NO団体名主な企画内容
27 尾鷲市立向井小学校(三重県) 「『僕らのあそび場づくり~海育・とと育・おわせ行く~』」
「山育・木育」、「川育・雨育」に続く第3弾。子どもたちが主体的に行う尾鷲の自然の特徴を生かした「あそび場づくり」を通して、リスクマネージメントや、自主性、自立性、郷土愛などを育み、自ら考え行動できる能力を身につける活動。

速報レポート2

実 施 日 : 令和3年7月6日(火)9:00~11:30
活動場所  : 三重県尾鷲市大字向井 黒の浜海岸
参 加 者 : 尾鷲市立向井小学校5・6年複式学級9人(5年生3人・6年生6人)
        校長、担任、教職員1人
世 話 人 : 三重大学 大学院 生物資源学研究科 竹端彬良
サポーター : (有)ドーモ(森田)、小川耕太郎∞百合子社(藤井)、三重大学自然環境リテラシークラブ(坂本、山本他6名)、三重大学東紀州サテライト(山本)、尾鷲藪漕隊(内山他3名)、尾鷲ライフセービングクラブ(大谷)、三重県紀北活性化局(桝屋他2名)、尾鷲市水産農林課(千種)   計21人
この日の活動について

 ・場所:尾鷲市向井黒の浜海岸
 ・時間:午前9時00分~午前11時30分(総合的な学習の時間)
  9:00~ ガイダンス
        「尾鷲ととカルタ」発表、第1回の復習
  9:15~ 講座①:食物連鎖について ~プランクトン~
        「尾鷲の海の豊かさを知る」
  9:45~ 講座②:光学顕微鏡を使って黒の浜で採集したプランクトンの観察
        「実際にプランクトンを見てみる」
 10:15~ 講座③:海に浮く練習 
        「海でのリスクマネジメント」
 11:20~ 振り返り:「振り返りシート記入」

活動レポート

(ガイダンス)
 今日は梅雨の時期にも関わらず、天候にも恵まれ初めて海での活動。
 今回の活動では、前回学んだ山の栄養が、尾鷲の豊富な雨により川から海に流れること、その栄養がプランクトンの量と関係していること、尾鷲の自然の特徴である気象、地形、山、海、川の関係性と、尾鷲の豊富な魚の種類がつながっていること、植物プランクトンを最下層とした食物連鎖による人間を含めた生きるもののつながりを感じることを目的として開催する。
(尾鷲ととカルタの発表)
 前回学んだ事について作成した「尾鷲ととカルタ」を一人ひとり発表。
≪ち≫:小さいけど海を支えるプランクトン
≪き≫:危険な魚ダツ見つけたら気を付けよう  など写真1


▲写真1 生徒の学びを50音にしたカルタを発表

▲写真2 9人の生徒が考えた「尾鷲ととカルタ」(第1回目分)

(前回の振り返り)
 世話人の竹端さんから、尾鷲は年間平均雨量が約4,000㎜と雨が多く、山に降った雨が土の中にある栄養を、川を通して海に運んでいる。
 その栄養を、①植物プランクトン食べて → ②植物プランクトンを動物プランクトンが食べて → ③動物プランクトンをアサリや小魚が食べて → ④アサリや小魚をアジやタイなどが食べていると説明を受けた。
 このことが生物多様性に繋がり、尾鷲の海が豊かな海となっているとの説明があった。写真3


▲写真3 前回の振り返り、三重大学の竹端さんからの説明

(講座①:食物連鎖について ~プランクトン~)
アサリが植物プランクトンをエサにしていることの実験を行った。
※実験方法
(1)2つの水槽にそれぞれ同じ海水を入れ、事前に培養しておいた植物プランクトンをスポイトで投入する。(1滴に約1億匹の植物プランクトン×5滴=5億匹)
写真4
=5滴の植物プランクトンを投入したら、水槽の海水が薄緑色になった。
写真5
(2)片方の水槽にアサリを15匹ほど入れて、約1時間放置する。
(3)1時間後に、2つの水槽の海水の様子を観察する。
=アサリの入っていない水槽は1時間前と同じ薄緑色であったが、アサリを入れた水槽は海水が透明になっていた。写真6
→アサリが植物プランクトンを食べていることを学んだ。


▲写真4 培養した植物プランクトン(1適約1億匹)を注入。

▲写真5 たった5滴の植物プランクトンを投入しただけで海水が薄緑色になった。(約5億匹)

▲写真6 約1時間後、アサリが植物プランクトン(薄緑色)を食べることで、水槽の色が透明へと変化したことを確認

 ※途中、植物プランクトンに興味津々の生徒たちからの要望で、匂いを嗅がせてほしいということに・・・。腐ったドブのような匂いがして大人も含めて全員が顔をしかめた。


▲写真7

 「食物連鎖」という普段使い慣れていない言葉を学ぶにあたり、言葉だけで理解するのではなく、実際に、植物ブランクトンを投入したら薄緑色となった水槽が、アサリが入った水槽はわずか1時間程度で透明になるのを目の当たりにした生徒たちは、全員が驚きの表情を浮かべた。
 この驚きが学びの楽しさにつながり、深い理解につながっていくものである。

