NO団体名主な企画内容
42 兵庫県たつの市立小宅小学校(兵庫県) 「赤とんぼがとびかうまちプロジェクト 〜見つめよう小さないのち 見守ろうたつのの自ぜん〜」
赤とんぼが飛び交う町の再生に向けて、河川の整備、学校のビオトープ作りや雑草地から公園整備、ヤゴの飼育観察などを地域の方と協力しつつ活動するプログラム。お年寄りへのインタビュー、市民団体や漁協などとの交流などをおこないながら自然を見守り「小宅自ぜん大すき村」をつくる。

赤とんぼがとびかうまちプロジェクト 実施レポート1

実施日:2009年5月上旬〜6月
活動1:まちでの聞き取り調査をもとに「赤とんぼがとびかまち」をイメージしよう

1.先輩の活動をつなごう
 小宅小学校があるたつの市は,童謡の里と呼ばれている。これはたつの市が,童謡「赤とんぼ」の作詞者である三木露風の生誕地に由来している。三木露風がふるさと龍野(当時は漢字表記)を思い浮かべ「赤とんぼ」を詠んだ時は,まちに赤トンボ(アキアカネ)が乱舞していたと聞く。しかし近年は,農法の変化やまちの環境の変化により,赤トンボ(アキアカネ)を目にすることがなくなった。その事実に,2008年,市には,有志が集まり「赤トンボを増やそう会」が結成されたのである。小宅小学校も,3年生が地域貢献活動の一環として「赤トンボを増やそう会」とタイアップしながら,アキアカネ調査に取り組んできた。しかし,残念ながらアキアカネに遭遇できず,このプロジェクトは2009年の3年生にひきつがれることになった。
 2008年度の3年生が作成した看板を見ながら今年の3年生は,「今年こそ,赤とんぼがとびかうまちにしよう」と意気込んだ。

2.活動の柱は2本立てで!
 5月上旬,140人全員で話し合った結果,赤とんぼを増やすためには,赤とんぼがとびかっていたころの自然を取り戻すために,「トンボやチョウを飼育してまちに放したい」,「学校の東側を流れる山根川に自然村をつくりたい」ということになった。赤とんぼがとびかっていたころといってもなかなかイメージできないので,まちに出て聞き取り調査を行った。それをもとに,赤とんぼのとびかっている様子を絵に表した。(約90枚の絵が完成)どの絵も,自然がいっぱいに描かれていた。その絵のようなまちにするために,140人の挑戦が始まった。

活動2:山根川を調査してみよう

1.山根川に行ってみてわかったこと・・・それは・・・
 5月12日,学校東に隣接する山根川で,生き物探しをした。田植え前でまだ水も少なく,おまけに晴天。絶好の生き物探しとなった。代わる代わる水に入り,目標であるヤゴ探しをした。子どもたちは,ヤゴは夜行性であるため,昼間は泥の中で生活していることを調べていたので,泥をすくったり,水に沈んだ空き缶の下や中を調べたりして調査した。

【調査の結果】
・シオカラトンボのヤゴ4ひき,イトトンボのヤゴ2ひき、コオニヤンマのヤゴ(3年もの)2ひき、タイコウチ2ひき 等

生き物以上に子どもたちが気になったことは,ゴミの多さだった。「何とかしよう」そう思った子どもたちが,学年全体に提案した結果,みんなで山根川のクリーン作戦をすることになった。兵庫県をおそった新型インフルエンザによる県内一斉休校が解除された後の,5月29日にみんなで手分けしてクリーン作戦を行った。

活動3:トンボ博士に聞こう会とヤゴ救出作戦

5月29日,たつの市に住んでいらっしゃるトンボ博士(三木さん)をお招きし,トンボについて学習した。三木さんは市の「赤トンボを増やそう会」の一員でもあり,たいへんトンボにくわしい方である。子どもたちは,「アキアカネがどうしてへってしまったのか」や「ヤゴについて教えてほしい」という質問をした。アキアカネが減ってきた理由は,昔と比べて,農薬を使うなど農業の仕方が変わったり,河川が石でなくコンクリートになったりしてヤゴの住みかがなくなったことが原因であることだった。子どもたちが驚いたのは,ヤゴがえさをとるとき,下あごが伸びることだった。実際写真でその様子を見せていただいたが,知らなかった子が多く,驚きであった。

6月9日,赤トンボを増やそう会のみなさんといっしょにプールで「ヤゴ救出作戦」を行った。例年,プール掃除ではヤゴがたくさん発見される。掃除前に助けて,育てるためである。140人で作業をした結果,シオカラトンボのヤゴが44匹,コオニヤンマ(1年もの)21匹とれたので,早速,赤トンボを増やそう会のみなさんと作成した中庭の観察池にある飼育ボックスに放した。 より自然環境に近い飼育ボックス内(1m×1m×1mの広さ)はえさも豊富にあり,1ヶ月以内に44匹とも羽化し,逃がすことができた。コオニヤンマのヤゴも共食いのおそれがなく,順調に育っている。

