NO | 団体名 | 主な企画内容
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17 |
上越教育大学付属小学校(新潟県) |
「創造活動「あじわいキャンピング」」 仲間と地域のキャンプ場を巡りながら、季節や各地の魅力とともに変わるキャンプをあじわい、仲間や地域とのかかわりをひろげていく活動。地域の魅力をあじわい「キャンプのまち」として上越のPRも行う。 |
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速報レポート1
活動期間 令和3年4月12日~7月19日(1学期)
活動場所 上越教育大学附属小学校校庭、平山キャンプ場、大潟キャンプ場
参加人数 上越教育大学附属小学校3年2組児童35名
保護者サポーター
国立妙高青少年自然の家企画指導専門職付 蟹江摩耶
創造活動の概要
[あじわいキャンピングとの出あい]
4月12日(月)、子どもたちは1年間活動をともにするテント、机上に置かれたテント設営に必要なギアが入ったバックパックと出あった。子どもは、バックパックをかつぎ、テントをもち、敷地内にある丸池と呼ばれる場所に行き、思い思いの場所にテントを張りながら、キャンプを対象とした創造活動に思いや願いを膨らませていた。
[キャンプの楽しみと言えば]
翌日、子どもに「キャンプと言えば?」と問いかける。すると、真っ先に出てきた言葉は「自然」であった。自然とともにあるのがキャンプと、子どもはこれまでの生活体験やキャンプがもつイメージから話し始めた。子どもが潜在的にもっていたキャンプの楽しみが顕在化していった。
そんな中、子どもが最も夢中になったのが火起こし(たき火)であった。子どもはたき火をするために、落枝を集めるようになった。しかし、なかなか火がつかない現状に、教室に置いてあるキャンプ本やキャンプ経験が豊富な子どもの言葉から、落枝を細かくけずること火が付きやすくなることを知り、新たなギアとしてサバイバルナイフを手にした。子どもは、キャンプへの思いや願いの具現に必要なギアとともにキャンプの楽しみをつくっていった。
サバイバルナイフとの出会いは、火起こしの実現だけでなく、落枝を使い、箸や串をつくることで、火起こしから食へと活動をひろげる契機となった。
[火起こしからひろがるキャンプの楽しみ]
火起こしをつづける子ども、サバイバルナイフでつくっている箸や串が完成する子ども、それぞれの活動を楽しむ中で、ある日の活動で「マシュマロを焼いて食べてみたい。」と話す子どもがいた。翌日のあじキャントークで話題に出すと、「やっぱ火を起こすのは食べるためでしょ。」「落枝でつくった串で食べてもいい?」などと、これまでの活動がひろがっていった。
自分で起こした火で焼かなくては意味がないと、子どもは仲間と協力しながら火起こしをしていた。焼きマシュマロを食べると、子どもは「他にも何か食べたいな」「やっぱり、キャンプと言えば外でのご飯だよね」と話し始めた。あじキャントークで、これらの願いを具現するにはどんなことが必要かと尋ねると、鍋やフライパン等の新しいギアの必要性はもちろん、つくるものによってはより強い火をより長くつけられるようにならないといけないと子どもから意見が出された。
翌日、新たなギアとして、鍋セットとスキレットを渡すとともに、あじキャントークで「火のおこし方について」子どもと話し合った。「丸池にある落枝だけでは、なかなか強い火が起こせない」「大きい木のほうが長く燃える」「スギっ葉がすごく燃える」「家では炭を使う」と、それぞれが火のつきやすさや燃焼時間を視点に意見を出し合い、火起こしのスキルアップへとつなげた。
また、より強い火が必要となった子どもは、今までのように直火をしていたら危険であると同時に、自然を痛めてしまうことに気付いた。そこで、より安全に、より自然に配慮して火起こしを行うために、かまどをつくることにした。
子どもは、持ってきたカップラーメンやもち、ココア等を食べたり、飲んだりするために、かまどで火を起こした。成功と失敗を繰り返しながら、火起こしのスキルを高めるだけでなく、困ったときは仲間と協力するようになっていった。キャンプでの困り感により、自然と子どもは協働的に活動をすすめるようになった。
[これで大丈夫?]