(講座②:光学顕微鏡を用いたプランクトン観察)
 プランクトンネット写真8を使い、黒の浜でプランクトンを採集し、光学顕微鏡で観察をする。


▲写真8 三角すいの形をしたプランクトンネットを広げて説明する。

 プランクトンネットは、網目の細かな三角すいの形をしたものを用いて、三角すいの先端には、プランクトンを集める装置がついている。
このネットをカヤックにセットし、黒の浜でカヤックを漕いでまわり、ネットの開口部から海水と共にプランクトンが先端の収集装置に入るようにした。写真9


▲写真9 カヤックにセットしたプランクトンネットの先端の収集装置

プランクトンネットの収集装置に入った海水(プランクトン)を試験管に移して、肉眼で見ることができるかを確かめた。写真10,11


▲写真10,11 試験管に移した海水にプランクトンが見えるか太陽に透かして見る。


 試験管の中には、目を凝らしてみると、1ミリ程度の生物が動いているのが確認できた。
 これは「動物プランクトン」で、プランクトンは大きく分けて「動物プランクトン」と「植物プランクトン」の2種がおり、植物プランクトンは光合成で栄養を取り込むので運動などの動きはあまり見られない。
 一方で、動物プランクトンは光合成をせず外部から栄養を吸収するため、運動しながらエサを体内に取り込む動きをするとの説明を受ける。
 次に、収集装置に入った海水をスポイトで吸い取り、スライドグラスというガラス板に移し、カバーガラスを上からかぶせて、光学顕微鏡で観察した。


▲写真12 光学顕微鏡に携帯電話を接続してパソコンに映す

 顕微鏡を覗く部分に、カメラ機能のついた携帯電話を接続して携帯電話のカメラをとおしてパソコンにスライドグラスのプランクトンを映し出した。写真12
 パソコン画面には、「カイアシ類」や「甲殻類」の幼生をはじめとする10数種類の動物プランクトンが確認できた。写真13


▲写真13 映し出された10数種類の動物プランクトン

はじめて見るプランクトンに生徒たちは興味津々の様子で、食い入るようにパソコン画面をのぞき込み、思わず歓声があがった。写真14 


▲写真14 生徒も大人も先生もパソコンに映し出されたプランクトンに興味津々

 この観察をとおして、今までは肉眼で何も見えなければ何もいないと思っていた海水にもプランクトンがたくさんおり、それが尾鷲の自然の良さや魚のおいしさにつながることを実感することができた。

(講座③:海に浮く練習)
前回の講義で学んだリスクマネジメントのなかから、市内全小中学校に配備されているライフジャケットの装着になれることも踏まえて、ライフジャケットを着用して川から海に入り、流れを体感しながら海での危険確認や回避方法を学んだ。写真15,16,17
ライフジャケットの装着は、はじめて付けた前回では、5分以内に付けられた生徒はほとんどおらず、有事の際には考えなくてもすぐに装着できるくらい慣れておかないといけないとの指導もあった。
この日は、練習の甲斐もありゆっくり10を数えるうちに全員が装着することができた。写真15


▲写真15 みんな10を数えるうちに装着できるほど早くなっていた

ライフジャケットを身につけたら、尾鷲ライフセービングクラブのライフセーバーの誘導で矢ノ川の河口から川に入っていく。写真16
7月とはいえ、梅雨の明けていない曇天ということもあり、川の水は冷たく感じる。生徒たちは躊躇しながら、川の流れのまま海に向かって行く。
海まで行くと体感での水温はかなり違い、みんな「こっちは暖かい」と川と海の水温の違いを感じていた。
リスクマネジメントでは、川からの流れを感じ取ることと、またこの日は海から陸への風が吹いており、海に出るときに、川の流れ以外にも風による川とは逆の流れがあり、こうした複雑な流れを感じとることが大変重要であることを体感した。


▲写真16 ライフセーバーの誘導で川の中に入っていく。

また、これらの流れは、陸から海を見たときには全然わからず、流れがないように見えたが、水に入って初めて流れがわかったことから、実際はいろいろな流れが複雑にあることを理解した。
そして、こうした流れには決して逆らわずに、流れにのって流れていくことが重要である。そして、流れが切れたところから自力で泳いでいくことを教わった。写真17


▲写真17 流れが途切れたところから自力で泳ぐ

(振り返り)
すべての講義が終了し、今日学んだこと、気づいたことを振り返りシートに記入し、一人ひとり発表していく。(写真18)


▲写真18

発表内容(振り返りシートから抜粋)

  • アサリの入った水槽が透明になったので驚いた。
  • 目に見えないプランクトンを顕微鏡で見ることができた。
  • 河口の水は冷たかったが、海側は暖かかった。
  • 植物プランクトンが臭かった。

スタッフ振り返り(反省)

  • 子供達が海に対する恐怖がないのはよかったが、その分自由な行動が多く、行動範囲を設定することができなかった。
  • 大潮でなかったので、アサリの採集が難航した。
  • 夢中になり過ぎて、水分補給を行うタイミングがずれてしまった。
  • お互い自己紹介をすべきだった、その為9名しかいないのに、名前を覚えることができなかった。



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