NO団体名主な企画内容
5 猛禽類保護センター活用協議会(山形県) 「見る!作る!鳥海山(ちょうかいさん)の野鳥とSDGs」
専門家を講師に、見ると創作をセットにして、生態系から受ける恩恵を学習する。それとは逆に、貢献するための物づくりを通して、SDGsが掲げる持続可能な社会を実現するために、人の暮らしと野生動物との見えない繋がりを学ぶ活動。

速報レポート3 イヌワシの棲める森と木材利用のすゝめ

活動日: 2023年10月21日(土)
活動場所: 鳥海山鶴間池“のぞき” ~ 鳥海イヌワシみらい館
参加人数: 小中学生4人 / 大人10人 / 指導者5人 / 合計 19人
活動内容

鳥海山のイヌワシの保護の歴史を知り、これから私たちがイヌワシのために何ができるか新しい時代の保護の在り方について工作体験を通して考えるプログラム

3回目のテーマは“イヌワシの棲める森と木材利用のすゝめ“です。
講師は30年前の鳥海山スキー場開発計画の際、まだ解明されていなかった酒田市のイヌワシ生息調査をしたネイチャーカメラマンの斎藤政広さんです。
天気予報ではイベント前日から降水確率も高く、当日も屋外での活動には厳しい天候となってしまいましたが、雨の止み間を期待して開催しました。天候状況を踏まえ当初の予定を変更して、真っ先に観察ポイントへ行きました。イヌワシの生息する森は、深いガスに覆われて見通しが効かない状況でありましたが、そうした厳しい環境になりがちな鳥海山の中でも、この地を離れずにイヌワシたちが暮らし続けていることを想像していただきました。また、斎藤政広さんからは「こうしてブナ林の中にガスがかっている状況も、写真を撮影する際にはあえてその現象を利用することで神秘的・幻想的な写真がとれる」といった写真家ならではの視点から、良い側面があることを解説していただきました。安全を第一に準備をすることが前提ですが、あえて天候の悪い日を狙うのも新しい発見につながるのかもしれません。
雨が強くなってきたのでフィールドでの観察を終了して鳥海イヌワシみらい館に戻りました。







室内講座では、斎藤政広さんより酒田市のイヌワシ保護の歴史について当時の状況、ご自身の活動について語っていただきました。どのような経緯でイヌワシの生息地がまもられたのか、保護活動に奔走した政広さんの思いに触れました。そしてその活動によって、今でもイヌワシたちが世代交代をしながらも生息し続けられる環境が残されていることを知っていただくことができました。最後にこれから私たちが自然との付き合い方についても、政広さん流のおだやかでありながら、自然の一部である人間なんだと意識し、注意深く考えながら行動するようメッセージを受け取りました。



イヌワシの生息地開発危機から30年がたった現在、全国各地のイヌワシの生息する森では、森林の管理放棄が大きな問題になっており、イヌワシたちの繁殖の妨げになっていることを知っていただきました。そのためにも、樹木・特に人工杉林のスギの木を伐採して使うという、一見すると自然破壊ではないかと感じる活動が、実は森林環境の改善とイヌワシの生息に良い影響を与えることを単純なフローで解説しました。

(① 人工杉林を伐る 
(② 人工杉林の中に日差しが入ることで“草”が増える 
(③  増えた“草”を食べることで、草食動物も増える
(④ イヌワシたちは人工杉林の中にできた切り開かれたスペースを使って、増えた草食動物をつかまえる
(⑤ 狩り場とイヌワシの成長に必要な草食動物が生息環境にもたらされることで、幼鳥の繁殖に成功する
(⑥ 人間の社会も、伐ったスギを使ったバイオマス発電や、国産材の利用促進から“林業の復活”によって経済の好循環が期待できる

そして楽しみながら木材利用を体験してもらうために “寄木細工”と酒田市のスギを使った“ボールペン作り”を行いました。
木材をペン軸にする工程では、木工旋盤を使用してシュルシュルと木を削ることに楽しさを感じてもらえたようです。またデザインも溝を掘って線を入れたり、くびれを作ったりしてオリジナルのボールペンができました。作品はナチュラルな仕上がりで木目が美しかったです。
寄木細工も、樹種による色の違い、硬さの違いなど同じではないことを知っていただくことができました。
今ここで消費される木材は到底イヌワシたちの生息環境改善に影響するものではありませんが、木材に触れて、ぬくもりや良さ知ってもらうことで国産木材の使用が日常的に行われることにつながればと思います。








これまでは「生物のために!」と環境保護活動が行われてきましたが、今後それだけを目的にしては保護活動を”持続”させることが難しくなることが予想されます。目標とする“持続可能な社会”の中には、イヌワシたちを含む自然環境のみならず、私たち人間の平和な暮らしがあることも大変重要な要素です。こうしてみなさんから”楽しく・無理することなく”参加していただくことで、環境保護と経済の循環がもたらされることは、今世界で大きく発信されている“SDGs”の理念と活動に沿うものであることを理解していただきました。
講師の齋藤政広さん、美しい写真と言葉による描写は、その当時の情景がありありと浮かび、子供達だけでなく大人たちの心にも響くものでした。そして天気の悪い中参加してくださった皆さん本当にありがとうございました。この日は残念ながら酒田市に生息するイヌワシを観察することはできませんでしたが、これからの保護の在り方について考えるきっかけになれば幸いです。

悪天候によりキャンセルになった参加者もあり、定員に達しませんでしたが、無事にイベントを終えることができました。ご支援いただいた(公財)安藤スポーツ・食文化振興財団に感謝申し上げます。ありがとうございました。

子どもたちの感想

  • バスに乗って山に行くのが楽しかった。
  • 観察が目的で参加したが、やってみたら工作も楽しかった。
  • 天気が悪いことが残念でした。晴れた鶴間池と紅葉が見たかった。



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