活動がひろがる一方で、活動場所にギアが置き忘れられていたり、ときにゴミが捨てられたりする問題があった。「これで大丈夫?あじわいキャンピング」をテーマに話し合った。子どもの意見には、「規則の尊重」「節度、節制」など、「特別の教科 道徳学習指導要領」で示されている内容項目を含む意見も多く、キャンプを通して、子どもは自らの道徳性について見つめ直していった。
[自然もギアになる]
火起こしが活動の中心となる中、活動終了時刻になり、片付けが終わると、合間の時間に使い終わった炭で字や絵をかいたり、落ちているつたで遊んだり、落ちている銀杏集めたりする子どもの姿があった。
ハンモックをしたいという子どもがいた。丸池には、ハンモックをつける上でちょうどよい木もあり、あじわいキャンピングが始まったときからいつかしてみたいと考えていたと話してくれたのでハンモックをつけるための、ガイロープを渡した。それを見ていた子どもが自分たちもほしいと言いにきた。「あなたたちもハンモックをしたいの?」と尋ねると、ハンモックをしたいわけではなく、ロープをみて、いろいろな遊びが出来そうだと考えたと話し始めた。ロープを渡すと、子どもは丸池にある木を利用しながら、ロープブランコ、登り綱としてのロープをつくり始めた。
このような子どもの姿をもとに、あじキャントークで活動について話すと、自然も自分たちにとってはギアであるという意見が出された。子どもにとって、ギアとは自らが考えるキャンプの楽しみを具現するためのものであることととらえていることが実感できた。自然もまた、子どものキャンプの楽しみをつくる一つになっていった。
[本物のキャンプって?]
子どもは、敷地内の丸池であじわいキャンピングを思いっきり楽しんでいるように思えた。しかし、5月頃から、一部の子どもが「本物のキャンプをしたい。」と時々口にすることがあった。この子たちが言う本物のキャンプとは何なのかとずっと考えてきた。6月に入り、キャンプとかかわり続けている子どもたちと、これまでの活動を振り返りながら、「これまでのあじわいキャンピングは本物のキャンプなのか?」と尋ねた。
すると、子どもたちはこれまでの活動を通して、内に溜めていたキャンプのとらえを話し始めた。「キャンプって、いろいろなところに行くけど、あじわいキャンピングでは行っていない」「食べるのも家から持ってきている物だから。もっと、自分たちで調達してつくったりしてさ。」「今までのあじわいキャンピングだって、本物のキャンプだ」などと、子どもが話していくと、ある子どもが、「本物とか、偽物じゃなくて、まだたりないところがあるってことじゃない」と話しました。すると、「じゃあ、キャンプ場に行ったり、泊まったりするキャンプもあじわいキャンピングですればいいんじゃないか」となり、あじわいキャンピングで「キャンプ場巡り」が行うことにしました。
社会科の「私たちが住む市のようす」と関連付け、いったい上越市にはどれくらいのキャンプ場があるのか調べました。
すると、インターネットで、15箇所のキャンプ場があることに気付きました。一人一人が見つけたキャンプ場名と所在地を紹介し合う中で、「どこのキャンプ場に行きたいか」と尋ねました。「せっかく行くなら、その時ならではのキャンプ場に行きたい」と言う子どもに対して、「どういうこと?」と尋ねると、「季節によって風景とか違う写真がネットにあったから」と答えました。周りの子どもから、「〇〇キャンプ場は、秋がお薦めって書いてあった」などと、調べたことを基に反応し始めました。子どもたちは、キャンプ場を調べる中で、それぞれのキャンプ場が紹介されるときに使用される写真等の違いから、キャンプ場にはそれぞれの魅力があることに気付いていました。
そこで、キャンプ場巡りは、時期や季節、またそのキャンプ場ならではの魅力からキャンプ場を選んでいくことを決めました。
[第1回キャンプ場巡り:平山キャンプ場]
平山キャンプ場に行く前日、キャンプ場での食べる昼食を近隣のスーパーマーケットに買いに行った。昼食選びは、キャンプの楽しみの一つであり、子どもは500円という予算の中で、カップラーメンや湯煎で食べられるカレー等を選び、平山キャンプ場での昼食づくりへの期待を膨れませていた。
6月23日(水)、平山キャンプ場に着くと、子どもたちはすぐにテントを設営した。当日は雨だったが、普段から雨の日もあじわいキャンピングをしている子どもたちは、木は傘になることを知っており、テントを設営する場所を選んでいた。その後、ドラム缶風呂に入ったり、学校にはない植物で草花遊びをしたり、普段目にしない生き物を探したりした。国立妙高青少年自然の家の蟹江様を「キャンプの達人」として招き、子どもは草花遊びや初めて見る生き物について教えてもらうなど、共にキャンプを楽しんだ。
