NO団体名主な企画内容
11 柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(千葉県) 「理科の体験農業」
農業体験を通じて子どもたちが、自分たちの感性で不思議だと思うことを自発的に探し出し、お互いに伝え合うことで、好奇心やコミュニケーション力、思考力を身につけることを目指す教育的要素の高いプログラム。

速報レポート2

実施日時:2015年8月23日(日)9:00~11:00
実施場所:ペリカンハウス裏庭(千葉県柏市若柴)
開墾までの道のり

本企画では当初、みらい平にある体験農園での実施を予定していました。しかし小学生の保護者から、地域内での開催を望む声が数多く寄せられました。当会としては近場での活動拠点を確保するのが困難との認識でおりましたが、そんな折に柏市から土地利用協力として以下の依頼がありました。
現在、日本全国で空き家問題が深刻化しています。何らかの事情によって管理が行き届かなくなった家や庭が日本各地に散在し、それは柏市でも例外ではありません。一度空き家状態になると、庭には草が繁茂し、敷地の外にまで植物が進出したり、不届き物がゴミを投げ入れたり、虫が大量に発生したりします。近隣住民に迷惑をかけたり、犯罪を誘発したり温床になったりする、歓迎できない存在です。一方で、他人の土地なので周りの人は用意には入り込めないし、地権者さんにも事情があって整備できずにいることがほとんどです。そこで柏市では、市と市民活動団体の協働により、まずは外から見える空き家の庭を整備しようという動きが始まりつつあります。
ちょうど当会では「理科の体験農園」プロジェクトを企画しておりましたので、空き家状態となっている物件の庭をお借りして整備・開墾し、体験農園プロジェクトを実施することで、学びの場として生まれ変わらせ、同時に荒れ果てた庭も復活させよう、という挑戦を始めることとしました。計画の変更に伴う手続きや、市および地権者さんとの覚書締結に時間がかかったことから、プロジェクトの開始が当初より大幅に遅れてしまいました。しかしこの計画変更は大きな3つの意義があると考え、当初の計画を変更して市役所からの提案に協力することといたしました。一つ目は、参加する子ども達に、社会問題について考え関心を持つ機会を作ることができる点です。二つ目は、地域に根差した活動を行うことができ、地元に住む参加者も参加しやすくなるためです。三つ目は、これが最も重要な点ですが、整備された農園よりも荒れ果てた庭の方が、多様な昆虫がおり、植生も豊かであり、理科学習上の価値が高いためです。
まず、当会の通常の活動エリア内で、駅から近く、比較的自由に利用できる、庭の広い空き家状態の、市が仲介できる場所、という条件で候補地を絞り込み、駅から徒歩15分程度の、元はカフェの庭だった場所を活動拠点としてお借りすることになりました。当初庭は荒れ放題で放置されていたため、そのままでは危険物が出てくる可能性もあって子どもを入れられないので、8月8日(土)8:00~10:00に5名、9日(日)6:00~8:00に1名、15日(土)6:00~8:30に1名のスタッフが草刈り・清掃を行ないました。


草刈り前の庭の様子。写真の右側に建物がある。元はハーブ園だったが、セージが繁茂し、その隙間にドクダミなどが入り込んで鬱蒼とした雰囲気でした。

草刈り前の庭の様子。写真右の人物の位置から建物の右奥を撮影したのが、セージが繁茂している前出写真の様子。

初日終了後の庭の様子。地面がほぼすべて露出しました。

かなり地下深くに地下茎が縦横無尽に走り回っていたため、一度の草刈りでは駆除しきれませんでした。そこで、3回にわたって草刈り・清掃を行う必要がありました。この時に刈った草の量は、2m程度の山が2つもできるほどでした。

開墾・植物観察・昆虫や土壌生物の観察

8月23日、当初の予定よりはだいぶ日程が遅れてしまいましたが、子ども達と共に開墾を行ないました。地上の茎・葉を刈っただけでは、根や地下茎の強い植物はすぐにどんどん芽を出してしまうので、耕して根から取り除きます。スコップや熊手などで取り残された根を取り除き、耕しました。そしてその作業の中で、本プロジェクトの最大の特徴である、理科の学びを取り入れていきました。
まず、地中に残った部分を取り除く際には、植物の種類によって地中の様子は異なり、土と空気の境界から根が放射状にのびているものや、ジャガイモのような芋状の部分を持つもの、根がわずかにしか存在せずに地下茎で延伸していく種類など、一口に植物の地下部分を掘り出すと言っても多様な世界が広がっていることを学びました。また、地下の様子と対応するように、地上に露出している部分の様子も、直立したり、ツタ状に他の樹木や植物に巻き付いたり、円盤状に葉を広げたりと、特徴があることも学びました。
また、事前学習で学んだ「団粒構造」も実際に観察しながら作業を進めました。草刈りをしていると、バッタやカマキリなど地上に住む昆虫を見ることができますが、地面を掘り返してみると、団粒構造を作り出す土壌生物たちの姿も確認できます。カブトムシの幼虫やトビムシ、ムカデやミミズなどを多数発見した他、顕微鏡を持ち歩いて次々と新たに発見した生物を報告してくれる子も現れました。虫眼鏡を渡すと、それを使って日光を集めて発火させようとしている子供もいました。大人が見守る中、刈り取った草木を発火させようと粘っていましたが、煙は出るものの炎が出るまでに加熱するのは意外と難しい、ということも学んだようでした。
本プロジェクトは、保護者の方も一緒に参加しているのが特徴の一つです。親元を離れて子どもだけで参加することも、子供の自立のためには必要なのかもしれませんが、本プロジェクトの一番の狙いは、理科の学びを得ることです。したがって、帰宅後も親子で思い出話をすることで、無意識のうちに振り返り学習を行うことができるという意味で、親子での参加は有意義であると考えています。
また、参加した方々からは、「既に整備された体験農園では開墾の体験はできないので、今回は貴重な経験ができた」とおっしゃっていただき、空き家の庭での実施を決めた時の狙いは間違っていなかった、とホッと胸をなでおろしました。

植えつけ

開墾しながら、植物や昆虫・土壌生物の観察を行ないました。顕微鏡やルーペ(虫眼鏡)を用いた観察を畑で行うのは、子ども達にとっても新鮮な体験だったようで、とても熱中して新しい発見を探したり、講師に質問したりしていました。
開墾終了後には、雑草に対して強いハーブの植え付けを行ないました。今回は、来年度に開花が良そうされ、秋が植え付け時期とされる、レモンバーム、カモミール、ラベンダーの3種類の種を植えました。まずは発芽まで2週間かかりますが、その後は継続的に手を入れる必要があるため、慎重に経過を観察する予定です。


開墾作業の様子。土を掘り返し、地下に残った茎や根を取り出します。

土を掘り返していると、昆虫を始め様々な生き物が見つかります。

日頃は昆虫があまり好きではない、という子も、土をイジって気が大きくなったのか、虫などを捕まえては虫眼鏡や顕微鏡で観察していました。


最後には、3種類のハーブの種を植え、標識を立てました。無事に育ってくれると良いな。



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■別年度のレポート
2016年度 理科の修学旅行 〜アクティブラーニングで海と山と川と教室をつなぐ〜 実施レポート
2014年度 理科の修学旅行 実施レポート

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