(深海魚及び勝間田川での捕獲魚アユ等)
20:30  入浴(子生まれ温泉)
22:00  講義:深海魚について(花崎氏)
23:00  就寝

--- 7月26日 ------------------
06:00  起床
06:30  朝食(波津コミュニティーセンター)
08:20  カメ罠回収
12:00  昼食
13:00  各チーム毎に捕獲物を検証(相良公民館調理室)
16:00  結果発表(チーム課題別)
17:20  海上遊覧体験(第三永福丸)
18:00  コミュニケーションパーティー(相良公民館駐車場)
19:30  入浴(子生まれ温泉)
09:00  議論:淡水カメの生態・議論(波津コミュニティーセンター)
11:00  就寝

--- 7月27日 ------------------
06:30  起床
07:00  朝食(波津コミュニティーセンター)
08:30  講義・まとめ(相良公民館)
11:00  亀崎氏による講話(参加者父兄も参加)
12:00  閉講式
12:30  全日程終了
13:00  昼食後解散

 <活動のねらい>

今回の環境塾は、「ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)が本当に在来種の生存を圧迫しているかどうか」を検証する事が目的。 現在、日本全域で問題になっている「ミシシッピアカミミガメ」の駆除という事に対して、実際に捕獲して、他の在来種であるクサガメ・イシガメとの運動能力の比較、嗜好の近似性などをあきらかにして、野生生物保護と生物多様性について考えた。

 <レポート・1日目>

田久副市長をお招きしての開講式を経て、亀崎氏による環境塾がスタート。
本年の環境塾は当初菅ヶ谷川がターゲットだったが、降雨不足によの水量の低下と水温の上昇が見られ、勝間田川に変更して行われた。
今回の環境塾のテーマは「ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ=外来種)が本当に日本固有種(イシガメ、クサガメ)の存在を脅かしているか?」という事がテーマ。

勝間田川流域5ヶ所において、各餌(魚アラ、トリガラ、豚肉、レバー、トリのカラアゲ)の入った罠を仕掛けて、上記3種類のカメの嗜好の確認を行い、その後、捕獲亀を使い、種別の性質を調査して、共存が可能かどうかを判定する事にした。 開講式の後、参加者のチーム分けを行い、餌の買い出しにスーパーに行って、その後昼食。午後からは勝間田川を下流からカメの罠を仕掛けてゆく。

勝間田川下流域は、過去に調査を行った時には、かなりのミシシッピアカミミガメの汚染が進んでいる事が確認され、1ヶ所1個の罠に1晩で10匹以上のアカミミガメが捕獲されていたので期待が高まる。
中流域2ヶ所も過去に調査をした事がある区域で、そのあたりまでアカミミガメが分布しているところまでは分かっている。
上流域2ヶ所のうち、1ヶ所は、過去に行った事があるが、1ヶ所は今回が初めてである。
罠の仕掛けと同時に、子供達は遊びながら、また花崎氏と久保田は、投網により、魚類の捕獲をして、アユの遡上や魚の分布を調査する。

17:00頃には全ての場所での罠の設置が終了して、夕食後は公民館調理室で焼津市小川漁協の協力により、得られた深海魚と投網で収穫したアユなどの解剖が行われ、魚の気管や構造などについての実習が行われた。

20:30には終了して、相良子生まれ温泉にて入浴後、宿泊場所である波津コミュニティーセンターに入り、「深海魚の生態」について講師の花崎氏より講義を受け、23:00に初日の全ての日程が終了した。
途中(21:50)、海岸巡回中のスタッフより アカウミガメの上陸連絡があったものの、上陸位置が悪かったのか 左側の防潮堤に阻まれて産卵できず、22:10降海した事が報告された。貴重な観察チャンスを逃した。
相良自然環境塾は 各回毎にテーマが決まっており、今年は川のカメを取り上げて行っているが、アカウミガメの上陸産卵を見学する事も主要な目的でもある。

 <レポート・2日目>

環境塾2日目の朝は忙しい。6:00に起床し 朝食を済ませ、早速昨日仕掛けた罠の回収に向かう。車中、どんな種類の生物がどのくらい入っているか 皆期待に胸を膨らませている。
勝間田川の下流域から上流域まで順番に罠をはずして行く。一昨年大量のアカミミガメが捕獲された下流域での捕獲頭数は少ない。わずかなアカミミガメとザリガニなどが捕獲された。最近の降雨不足と水温の上昇が原因かと思われるが理由は不明。
中流域に行くと、水が澄んでおり、生物が居ないように思ったが、アユ、アカミミガメ、クサガメ、イシガメ、スッポン、ナマズ、ウナギなどが捕獲され、夕刻バーベキューを予定していた為、解剖後の食材としては最高の獲物をゲットした事に皆、喜んでいた。

午前中に全ての罠の回収が終了して公民館に戻り、昼食後 各チーム毎にテーマを決めて取り組んだ。解剖するチーム。アカミミガメとクサガメの能力の違いを比べてみるチーム。スッポンに噛みつかせてスッポンの噛む力をあらゆる形で測定するチーム。各カメをひっくり返しておいて、起き上がる速度を計測するチーム等。
途中、スッポンに噛みつかれて病院に行った子もいたが、実際にスッポンを河川から捕獲してきて そのスッポンに噛みつかれるという貴重な経験は、彼女の今後の人生にとって素晴らしい思い出となるであろう。

