NO団体名主な企画内容
23 NPO法人自然体験共学センター(福井県) 「手作りのキャンプ場で過ごす一週間の自然体験キャンプ」
ふるさとを五感で味わう「農と食の活動」など、いくつかのプログラムを用意し、子どもたちが話し合い一週間のスケジュールを決めていき、そこにふさわしい拠点を構築する。

速報レポート2

日 時:平成22年8月7日(土) 〜13日(金) 6泊7日
場 所:福井県福井市上味見地域
参加者:小学生16名
指導者:団体職員,活動ボランティア,地域住民(合計約10名)
活動計画

(1)自然の中に築き上げられた手作りの活動拠点で,日本の「身近な自然」「身近なふるさと」と触れ合い親しむことで,自然・生活・文化などへの興味関心を醸成する。
・普段何気に過ごしている自然や生活の風景の中にある,たくさんの楽しさ・不思議さ・優美さ,数え切れない物語の存在に気付くことにより,日本の郷土を見つめなおす機会にしたい。また,活動中も用途に合わせて活動拠点を自分達で変化させ,動きのあるキャンプ場を構築する。大人・子ども共に活動拠点を作り上げ,達成感や郷土に対する愛着を感じさせたい。

(2)参加者のつながりを強く築くことで,仲間意識を持つことや活動のステップアップ,さらなるチャレンジ精神を刺激し,仲間同士育み合う関係を築く。
・異なる生活背景や異年齢集団の中での1週間の自然体験や共同生活を通して,豊かな人間関係を築く。年代に応じた活動や班の協力を促す活動を展開していくことで,信頼関係,つながりを築き,次の段階への意欲・チャレンジ精神を刺激し,育む場にしたい。

活動内容

〜 活動行定表 〜

 朝活動昼活動夜活動
1日目キャンプ場到着
オリエンテーション
日程作り
2日目町探検
上味見川遊び
班活動(ツリーハウスの森・ヒミツ基地焚き火
焼きマシュマロ
3日目班活動空気鉄砲作り・自由工作班活動(沢遊びドリームキャッチャー作りきもだめし
4日目地域バスで移動
足羽川川流れ体験
カヌー体験
伊自良温泉入浴
森の映画館
5日目班活動自由工作バームクーヘン作り暗闇体験
6日目思い出クラフト作り
キャンドルファイヤー会議
思い出クラフト仕上げ
キャンドルファイヤー練習
キャンドルファイヤー
ふりかえり
7日目片付け・掃除
終わりの会
  

切り開いた活動拠点を中心とした「森の活動」
郷土の生活や風土を活かした「里の活動」
ダイナミックな自然を存分に味わう「川の活動」
協力や信頼関係を大切にした「仲間の活動」
ふるさとを五感で味わう「農と食の活動」
静に浸り灯火に集う「夜の活動」
自分と向き合い友と語る「ふりかえりの活動」

■森の活動
《活動内容:ツリーハウスの森遊び・ヒミツ基地作り・薪拾い》
 ここは福井県福井市にある上味見地区。四方山に囲まれた和に田園風景が広がるこの地で,活動が始まります。会場は平成13年3月に廃校となった上味見小学校と裏の休耕田を切り開いたキャンプ場。隣には小川が流れ,ツリーハウスの森や雑木林の遊び場があります。
 そのキャンプ場を拠点にした一週間の自然体験キャンプです。水道・電気・ガスが充分に得られない環境に驚く参加者達。これから始まる生活に不安を隠せない参加者もいます。
 いざ活動が始まると,そこは遊びが無限に広がるステキな森。ツリーハウスの森を拠点にした遊び場作りや,新しい場所を切り開いてのヒミツ基地作りなど。そこには,子どもだけに広がる様々な遊びのルールが次第に敷かれていきます。土地の起伏を利用した基地への入り口,そこへ入るための不思議な合言葉,自然に割り振られる子どもたちの役割,そして森に広がる子どもたちの大きな世界。木々の一本一本,岩の一つ一つ,何一つ無駄なものはない。一つ一つが子どもたちにとっては大切な世界の一かけら。ルールが予め敷かれているTVゲームの中では味わえない,発見・構築・蓄積・工夫の面白さ,衝突・諍い・亀裂の辛さ,和解・譲り合い・強調・協力の喜び。様々な感情が交錯し,より良い人間関係が築かれ,崩れては,またさらに高く築かれていく。今回の活動に関しては負けず嫌い,喧嘩早い子がいたからこそ,森の力を解して人間関係がより深められました。
 出来上がったヒミツ基地は集う子どもたちの世界であり,城となった。見た目はただの森ではあるが,子どもたちの想いが詰まった他にはない大切な森となりました。





