NO団体名主な企画内容
20 伊那市立東春近小学校 6年(長野県) 「「我ら、キラリ探検隊」」
「自分たちでテントを作り、自然の中でのキャンプを楽しみたい」という子どもたちの願いから出発し、子どもたちが主体的に企画し、実施する探検プログラム。テント作りや自然観察会、探検活動を、総合学習や教科学習の内容と連動させて、実体験を伴った学びの実践を行い基礎学力の一層の定着を図れるよう工夫。

速報レポート3 「第1回宿泊活動(初めての宿泊体験)」

実施日時 平成25年 7月12日(金)〜13日(土)
実施場所 長野県伊那市富県東春近小学校
参加人数 6学年児童57名 保護者20名 学校職員3名 
活動目的

(1)学校で初めての宿泊活動をすることを通して、友だちと力を合わせて食事をつくったり、楽しい夜間活動を考え、実行したりすることを通して、宿泊活動に慣れ、自信をつける。

(2)多くの人に支えられて活動することができる喜びを感じ、サポートしてくださる方に感謝の気持ちを持つ。

活動内容(日程)

 7月12日(金)
 午後4時30分〜午後6時30分  
  夕食(準備〜片付け)
  場所 校庭北〜東周辺 (雨天時はウッドデッキ・玄関)
 午後6時30分〜午後9時30分
  夜の活動 午後6時30分〜7時30分 ナイトハイク(上庭周辺)
         7時30分〜8時    スターウオッチング(校庭)
         8時〜9時30分    肝試し(校舎内)
 午後9時30分〜午後10時  就寝準備(体育館で)
 午後10時  就寝

 7月13日(土)
 午前6時   起床 (洗顔・歯磨き・寝床の撤収)
 午前6時30分〜7時30分  朝食(準備〜片付け)
  内容は伊那市備蓄の非常食
 午前7時30分〜8時
  宿泊活動で使った物の片付けと持ち帰り品の整理・親子交流会の準備

保護者に依頼したサポート内容
・サポートができる保護者に子どもたちの健康観察、安全管理をお願いした。
・東春近駐在所に活動を知らせ、夜間のパトロールをお願いする。
・朝食に使う備蓄用非常食は伊那市より無償提供された。
・翌日は親子交流会があるため、子どもたちは保護者と一緒に帰宅する。

活動の姿

「自分たちでできることをしながら暮らしてみよう」と宿泊活動を活動の中心に据えた子どもたちは、5月中旬より宿泊活動に向けての計画をたててきた。まず、学年57名の保護者全員がこの活動を認めてくれるよう、しっかりした計画を立てなくてはならず、宿泊活動について保護者が心配することや疑問などを、各家庭で話し合い、それを学校で発表し合って一つ一つ考え合った。

(1)子どもたちが今年行いたいと願い、話し合って決めた活動
●探検活動 ・森林探検  ・地域探検  ・カヌー探検(湖沼)
●宿泊活動 ・自分たちの力で1日生活するサバイバル ・食事づくり
●製作活動 ・間伐材を使った小物作り ・テントづくり
・ヒガハルチックの補修 ・カヌーの補修

(2)活動の目的(教師側の書き方で)
 ◎子どもたちが、より主体的、自主的に行動できるようにしたい。
  ・自分で考え、自分で行動でき、自尊感情を高めたい。
 ○友だちと助け合い、協力して活動し、集団の中で自分の力を発揮できるようにしたい。   
  ・たき火、食事を自分の力でできるようにしたい。
  ・集団としての力を高め、自信を持って表現し、発表できる力をつけたい。
 ○地震などの災害時に落ち着いて、たくましく生き抜く力をつけたい。
  ・必ず来る大震災に備えて、訓練や準備として位置づけたい。
○自然に親しみ、自然と関わることを通して、自然への畏敬、郷土愛をはぐくみたい。