振り返りでは、初めてのキャンプ場巡りであじわった楽しみだけでなく、課題も見つかった。
[天気とキャンプ]
平山キャンプ場で強い雨の中、あじわいキャンピングをしたり、7月になると警報級の雨が予報される日もあった。子どもたちは、そのような事実と出あう中で、あじわいキャンプにとって天気は重要なことであると気付いた。その後、毎朝、黒板に雨雲レーダーの写真を貼ったり、発令されている注意報や警報を確認したりしながら、その日の活動について考えるようになった。
[第2回キャンプ場巡り:大潟キャンプ場]
子どもが調べた上越市のキャンプ場の中で最も海が近い大潟キャンプ場は、7月に巡るキャンプ場に合っていると、7月16日(金)に行くことに決定した。子どもたちがあじわいキャンピング後に書く作文シートに、食べる物について書かれていた。
そこで、「どうする?大潟キャンプ場の昼食」をテーマにあじキャントークをすると、再び「本物のキャンプ」が話題にあがった。自分たちでつくり、よりキャンプをレベルアップさせたいと子どもは思いを表出した。キャンプ飯がブームになっている事実を紹介し、あじわいキャンピングでもキャンプ飯をつくろうと決まり、大潟キャンプ場では、自分たちで昼食をつくることになった。
大潟キャンプ場では、近隣の海に出かけたり、キャンプ場内の豊富なアスレチックで遊んだり、新潟県の森森林浴100選にも選ばれている豊かな森を満喫したりした。大潟キャンプ場の魅力をあじわうとともに、初めて自分たちで作るキャンプ飯のおいしさも味わった。
他の教育活動とのつながり
[社会科:上越市の土地の様子]
3年生の社会科の学習内容に「市の様子」がある。子どもたちが住んでいる上越市は、平成年に合併され、旧上越市と12区で構成されている。
あじわいキャンピングにおけるキャンプ場巡りから上越市の土地の様子について地図にまとめていった。
平山キャンプ場(旧上越市)を基点に周りを見たとき、西に豊かな森がある一方、東側は住宅地になっていること、大潟キャンプ場は西は海、東は住宅街になっていることに気付いた。市内の3年生に配付されている社会科副読本に掲載されている地図と実際にあじわいキャンピングを通して見てきた様子が同じであった。
しかし、ある子どもは大潟キャンプ場がある大潟区の地図に違和感があることに気付いた。大潟キャンプ場には豊かな森があったにもかかわらず、副読本の地図では大潟区に森林がある場所を表す緑色が塗られていなかった。多くの子どもが共感し、Google Earthを使って確認すると、実際は、大潟区は西から海→森→住宅地と土地の様子が変わっていることが明らかになった。
キャンプ場巡りを通して、上越市の土地の様子について、より詳細に見つめる子どもの姿があった。
副読本に記載されている地図の大潟区
子どもがまとめている地図の大潟区
[道徳:テント設営は早い者勝ち?]
子どもたちのあじわいキャンピングには、必ずテントがあります。時折、テント設営にかかわり、子どもの声が聞こえてきました。「あそこは、私たちの場所だったのに」「あそこにテントを設営されると、ハンモックが付けられない」「ここは、僕たちの場所なんだけどな・・・」自分たちが設営しようと思った場所に、既に別のテントが設営されていたとき、子どもはどこか不満そうな表情を浮かべていた。あじわいキャンピングでは、丸池という大まかな活動場所は決められていても、誰が、どこにテントを設営するなど細かい場所の指定はされていなく、こういった不満は子どもから出て然るべきだった。
そこで、道徳の時間に「テント設営は早い者勝ちでよいか」と問うと、大多数がよくないという一方で、数名の子どもがよいと答えた。よくないとする子どもは、「不公平である」「取り合い(争い)が起きる」「譲り合うべきだ」「準備で遅れた人が選ぶことができなくなってしまう」と話し、その理由には、「公正」「思いやり」「相互理解」といった内容項目が含まれていた。よいとする子どもは、「キャンプは自由だからこそ楽しい」「自分が気に入って設営した場所を譲ることはみんなできないはずだ」と、自由という視点から話した。これらの2つの意見は真っ向から対立した。「自由の人の裏には、自由じゃない人がいる」「設営したい場所があるのはみんな同じ。だから、譲り合おうとすれば争いになる」と、お互いが大切にする価値について意見を言い合った。自由とは何なのか、公平とは何なのか、子どもはテント設営の先にあるところまで考えを
ひろげ、テント設営から自分の姿を見つめることで、それぞれの道徳的な価値観をつくった。
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