NO団体名主な企画内容
48 体験活動協会FEA(福岡県) 「大自然まるごと野外塾 〜屋久島キャンプ〜」
屋久島の自然を生かした活動や、野外生活体験を通して「人間力」の基盤を培うことを目的にした活動。カヌー、釣り、磯観察、川辺の活動、暗闇探検、クラフト、縄文杉トレッキングなどのチャレンジプログラムを行う。

速報レポート

日 時:2009年8月16日(日)〜22日(土) 6泊7日
場 所:屋久島(鹿児島県屋久町)
参加者:20名(小学5年生7名、小学6年生8名、中学2年生3名、中学3年生1名、高校2年生1名)
    スタッフ・ボランティアリーダー:5名
活動のねらい

世界自然遺産の屋久島で、「体験からの学びを深める循環過程(ファシリテーション学習サイクル)」を用いた、様々な自然体験と野外生活体験を通じて、子ども自らが自分の「人間力」の基盤を培うことをねらいにしました。

『人間力』について

子どもに「生きる力」をもたせるには、子ども自らが、自分の「人間力」を育むことができるよう、指導者が指導や援助を行うことが必要です。
「人間力」とは、気力、体力、判断力、自制力、忍耐力、行動力、適応力、柔軟な創造力、そして向上心、道徳心を育むことであり、野外で行う自然体験と野外生活体験を通じて、「人間力」の基盤をよりよく培うことができると考えています。

『体験からの学びを深める循環過程』について

実践研究を積み重ねて生まれた、自然体験や野外生活体験などの体験的教育活動を進めるうえで、基盤となる考え方です。まず、「関心」を持たせ、「意欲」を高め、子ども自らが進んで「体験」し、活動から「学びの深化」を行い、学んだことから次の課題などを「具現」し、それを「行動」へつなげるという6つの過程を踏み、ふたたび、「関心」へとつなげます。「具現」、「行動」については、体験した活動をさらに深めることであったり、別の活動に生かすことであったり、日常生活で生かせるものであったりします。とくに大切な過程は、「意欲」の部分です。活動に対して、本人の考えや意見を取り入れたり、自分で選んだのだという意識をもたせることが大切なポイントで、ここをあいまいにすると、「学びの深化」が充分ではなくなります。この循環過程を、スタッフとボランティアリーダーがしっかり頭に入れ、今回の活動に取り組みました。

行程記録

1日目:8/16(日) 晴れ
 7:30博多駅集合、出発式→バス・船・バス・徒歩移動→青少年旅行村着→テント設営、フィールド探検→
 →夕食(給食)→開村式、ニックネーム・グループ名決め→22:00就寝
2日目:8/17(月) 晴れのち曇り
 6:00起床、朝の集い、朝食(給食)→磯辺の観察→昼食(給食)→最終日までの役割分担決め→野外料理法→
 →夕食(自炊)→グループタイム→21:00就寝
3日目:8/18(火) 晴れのち曇り
 4:00起床、朝の集い、朝食(自炊)、昼食作り→大川の滝探検、昼食(手作り弁当)→翌日の個人選択活動決め→
 →夕食(自炊)→グループタイム→21:00就寝
4日目:8/19(水) 晴れのち曇り
 4:00起床、朝の集い、朝食(自炊)、昼食作り→個人選択活動(磯遊び・海釣り)、昼食(手作り弁当)→
 →夕食(野外料理大会)→全体会議→20:30就寝
5日目:8/20(木) 晴れ
 4:00起床、朝の集い、朝食(自炊)、昼食作り→撤収作業、青少年旅行村発→バス移動→
 →民宿着、昼食(手作り弁当)→洗濯、午睡→全体会議、チャレンジプログラム準備→夕食(給食)→20:00就寝
6日目:8/21(金) 晴れ一時曇り
 4:00起床、出発準備→バス移動→荒川登山口着、6:30チャレンジプログラム開始(縄文杉ウォーク)→
 →朝食(弁当)、昼食(弁当)→17:00チャレンジプログラム終了(荒川登山口着)→バス移動→民宿着→夕食(給食)→グループタイム→22:30就寝
7日目:8/22(土) 晴れ
 7:00起床、朝の集い、朝食(給食)→ふりかえり、自己評価→撤収作業→閉村式、民宿発→
 →バス・船・バス移動、夕食(食堂)→20:45博多駅着、解散式、全日程終了