夕刻、坂井平田漁港所属の第15永福丸船長の矢部芳孝氏のご厚意により、漁船に乗って、海上から陸地と河口を観察するというチャンスをいただいた。
全員、ライフジャケットを着用して、2隻の漁船に分乗して、萩間川河口や海岸浸食の様子などを海上から観察した。
その後、坂井平田漁港内の市場を借りてバーベキューを行い、参加者の懇親を深めた。勿論、罠にかかった、ナマズ・ウナギ・ドジョウ・テナガエビ・カニ・アユなども学習の為に使用された後は、食べてあげるのが礼儀が持論の亀崎氏により調理され、子供達の胃袋に収まった。
子供達はナマズなどは普段食べた事が無いので、「ナマズ」というと食べないのだが、「ウナギ」と言えば間違いなく食べる。子供達には、「ウナギ」という「ナマズ」は、美味しいとの評判を得た。ちなみに、美味しさの順では、ウナギ→ドジョウ→ナマズの順番であった。
また、「ナマズ」が臭いのは、皮と肉の間にある「油」が臭いという事もわかり、皮を剥いて、そこの油を調理して落とせば、十分食べられる魚であるという事も解った。

その後、子生まれ温泉で入浴後、21:00過ぎに宿泊場所である、波津コミュニティーセンターに戻り、2日目の夜は、淡水カメ専門の小杉先生による講義である。
淡水カメの分布や生態を説明した後、いよいよ議論が始まる。「外来種であるミシシッピアカミミガメを駆除するのか?否か?」の問題である。

この議論は、過去3年間続いており、小杉氏は「外来種であるアカミミガメが近年河川で急激に繁殖し、日本固有種であるイシガメ・クサガメなどの生息を脅かしている」との時説を持ち、アカミミガメの駆除をしなければならないという立場をとっている。
一方、環境塾初回から参加の増田君(中3)は、アカミミガメの駆除に否定的であり、「駆除しないで、アカミミガメのサンクチュアリ」構想を展開し続けている。その論争の科学的根拠を探る為、今回の環境塾では河川における捕獲カメの分布と餌による捕獲カメの種類に着目して、もし、同じ好みのエサの場合だったら両者は共存不可能という事になるのである。
また、今回は河川の護岸工事により、淡水カメの越冬場所が奪われた可能性についても指摘され、今後の調査の課題となる事も確認された。

と、そんな議論も終盤に近づいた頃、海岸巡回中のスタッフから連絡が入り、またとても前日の上陸場所と同じ場所に上陸してきたものの、場所が悪く、降海との事で、一同非常に残念がっていた。
23:00就寝で2日目の全ての日程を終了した。

 <レポート・3日目>

最終日の起床は、皆疲れているので6:30。布団や身の回りを整理して7:50、相良公民館へ出発。途中、前夜のアカウミガメの上陸痕跡を確認した。
公民館到着後、早速この2日間のまとめに入る。

外来種であるアカミミガメが日本固有種であるイシガメやクサガメを駆逐している証拠は残念ながら得られなかったが、基本的にエサの好みは同じである事がわかった。つまり、エサの好みが同じであるという事は、生息数が増加すれば、エサの取り合いになるわけで、生命力の強い方が生き残るという構図になる。

また、今回あきらかになった事は、産卵場と生息場と越冬場の問題。生息場は河川であるが、産卵場は畑や雑木林の中、そして、越冬場は、河川の護岸の横穴などがあげられるが、それら全てが近隣に存在する事が、イシガメやクサガメにとって重要である。アカミミガメとクサガメ・イシガメの競合については、もう少し調査が必要という事になり、亀崎氏から、冬における越冬調査の課題が提示された。

当初のスケジュールでは、10:00から参加者父兄も交えて、3日間の成果を発表する予定だったが、今回の参加者の低年齢化(平均年齢10歳)により、急遽予定を変更して、亀崎氏の講話に変更された。

しばしば自然保護を考える場合、階層間のトラブルに見舞われる事がある。つまり、我々が基本的に「個」というものを基準に考えた場合、その下層には、「細胞」や「DNA」が存在し、「個」の上層には、「家族」「地域」「国」「地球」「環境」などが存在する。当然「個」の価値観と「地球」の価値観は違う。
例えば、亀崎氏の奥さんが亀崎氏の体臭に寄ってくるハエに対して殺虫剤をかけたとする。亀崎氏も当然ハエは嫌いである。しかし、ここで亀崎氏は悲鳴をあげる。何故かというと、亀崎氏のDNAが悲鳴を上げるという事である。そしてお互いに喧嘩になった。つまり、これは、亀崎氏は「DNA」の階層で喧嘩をし、奥さんは「個」で喧嘩する。これが、階層間のトラブルなのである。

この環境塾をとおして、「環境」保護という階層を理解し、我々が日々暮らす「個」の階層との矛盾点を理解する事により、次世代を担う青少年育成に少しでも寄与できればとの思いがあった。
・・・が、本来、そこまで話をもってゆきたかった亀崎氏だが、平均年齢10歳では少し無理があったようだ。来年度からの環境塾生募集についての懸案事項となった。最後に、閉講式が行われ、西原市長からご挨拶を頂き、参加者全員に修了証を交付して終了した。そして、参加者父兄と塾最後のカレーライスを食べて解散した。



プログラム検索に戻る