NO団体名主な企画内容
9 一般社団法人 サイエンスエデュケーションラボ(千葉県) 「科学の力で無人島サバイバルキャンプ」
無人島を模したフィールドで用意された最低限の道具と、事前に学んだ原理を活用して、試行錯誤しながら与えられたミッションの解決に取り組むキャンプ。人類が自然を観察・探求してきた歴史と技術に理解を深めるとともに、子どもたちの今後の自然観察の探求につながるよう促す。

速報レポート1 科学の力で無人島サバイバルキャンプ

活動日   2022年7月3日(日)
活動場所  手作り科学館 Exedra(千葉県柏市)
参加人数  10:00~11:30 参加者8名、スタッフ7名
      13:00~14:30 参加者9名、スタッフ7名
      15:30~17:00 参加者8名、スタッフ7名
      計 46名
実施概要

 2022年7月3日(日) 千葉県柏市の手作り科学館 Exedraにて、第1回の活動をおこなった。室内での取り組みのため、感染症対策として、参加者を3グループに分け、同内容で3回にわけて実施した。参加者数は、10:00~11:30の回が8名、13:00~14:30の回は9名、15:30~17:00の回は8名、スタッフは各回7名で実施した。少人数であったため、参加者同士の交流を促すスタッフの働きかけを効果的に行うことができ、特に1人での参加で不安感を抱えていた参加者にとっては友人ができて心理的安全性が高まったように感じられた。

 この日は、全4回のカリキュラムのうちの第1回にあたる活動日だった。第3回の合宿に向け、心構えを説き、全4回を通じた目標を設定し、『科学の力で無人島脱出』ボードゲームを使って、問いを立てて考える練習をおこなった。また、スタッフの紹介や合宿の持ち物・宿泊場所の説明、体験の場に関する情報共有も実施した。

研究のススメ

 自然体験活動では、活動内容や活動中の子ども達の様子、活動前後での参加者の変化に注目がされがちである。ただ、多くの場合、主催者には自然体験活動を通じて考えてほしいことや育みたい能力・思考プロセスなどを有していることがほとんどだ。しかし、漠然と活動し、体験中に指導を受けても、子ども達に指導を受け入れる準備ができていなければ、せっかくの体験や指導の効果が十分に発揮されない可能性がある。
 したがって、事前に目的意識を育み、活動中に注目すべきポイントを共有することで、子ども達へ主体的に考え行動する準備を促すことは、活動の目的を達成するために極めて重要である。

 我々は今回、取り組みの中で最も重要なポイントを、子ども達が主体的に「研究をおこなうこと」と定めた。そこで、研究をおこなうとはどういうことか、研究のテーマを各自が見つけるための方法、必要な道具の選び方などをレクチャーした。また、研究することができそうなテーマを考えるために必要な情報を共有するため、合宿先で見られる自然現象について、現地の写真を使って紹介した。例えば、宿泊する山荘の庭では焚火ができ、BBQを予定していること、そのために必要な炭を作ることも可能なこと、千葉県より標高が1,000 mほど高いため、平均して約6℃、気温が低いこと、したがって見られる昆虫や植物などの生き物が異なること、登山時に渡る沢は川底が赤茶けていること、入浴予定の温泉は鉄分を含んだ黄褐色のお湯であること、登山の行程で森林限界を超えるために急に樹木の高さが低くなることや植生が変わること、湧水を組むことができること、樹林帯と高山で岩石の角ばり具合が異なること、などを紹介した。また、同行するスタッフの自己紹介では、各人の専門分野を紹介し、どんな疑問を抱いた時に、だれに質問するのが適切かわかるようにした。


スライドを用いて現地の様子や研究の方法などをレクチャー

ボードゲームを使い、問いを立ててミッションを解決する練習を実施

 加えて、参加者が自分で問いを立て、課題に取り組むことができるよう、『科学の力で無人島脱出』ボードゲームをおこなった。このゲームは、本プログラムの主催者である我々が監修し、くもん出版より発売されたものである。無人島で様々なミッションが課され、それを無人島内で集めた素材や道具を用いて解決する、という作りになっている。ミッションは例えば『肉をくさりにくくするには?』『泥水をきれいにするには?』など、サバイバルの過程で必要になり、かつ、理科的な知識と技術が必要なものが選ばれている。また、素材や道具は木材やつる、石や水など自然の中で集められるものを中心に、ゴミとして手に入りそうなペットボトルや段ボールなどから構成されている。
 小中学生の参加者が、大学生・大学院生のスタッフと一緒にボードゲームをプレイし、そこに東京大学の大学院で研究して高い専門性と知識を身につけたスタッフが『どうしたらそのミッションを実現できるだろうか』『それらの素材と道具を具体的にどのように使うとどんな変化が起きるだろうか』『他に方法はないのだろうか』などと問いかけを行い、ミッションクリア後も、それはどんな原理なのかと検討を促した。その結果、子ども達は非常に熱心に自然界の不思議について考え、また、課題を解決するために必要な方法を具体的に考察していた。


4人ずつの3チームにわかれ、『科学の力で無人島脱出』ボードゲームに挑戦

アイテムを集め、ミッションに挑戦。星座早見盤を使ったクイズミッションも。

小中学生の参加者と大学生や大学院生のスタッフが協力してクリアを目指す。東京大学の大学院生やその卒業生であるスタッフが、検討すべきポイントや注目すべき点を指摘し、さらなる思考を促す

 これはまさに、問いを立て、それを解決するための方法を探す作業に他ならない。問い(ミッション)が定まれば、次はその検証・解決方法を考え、試行錯誤しながら自らの手で検証・解決していくことになる。これは科学の研究の基礎的なプロセスであり、ゲームという手法を用いてその体験ができたことを示している。その思考過程は、自然の不思議を見つけ出し、解き明かす際に非常に重要なものである。2週間後の体験が非常に楽しみであり、子ども達の様子はスタッフの期待を高めるほど素晴らしいものであった。

 ゲーム終了後には、振り返りの時間を設け、子ども達が具体的に実証実験をおこないたいミッションの提案を受け付けた。炭づくりをしたい、ソーラークッカーを作って料理したい、太陽光を使って火起こししたい、肉から油を取りたい、燻製を作ってみたい、炭で電池を作りたい、角の鋭い石をナイフがわりに使ってみたい、方位磁石を作りたい、など、多くの提案が寄せられた。次回はこれらのうち、現地で実施することが効果的であり、かつ実験室で予め原理を学んでおくことが自然体験中のより良い学びに必要と思われるミッションを選び出し、取り組む。



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