活動4:チョウ博士からチョウについて聞こう

 5月下旬,子どもたちは,まち探検をし,小宅校区にある山椒,ミカンの木から,アゲハの幼虫,キャベツ畑から青虫をつかまえてきた。図鑑で調べたり,チョウ博士(京都教育大学の村上先生)に聞いたりして,世話を開始した。ホームセンターや100円ショップに売っている食器ケースにキッチンシートを引き,糞の交換やえさやりは交代で世話をした。同時にチョウ博士にも来ていただき,チョウのおもしろさについて学習した。特にチョウの目から見ると,すべてが白黒に映ることや,雄雌の見分け方,アゲハの場合,さなぎになる場所の木(枝)の特徴によってさなぎの色が違うことや4齢幼虫までは鳥の糞に見せることで敵から身を守っている話など,知らないことが多く,とても興味深く聞いていた。


羽化の瞬間に出会う!

アゲハは早朝羽化することが多いが,偶然にも朝羽化しそうな雰囲気があったので,みんなで観察していると写真ようにからから出てきた。まだ羽は,くしゃくしゃのままであるが30分後には羽を大きく広げ,乾かし始めた。
結果的に1学期の間に40匹近くのアゲハ(ナミアゲハ36,キアゲハ2,カラスアゲハ2)とモンシロチョウ8匹を羽化させることに成功した。
子どもたちは,同じアゲハでも,ナミアゲハやカラスアゲハはミカンの葉を食べるのに,キアゲハはセリの葉を食べることや,ナミアゲハとカラスアゲハの5齢幼虫は大きさがちがうことなどにも気がついた。

活動5:アゲハチョウを飼おう

1.羽化したチョウをどうするか
 昆虫が住みやすいまちにするために,羽化したアゲハチョウをどうするかということを話し合った結果,交尾して卵を得たら自然村に逃がそうということになった。そこで中庭のミカンの木にネットをかぶせて,アゲハチョウ用の飼育ボックス(1m×1m×2m)を完成させた。
 課題はえさやりである。なるべく自然に近い環境にはしているものの,アゲハが自分でえさを得ることができるかどうかわからなかったので,チョウ博士にお願いして,えさやりについて教えていただいた。

【えさやりに使う物】竹串,砂糖水,紙皿,ティッシュ
 砂糖水は,100mlの水に対して,砂糖のスティック3本を入れてつくる。写真のように紙皿の上に砂糖水を浸したティッシュを置き,あとは竹串でまいている口をのばし,砂糖水に誘導するのである。砂糖水がわかったアゲハは写真のように夢中になって飲むので,逃げることはない。140人全員がチョウ博士の指導のもとえさやりの方法をマスターし,実際の世話でもえさをやることができた。
                     
卵を産むアゲハチョウ
飼育ボックスで交尾をしたチョウを教室のボックスに移し,観察していると緑の策に産み付け始めた。通常,足で葉を確認し,産み付けるのだというが,めずらしいことがおこった。ここで産み付けられた卵は,2〜3日もすると1齢幼虫になるので,食器ケースに移し,成虫になるまで飼育し,自然村に逃がした。
夏休み中はもちろん10月まで飼育を続けて,産卵から成虫になるまでの完全変態を間近で体験することができた。

活動6:ヤゴからトンボに育てよう

 山根川の生き物調査でつかまえたシオカラトンボとコオニヤンマ(3年もの)のヤゴを教室の水槽で育てていた。5月下旬,まずシオカラトンボのヤゴが羽化し始めた。トンボ博士によるとヤゴは羽化する前に水中から出たり入ったりする行動をするらしい。その様子を目撃した子どもたちは,止まり木を入れ,様子をうかがっていた。なかなか止まり木に登ってこないため,その日は羽化を見ることができなかった。2日ほどたっても羽化しないことから,水中からの出入りは間違いだったのではという話になっていたが,なんと水中にヤゴの羽化に失敗した死骸が・・・。不安に思った子どもたちはさっそくトンボ博士に聞いた。トンボ博士によると止まり木の太さに関係があるかもしれないとのことで,水槽に3種類の太さの止まり木を入れてみた。
 数日後,博士の言うとおり,写真のように最も太い止まり木でコオニヤンマのヤゴが羽化し始めた。
 チョウとは異なり,羽がのび,腹から体液を出し,細くなるまで約半日ほどかかった。
 チョウとトンボの羽化に立ち会うたび,子どもたちは,羽を乾かす動作は同じでも,そこにいたるまでの過程は時間的にも異なることを実感していた。



赤とんぼがとびかうまちプロジェクト 実施レポート1
赤とんぼがとびかうまちプロジェクト 実施レポート2

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