NO団体名主な企画内容
26 名古屋大学博物館(愛知県) 「地球教室」
鉱物の比重や堆積作用について学習し、学習成果をもとに野外で重鉱物の採集をおこなう。また、ザクロ石などの鉱物の採集を通して鉱物の性質についても学習する。

「地球教室」 砂金を見つけよう! [8/9,10]

日  時:
場  所:
参加者:
2008年8月9日(土) 13:30〜15:30、8月10日(日) 9:00〜18:00
8月9日 名古屋大学博物館、8月10日 岐阜県高山市の河原
30名(小学3年生〜中学3年生の子どもと保護者等)
 <レポート>

8月9・10日両日、夏らしい真っ青な空ともくもくの入道雲の下、地球教室「砂金を見つけよう!」を開催しました。
このイベントには150名以上の応募があり、抽選によって30名の参加者を決定しました。

「地球教室」は、フィールドでのちょっとした自然観察をとおして、自然のすごさや面白さを参加者のみなさんに実体験して貰うことを目的としています。
またここでは、講師から参加者に『教える』ことはあまりしません。「地球教室」では、講師は自然を観察する上での最小限のポイントを教えるのみであり、参加者には自由な発想で、様々な現象について自分で考えてもらいます。それをベースにして講師と参加者が、結論を生み出すプロセスをわいわいと一緒に楽しむことができればと思っています。

さて今回の地球教室ですが、砂金を題材として(1)砂金の性質について学習をした後、(2)砂金取り(パンニング)の練習をし、(3)実際に河原にいって砂金を探してみる、という3部構成(机上学習→実習による机上学習の確認→フィールドでの実体験)で実施しました。
またここでは、子供たちだけではなく、親御さんにもぜひ自然への興味を持ってもらいたいとの思いより、「親子参加」の形態をとりました。

初日は名古屋大学博物館に集合し、1時間ほど「金の性質」に関する学習を行いました。
ここではまず、基本的な金の名前のつけ方(18金や24金、イエローゴールドやシルバーゴールド、ピンクゴールドなど)や、その性質や見分け方などについて学習し、その後、金色の鉱物が入った8つの瓶から本物の砂金の瓶だけを選び出す、「砂金鑑定クイズ」を行いました。

8つの瓶のうち5つは偽物です。よ〜く見れば、色や形、質感、重さなどが金とは違うことが分かりますが、ぱっと見ではなかなか見分けられません。
この「砂金鑑定クイズ」は学習したことをもとに、親子あるいはグループで考えて貰いましたが、対抗形式にしたせいもあり、大変な盛り上がりでした。

その後、名古屋大学博物館前の特設会場へ移動し、砂金のパンニング体験を行いました。
ここでは、水を張ったたらいの中に砂を入れ、砂をパンニングして金を取りだす練習をしました(砂には砂金があらかじめ混ぜてあります)。

パンニングとは、比重によって砂の中の鉱物を選り分けることです。
鉱物の中でも、金属光沢のあるものは一般に比重が大きく、黄銅鉱が4.3、銅が8.9、銀が10.5です(ちなみに石英は2.7)。金の比重は19.3もあり、鉱物の中で飛び抜けて比重が大きいことが分かります。さてそれでは実際にはどのようにして砂金を選り分けるのでしょう。
皿に水とともに砂を取り、皿を細かく回転させたり左右に揺らすと、軽い(比重の小さい)鉱物が浮かび、重い(比重の大きい)鉱物が皿の底に下に沈みます。浮かんできた軽い鉱物を捨て、さらにパンニング作業を続けていくと、石英や長石などの軽い鉱物はどんどん少なくなり、皿には重い鉱物が濃集するようになります。

ここでは、教室で学習した金の性質を、パンニングを通して実際に確かめて貰い、座学で学んだ知識を“経験”として参加者の中に定着させることを目的としました。


教室で金の性質について学習/特設会場で砂金のパンニング体験
教室で先生の言っていたことが本当かどうか、自分で確かめてみよう!