※「グループタイム」…子ども自らが柔軟な発想で取り組むグループ活動の時間(暗闇体験、夜空観察、語り合いなど)





参加者の様子

1日目:
屋久島の宮之浦港から乗合バスで移動中、夕日に照らされた広大な海や、むき出しの岩山を見て、「おぉー、すげぇー」という歓声。窓から見える大自然を眺め、「やっぱ、福岡と違うなぁ」という素朴な感想。旅行村のキャンプ場に到着するまでは、ダラダラと観光気分も多少見られたものの、テントを立て始めてからはキビキビと動き出しました。3つの掟(挨拶する・人の話は聴く・助け合う)を約束したり、ニックネームやグループ名を決めていくうちに、キャンパーとしての自覚とキャンプへの意欲が高まってきました。今回は、男女混合の異年齢で3グループに分け、7日間の体験活動を進めました。

2日目:
屋久島での最初の自然体験は、塚崎タイドプールで磯辺の観察。ウミガメが砂浜に上陸した跡を発見、「えー!これがウミガメの通った跡なん?」、「タイヤの跡みたい」。細長い潮だまりを奥へ入ると、「冷たくて気持ちいいー」。さらに進むと、「めちゃくちゃ透明やん」、「きれいすぎるやろ」。こんどは広い潮だまりで水中観察。「海の中が全部見える!」、「そこサンゴがあるけん踏まんように注意して」とお互い注意する姿も。その後、細くて深い潮だまりへ移動。「ここ飛び込めそうじゃない?」と声かけすると、「あっちの岩の上から飛び込もうよ」と大歓声。「怖ーい」と叫んでいた女子も、最後にはジャンプ!今日の夕食から5日目の朝食までは自炊。刃物と火のあつかい方を習うときは真剣な眼差し。夜はグループで決めて活動するグループタイム。暗闇体験など普段の生活では味わえない体験を行いました。

3日目:
6日目のチャレンジプログラムに向け、この日から早朝4時起き。「もう4時!まだ眠たーい」、「外まだ暗いやん」とボヤキながらもテントから出てくる。そして、星空を見上げて感動。「うわぁー、星がたくさん!」、「あれって天の川?」。今日は、大川の滝と世界自然遺産登録地点を往復11km探検。まずは、世界遺産との境界線まで歩き、全員一列に並んで、「せーのー」で境界線をまたぎました。復路の途中、大川の滝に寄りました。落差88mから流れ落ちる水は大量で、滝壺からは冷たい風が吹き、「涼しいー。天然のクーラーやん」という声。野生のサルとも遭遇し、刺激しないように静かに通り過ぎました。また、チャレンジプログラムに向けて、道路端の白線上を一列で歩く練習も行いました(トロッコ道を一列で歩くためのアイデア)。スタッフは、子どもの歩き方や疲れ具合を観て、チャレンジプログラムの態勢作りの判断材料にしました。

4日目:
個人選択活動では、磯遊びと海釣りに分かれました。磯遊びでは、岩礁で囲まれたエメラルドグリーンの天然プールを見つけ、、「映画に出てくるような場所やん」と、その美しさに感嘆。熱帯魚、なまこ、シャコ貝、大きなヤドカリなども発見。海釣りは、釣り竿になりそうな木などを探して仕掛けづくり。釣り糸を垂らすと魚は寄ってくるものの、「また餌取られたぁ」。コツをつかんで、スズメダイの仲間を何匹も釣りあげた子どももいました。ウミガメが間近まで泳いできて顔を出し、「ウミガメやん!大きい!初めて見た」とビックリする場面も。夕食は、漁師さんからおすそわけでもらった、カツオ、サワラ、ウマヅラカワハギを食材に、野外料理大会。テーマは「魚料理」。各グループ、南蛮漬けと鍋物の二品を創作。判定のポイントは、味、盛付、協力の3つ。どのグループも優勝目指し真剣に取り組んでいました。

