NO団体名主な企画内容
31 名古屋大学博物館(愛知県) 「発見!火山がつくった化粧品」
"化粧品の原料として使われるセリサイトがどのようなもので、どのような自然の力でできるのかを理解してもらうために、大学博物館での実験とセリサイト鉱山一帯の野外観察を組み合わせた2日セットの体験学習。"

速報レポート1 発見!火山がつくった化粧品

実施日:2019年8月24日(土)-25日(日)
場所:名古屋大学博物館(24日)、愛知県東栄町(25日)
参加者:小学生(6名)、中学生(4名)、高校生(3名)、保護者(6名)、一般(3名)
指導者:11名(名古屋大学・名古屋市科学館・愛知大学・産業技術総合研究所の教員、学芸員、研究員、学生)

名古屋大学博物館は、名古屋大学で行われる様々な研究を一般に分かりやすく紹介するほか、名古屋や東海地方の自然を解説する展示と野外観察園を設け、自然誌などの一般教育を通した地域貢献活動を年に10回程度実施しています。その一環として2019年度に、「発見!火山がつくった化粧品」をテーマとする活動を行いました。
化粧品の1つとしてファンデーションは有名ですが、その主な原料がセリサイトという自然にできた鉱物であることはあまり知られていません。しかも、世界でも数少ないセリサイトの産地が愛知県にあります。この企画では、セリサイトが採掘されている鉱山とその一帯の野外を訪れ、セリサイトがどのような自然の力によってできたかを野外観察を通して参加者に体感してもらいました。この野外体験を通して、地元の自然と産業に興味と理解を深めてもらえたはずです。

活動内容

8月24日(於:名古屋大学博物館)

  • セリサイトの肉眼観察と感触体験
  • セリサイトの電子顕微鏡による観察
  • セリサイトに似た鉱物の観察と粉砕体験(スノードーム作り)
  • セリサイトと火山の関係についての説明。マグマが地表にあがってくる様子を再現する実験。

8月25日(於:愛知県東栄町)

  • 活動1:「火山の化石」である大きな岩が残る「馬の背岩」までハイキング。そこに残るマグマの岩(岩脈)の見学。
  • 活動2:セリサイトが実際に採掘されている場所(三信鉱工株式会社)を訪問。採掘の坑道に入り、その中でセリサイトが産出している状況や採掘現場を見学。
  • 活動3:セリサイト採掘現場のバックヤードを訪問。セリサイト精製後の廃土に含まれる黄鉄鉱(サイコロのような形で金色をしている鉱物)を探す体験。 ※名古屋大学博物館を集合・解散の場所とし、現地へは大型バスを借りて参加者の引率を行いました。

主な活動の報告

8月24日(於:名古屋大学博物館 実験室)
セリサイトの肉眼観察と感触体験
最初に、セリサイトはどんなものかを見て触って観察してもらいました。白っぽい細かな粉で肌の上に薄く延びる様子はファンデーションにそっくりで、その材料になっていることを知ってもらいました。


左:セリサイト、右:ファンデーション

セリサイトの感触を確かめる参加者

セリサイトの電子顕微鏡による観察
 セリサイトは細かい粉なのですが、肌の上に薄く延びる性質は、粉の形にあります。1つ1つの粒が薄い板の形をしているために、平面に沿って薄く延びるのです。それを見て確かめるために、走査型電子顕微鏡を使ってセリサイトを観察しました。


名古屋大学博物館の研究員が電子顕微鏡を使ってセリサイトの拡大画像を見せる様子

セリサイトの粒の形をスケッチする参加者の様子

セリサイトに似た鉱物の観察と粉砕体験(スノードーム作り)
 次に、セリサイトの粒を構成する薄い板状の物質は「雲母」と呼ばれる鉱物であることを説明しました。そして大きな雲母を手にとって観察しました。セリサイトが雲母の細かい粒ならば、雲母を細かく砕けばセリサイトができるでしょうか?それを実験するために、乳鉢と乳棒で雲母をすりつぶしてみました。でも雲母を細かく砕くのはとても難しいのです。だからこそ、最初から小さな粒になっているセリサイトは貴重ということを知ってもらいました。砕いた雲母はスノードームにしてお土産として持って帰ってもらいました。


雲母をすりつぶす実験をする参加者

砕いた雲母を入れたスノードーム

セリサイトと火山の関係についての説明と実験
 それではセリサイトはどのようにしてできるのか、ということを次に講義と実験を通して知ってもらいました。セリサイトは火山活動にともなって自然に作られます。特に、マグマが地表に上がってくる場所の一部で作られます。マグマが地表に上がってくる様子を知ってもらうために、ゼリーの下から赤い液体を注入し、赤い液体があがってくる様子を見てもらいました。赤い液体はゼリーの中を、板のように切りこんであがってきます。


マグマが地上に上がってくる様子をまねた実験をスタッフが見せる様子

ゼリーの中を赤い液体が板状にあがってくる様子

8月25(於:愛知県東栄町)
「馬の背岩」の見学
 セリサイトは、マグマが地上にあがってきた場所で作られました。そのような場所を実際に観察するために。「馬の背岩」とよばれる場所に行きました。本来は地下深くで形成されたマグマ上昇の跡(岩脈)が地表で見られる珍しい場所です。


馬の背岩(写真の左下から右上に細長くのびる岩)に登って観察する参加者の様子


 馬の背岩は川原にあります。水の力で周りの岩石が削れたのですが、マグマが冷えて固まった岩脈は削れにくくて残り、細長く盛り上がった形が「馬の背」に似ているように見えるわけです。足元の悪い岩場を歩きましたが、安全を保つためにスタッフ11名が付き添いました。




三信鉱工株式会社の坑道見学
 そしていよいよ、化粧品の原料となるセリサイトが採掘されている鉱山を見学しました。三信鉱工株式会社の協力を得て、その坑道に入らせてもらいました。坑道が掘り進められている場所や、セリサイトが採掘されている場所を見学しました。


ヘルメットをかぶり、セリサイト鉱山までハイキング

坑道の入口前で事前説明を受ける参加者

坑道の中を見学する参加者の様子


坑道を掘削する機械を見る参加者

坑道の奥でセリサイトの掘削体験をさせてもらう参加者

採掘したセリサイトを運ぶトロッコを見学する参加者

セリサイト採掘現場のバックヤード訪問
 セリサイトを化粧品の材料として用いるために、不純物の砂などが取り除かれますが、その中に黄鉄鉱という鉱物があります。黄鉄鉱は金色でサイコロの形をした面白い鉱物です。三信鉱工株式会社の廃土を活用させてもらい、黄鉄鉱をみつける体験も行いました。


黄鉄鉱さがしに夢中になる参加者の様子



■別年度のレポート
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2010年度 地球教室 実施レポート
2008年度 地球教室 実施レポート
2007年度 地球教室 -河原の石で作る石包丁- 実施レポート

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