■里の活動
《活動内容:町探検・やまびこ・伊自良温泉入浴》
 上味見地区は,コンビニも信号機もない田園地域。訪れる人はよく言う「なにもないところ」だと。そんな人ほど知ってほしい,感じてほしい「たくさん詰まっているところ」だということを。子どもは純粋な目で大人以上によく感じ取ります。田んぼに住む生き物,それを狙う鳥たち。実ったばかりの瑞々しい作物,そこに共生する草花たち。時間と共に変わる空の色,風の温かさ,森の音。
 生活の日数が進めば進むほど多種多様の発見ができ,それはもう一瞬として同じ景色はないほどの壮絶な生活を送ることになります。田んぼや温泉,食など地域資源を存分に活かしながら,地区の魅力を子どもたちと共に発見していきました。




■川の活動
《活動内容:上味見川遊び(上流域)・足羽川遊び(カヌー体験・中流域)》
 まずは上味見地域の中心を流れる上味見川で川遊びの活動を行いました。上味見川は九頭竜川の支流で上流域に位置しています。川の水は澄んでいろいろな生き物も暮らしていますが,上流故にその流れる水はとっても冷たい。始めは子ども達もその冷たさに驚き,身構えていましたが,慣れてくるとお構いなし。思い思いに生き物観察や笹舟レース,水遊びなどの活動を行い,上流域の川の特徴をつかみました。
 日を挟んで中流域の足羽川まで足を伸ばしました。1日に4本しか走っていない地域バスに乗り,ゆったり旅気分。中流域まで下ると川の水量や河川敷の様子,町の様子も変わってきます。活動内容も上流域ではできなかったカヌー活動を取り入れ,その違いを明確にします。ある子は川の流れの速さの違いに気づき,ある子は川に泳いでいる魚の大きさの違いに気づき,ある子は川に落ちているゴミの違いに気づくなど,それぞれが感じる発見,学びを抽出しました。それにより,同じ「川」でも人間にとっての用途の違いや,その違いによって町の風景も違い,人と川の繋がりの深さ,川との共生生活について考えました。





■仲間の活動
《活動内容:協働生活・日程作り・班活動》
 食事作り,寝床作り,活動準備,片付け,掃除…生活を営む上での仕事は溢れるほどたくさん。全部一人で頑張るのは大変だけど,仲間と協力しながら進めるとこなすことができ,さらには工夫しながら楽しみながら生活することができます。そこから仲間の繋がりを知り,協力する大切さを学びます。
 活動の日程も子ども達が話し合って決めます。話し合うからこそ活動に主体性が現れ,目標が決められ,仲間意識が生まれる。集まった仲間だからこそできる日程を集まった仲間で過ごしていく。暮らしを大切に,暮らしから学び合いました。





■農と食の活動
《活動内容:野菜収穫・食材買出し(卵の自動販売機・豆腐屋さん)》
 地域で採れた食材を地域でいただく美味しさを味わいます。
 ある子はナスが嫌いだが,自分で収穫したナスは美味しいと言いながら食べることができました。ある子は普段少食だが自分で調理した味噌汁はおかわりし,ある子は収穫前の野菜に名前をつけ,収穫を心待ちにしていた。残念ながら収穫を直前にハクビシンと思われる動物に食われてしまい,収穫の大変さと自然界の動物との共生も学ぶことができました。