実際にパンニングを続けていくと、軽い石英や長石が少なくなるにつれて白っぽかった砂の色がだんだん濃くなっていき、最後にはガーネット(比重3.1〜4.1)が濃集するため紫色になります。
教室で学んだことが、実際に目の前で現象として現れたとき、参加者、特に子供たちの目の輝きが変わります。
こういうのを「アハ体験」と言うのでしょうか。
紫色の残り砂の中に黄金色にキラリと光る粒を見つけるたびに、あちこちで「あ、金だ!」とか、「すごい! 本当に取れた!」等の歓声が上がりました。
中には、本来の目的を忘れて、石英やガーネット採集(濃集)に走っている参加者もいましたが。。。
でも、いいのです。「鉱物には色や形、比重などのそれぞれ固有の特徴がある」ということを実感して貰うのがこの体験のねらいなのですから、彼らは彼らで石英やガーネットによってその目的を達成したと言えます。

2日目は、名古屋大学博物館に集合した後、バスで岐阜県高山市の河原へ行き、前日の学習をもとに砂金を参加者自身に探してもらいました。
実は日本には砂金が取れる川はいくつもあり、一部は『砂金採集スポット』として有名です。
しかし一言で“砂金を探す”と言っても、実際にはそんなに簡単ではありません。適当に川底の砂をすくってパンニングしても、絶対に砂金は取れません。前日に学習した「金の性質」をよく考えて、砂金の溜まりやすいところを狙うのがコツです。


河原でパンニングに夢中になる参加者/危険がないよう監視するスタッフ※/スタッフと一緒に砂金を探す参加者
(※水辺での実習に備え 安全管理要員2名を配置)

それでは、どのようなところに砂金は溜まりやすいのでしょう?
金は重いということを思い出してください。水の流れが速ければ砂金は転がりますが、流速が遅くなったとたんに沈殿してしまいます。
カーブしている川の外側と内側ではどちらが流れが速いでしょう?
もちろん内側です。ということは、砂金を取るにはカーブの内側がねらい目ですね。
あるいは平らな川底なら、砂金は転がることができますが、それがいったん岩の窪みや割れ目に落ちてしまったらどうでしょう?
砂金は、もう窪み・割れ目から出ることはできません。したがって、窪みや割れ目に溜まった砂を狙うのも効果的です。また、草の根に絡みついている土砂なんかもいいかも知れません。


こういう岩の割れ目にたまっている事が多い/草の根に絡んだ土に含まれている可能性大!/砂金入ってるかな??

このように現場では、「“重い”という単純な事実から、どれだけたくさんのことを想像できるか?」が試されるわけです。
少ない事実から想像をたくましくすることができる能力こそが、まさに“生きる力”というものではないかと思います。河原では至るところで、親子であれこれと議論しながらパンニングを行う姿が見られ、このような知的ゲームによって、普段はできないような“たわいのない科学的会話”を親子で楽しんでいたようです。また、金の魔力でしょうか。
子供もさることながら、むしろ親の方が熱中してしまうこともあり、「親にも自然への興味を持ってもらう」試みは成功したと言えるでしょう。


砂金みつけたぁ!!/左の拡大写真/2匹目のドジョウをねらってみんな真剣

結果的に砂金を取ることができたのは、参加者の半分くらいでしたが
時間の制約もあり3時半頃には現場の後片付けをし、バスにて名古屋大学博物館に戻りました。
そして6時頃には、事故もなく無事に解散しました。

次回地球教室は、10月18・19日に、ガーネットを題材に行います。
今回の「金」と次回の「ガーネット」は、関係がないようで実はとても関係があるのです。
マグマによって熱せられた地下水に鉱物成分がとけ込み、冷えるとともにいろいろな鉱物が析出・沈殿することがあります。このようなものを熱水鉱脈鉱床といい、金はこのような鉱床に含まれています。
一方、マグマそのものがゆっくりと冷え固まり、結果的に大きな鉱物結晶の集合体になった岩石をペグマタイトと言います。ペグマタイト中には、石英(水晶)やアクアマリン、トパーズ、ガーネットなどの巨晶が含まれることがあります。
金・ガーネット両方とも、マグマ活動に関係してできますが、そのでき方は全く異なっています。

次回は、もう一つのタイプの鉱床でできる ガーネットの性質について学びます。ご期待下さい!



地球教室 実施レポート(1)
地球教室 実施レポート(2)

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