5日目:
明日のチャレンジプログラムに向けて、心とからだの休息と準備の日です。歩く練習のため、キャンプ場からバス停3つ分を歩いて移動し、そこからバスに乗り、民宿まで向かいました。途中、ウミガメ産卵地の砂浜前で休憩。地元のおじちゃん達からウミガメの卵を見せてもらいました。「やわらかーい」、「ピンポン玉みたい」、「これ本物?」と子ども達。その後、子ガメが孵化して海まで歩いた跡も見つけました。民宿に着くと荷物を整理し、さっそく待望の“洗濯”に精を出しました。つぎに、明日のチャレンジプログラムに万全で臨めるよう、全員で一時間の“午睡”をとりました。ひょっとしたら、一番贅沢な活動かも?夕方は、明日に備えて、みんなでコースの確認などを行い、装備などの準備も済ませ、いつもより早く床につきました。

6日目:
午前4時に全員起床、3日間続けた効果あり。朝と昼の弁当をザックに詰め、乗合バスを乗り継ぎ、登山口バス停に到着。まず、登山口にあるトイレに並んでいる人の行列に仰天。歩いている途中は、「こけがふさふさやん」、「木のトンネルやん」、「こだま(※映画「もののけ姫」に出てくるキャラクター)が出てきそう」、「シーッ!シカがおる!」など元気いっぱい。「昨日まで無理と思っていたけど縄文杉まで行けそう」という声も。また、最後尾グループでは、スタッフの声かけに、「最後まで自分で歩く」と何度もつぶやきながら頑張っている子どももいました。縄文杉に到着すると、「うわっ、でかっ!」、「あれって、木なの?」、「少ししか縄文杉を見れなかったけど、ここまで来れてよかった」、「シカがこんなに近くで見れてすごかった」など、達成感に酔いしれていました。

7日目:
朝食を食べ終わって、7日間の活動をふりかえりました。まず、スタッフが出発式から今までの出来事をみんなの前で語り聞かせ、子ども自らが、自分自身のふりかえりや自己評価などを行いました。その後、荷物整理や掃除を済ませ、民宿を出発。安房港から鹿児島港へ渡り、鹿児島からは貸切バスで、一路、JR博多駅を目指しました。帰路のバスの中で子どもを観ていると、出発式の時とは違い、豊かな顔の表情、キラキラ光る眼の輝き。そして、大自然の中で活動と生活を共にした仲間との融和を感じる事ができ、改めて子どもがもつ秘めた「人間力」にスタッフとボランティアリーダーは感心しました。





参加者の自己評価
A評価B評価C評価D評価
1.この活動をして、自然に興味を持った。17名3名0名0名
2.初めて会った人とも仲良く話ができた。15名4名1名0名
3.他の人とも協力できた。10名9名1名0名
4.人の話や説明をしっかり聞くことができた。8名12名0名0名
5.苦手なことやしんどいことにもチャレンジできた。16名3名1名0名
6.人から言われなくても、自分から進んで行動できるようになった。6名13名1名0名
7.失敗しても、もう一度やりなおすことができた。9名9名2名0名
8.前より積極的に行動できるようになった。10名10名0名0名
9.この活動をして、自信が付いた。15名5名0名0名
10.普段の生活でも自然の中で遊んでみようと思う。17名3名0名0名

※「A評価」…肯定大(できた等)、「B評価」…肯定小(まあまあできた等)、
 「C評価」…否定小(あまりできなかった等)、「D評価」…否定大(できなかった等)

参加者の感想

・縄文杉までがんばって歩いた時、私は本当に縄文杉に行けるのかなと思っていたけど、縄文杉を見た時、とても達成感を感じました。(小学生女子)
・縄文杉に行けて嬉しかった。ヤクシカを見れて嬉しかった。大川の滝がすごかった。海釣りで釣れなかったけど楽しかった。野外料理大会で2位になれてよかった。磯あそびで、飛び込めてよかった。(小学生男子)
・女の子が7人いたこと、班活動とかおしゃべりがたくさんできたこと。「屋久島」まじで最高やぁー。(中学生女子)
・屋久島の中で、たくさんの自然に触れあえた。この自然の中で自分の良いとこなどや、悪いところもたくさん見つけた。普段の生活の中で、家事をやってくれる親の大変さが改めてよく分かった。(中学生男子)
・1人で色々な事をやるよりも、皆で協力し合いやった方が、はるかに効率がよく素晴らしいと思った。自然の偉大さを改めて認識させられた。少しの間だけれど、今年の夏休みの中で一番の思い出になった。(高校生男子)