■夜の活動
《活動内容:きもだめし・森の映画館・暗闇体験》
 昼間美しい森も,夜は恐怖すら感じる存在となります。普段の生活では,部屋の隅々まで明るく照らされ,闇の部分がない。闇を知らない子らにとって,暗闇は知らないもの,把握できないものであり,それが恐怖となる。
 その恐怖を活かしたきもだめし,暗闇を暗闇として認識するための暗闇体験等を行いました。
 暗闇体験では,まず暗闇の中に身をおいてみる。最初は恐怖感に縛られ動くことも難しいですが,目が見えないと耳が敏感に働いてきます。仲間や虫の声,風や森の音,耳を傾けていると次は匂いに敏感になります。触覚に敏感になります,想像力が豊かになり,発見力が高くなります。次第に目が慣れてくると周りが見えてくる。しかし,暗闇で得た聴覚・臭覚・触覚などの感覚は消えず,感覚が研ぎ澄まされたまま暗闇を見ることができます。そこはもう恐怖ではありません。暗闇を知り,暗闇を楽しむことができました。





■ふりかえりの活動
《活動内容:活動毎ふりかえり・キャンドルファイヤー》
 子ども達で活動の日程を決め実行する活動を行います。一つ一つの活動に対して,【計画→準備→実行→ふりかえり】の流れを実行し,特にふりかえりの時間を大切にしました。ふりかえりの時間で,今回の活動で頑張れたこと,達成できたこと,発見したこと等を共有し,成果をまとめます。また,達成されなかったことや,問題になったこと,ルールが不明確になっているところ等も共有し,次の活動にどう繋げるかを話し合いによりまとめていきます。この時間により,成果や課題を共有する仲間としてそれぞれが目標を明確に持ち,仲間の一体感を築き上げるものとなります。
 また,最後のキャンドルファイヤーのふりかえりでは,班を越えて全員でのふりかえりの場を設け,話し合いました。楽しかったこと,初めてチャレンジしたことや頑張ったこと,辛かったことも正直に出し合いました。多くの子が大変だったことも辛かったこともあったと応えたが,その経験があっても楽しかったとふりかえることができていました。大人でもなかなか成し遂げられない成果を子どもらは一週間の期間を経て得ることができました。決して便利とはいえないキャンプ生活の中で,不便さを楽しさに変えるという大きな力を得て,個々に,仲間同士で,立派に成長している姿が見られました。





総括

 草むらだったキャンプ場でテント設営するところから始まり,かまど作り,薪拾い,洗濯物干し,,,徐々に生活感の漂うキャンプ村へと姿を変えていきました。既に作られ与えられたものとは違い,キャンプ場に設置されるもの一つ一つに子どもたちの思いやこだわりが込められていきます。ものによっては使用の順番や方法などが決められ,そこは集まった子どもたちの世界となっていきました。キャンプ場がキャンプ村へと変わるにつれて,子どもたちの人間関係も深まっていきました。
 この活動では多くのことを子ども同士で意見を出し合い,話し合って決めていきます。些細なことや楽しいことを決める会議では折り合いをつけながらすぐに意見がまとまりますが,半日や一日の活動内容を決める会議では,話しが広がり意見の出し合いで誰も決定することができません。また食事の片付け役割分担会議でも,不人気の役割が偏り,問題が発生します。そういった時こそ一層深い話し合いを行います。子どもたちなりに工夫をしながら話しを進め,協同生活の素晴らしさと大変さ,意見をまとめていく難しさと上手にできた時の喜び,ここで生活する意味を学んでいきます。問題が起きてしまうと人間関係・信頼関係は脆く崩れてしまうものですが,一度崩れた関係は再度積み上げると,さらに高く積み上げることができます。崩れては積み上げ,また崩れては積み上げる。それによりお互いを様々な角度から知り,お互いに認め合う関係が築かれていくことになります。
 手作りのキャンプ場で行う,一週間の自然体験キャンプを行い,水道・電気・ガスが満足できない不便なキャンプ場は,様々な思いの詰まった大切なキャンプ場,森,里へと変わっていきました。それは子どもたちの言動や行動,仲間との関わり,自然との接し方から感じ取れ,ライフラインの大切さや身近にあるステキな自然を発見する力,自然・生活・文化への興味関心,仲間とのつながりや仲間とのチャレンジ精神を刺激しあえる信頼関係作りなどが育まれ,個々としての成長や集団として成長する姿が見られました。



速報レポート1
速報レポート2

■別年度のレポート
2009年度 まんまる自然体験キャンプ 〜自然と地域をまるまる・まるごと・まるかじり〜 実施レポート

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