 (3)子どもたちが願った活動について、心配されることとその対策(特に宿泊活動に関して)
  ◎自然環境
  ○地震、火事、雷など
   ・宿泊する場所は、学校の校庭 校外では避難施設が近くにある場所とする。
   ・避難訓練をする。
・天候が悪いことがわかっている日には宿泊活動をしない。
  ○気候
・シュラフまたは毛布を用意して寝る。
・衣類で調節をする。
   ・気候と食事内容を連動させる(寒いときには暖かいものを)。
・宿泊活動時期を考える(6月~10月)
  ○動物
・殺虫剤(スプレー)、防虫スプレー、蚊取り線香等を用意。
・危険な生き物には触らない(ハチ、ヘビ等)
・長袖、長ズボンを着用
  ◎人的環境
・宿泊活動をする日は駐在(警察署)等に連絡し、巡回してもらう。
・保護者にもサポートしていただく(希望者に一緒に宿泊してもらう)
・習い事等との関係もあり、宿泊活動については早めに計画をたて、保護者に知らせる。
   ・具合が悪い人は宿泊活動に参加しない。
・救急箱、常備薬を準備する(学校・家庭)
・緊急の場合は、保護者に連絡し帰宅する。もしくは夜間診療。もしくは救急車
   ・食事では、食材は全て火を通す。
   ・トイレは学校体育館トイレを利用する。(学校宿泊の場合)
  ◎この活動の先
   ・修学旅行を最高のものにする。
   ・「中部音楽会」で最高の演奏を発表をする。
   ・140周年記念の6年生として個々に自信を持てる。
   ・記念式典、総合発表交流会等で自信を持って堂々と発表できる。
   ・様々な活動にチャレンジする。
   ・学力を高める。
・笑って泣いて、最高の卒業式をむかえる。
・中学校に進学しても、自信を持って他校の友だちと仲間をつくることができる。

 7月上旬までの話し合い活動を通して上記のことを決め、「キラリ探検隊便り」として保護者に通知し、さらに保護者からの質問、意見にお答えし、「宿泊活動」に関して保護者全員の同意を得た。

7月11日(木)、9つある班内で「買い物」と「竹切り」と2班に分かれて活動をした。

 買い物グループは予め班で決めたメニューに従って必要な食材を決めだし、学校近くのスーパーでの買い出しを行った。今回の食事は1班1500円以内と決めた(初めての活動であまり金額を絞るとメニューが限定してしまい、グループで作るメニューが同じになってしまうため)。

 竹切りグループは、学校近くの護国寺さんにお願いして竹林から孟宗竹を10本切らせていただいた。これらは食器や箸となる材料で、学校に持ち込んで一人一人が使えるよう、加工した。


竹を切る

皿を作る

箸を作る

7月12日(金)、全校児童が下校すると、6年生は宿泊活動の準備を始めた。まず、夕食準備だ。風が強くなり、それをよけるために学校のウッドデッキを9つに分け、それぞれに食事スペースを確保した。今回は初めてということもあって、カセットコンロを各班1台ずつ用意して活用した。各班では全員が協力して決めたメニューに従って、夕食作りを始めた。一人一人苦手なもの、アレルギーで食べられないものを把握しておいたため、大きな問題は生じなかった。教師も保護者も見守るだけで、安全対策以外は口を出さなかった。夕食は2時間と決めていたが、全員が片付け終わった時は2時間30分経っていた。これは班によって今後の大きな課題となった。パンを調理した班はさすがに素早かった。多くの班では2〜3品つくることができ、竹の皿に盛りつけ、おいしそうに食べていた。今回の夕食は友だちと力を合わせて楽しくつくることが目的で、その部分では大成功だった。


夕食作り

食事完成

班で食べる

 その後のふり返りでは、(1)カセットコンロで無く直火を使って調理したい。(2)食材費を1000円以内と少ない予算で行いたい。などの意見が出された。

 夕食後は係の号令で外に出て野外活動①を始めた。午後6時40分、薄暗くなり始めた中で子どもたちは予め決めておいたルートで学校近くの林に向かった。ナイトハイキングだ。
あたりが暗くなるにしたがって子どもたちの歓声は高くなった。林につくと自由散策。子どもたちは沈む夕日を眺めたり、林に入り、クワガタムシ探しを始めたり、鬼ごっこをしたりと、普段はできない夕暮れ時の遊びを楽しんだ。係の「集合!」の声で集まり、すっかり暗くなった中で、音楽会で歌った「星降る里」をアカペラで歌った。子どもたちの声が森にこだましてうっとりするような響きだった。多くの子どもたちが「自然の中で歌うってこんなに楽しいのかと初めて思った。」と感想を書いた。


ナイトハイキング

クワガタゲット

肝試し

 係の合図で、広場でスターウオッチングを始めた。太陽が中央アルプスに沈むころから少し雲が多くなってきたが、暗くなるに従って見える星が増えてくると「あれが北極星かな。」「北斗七星が見える。」「あの明るい星は何だろう。」と言いながら、中には地面に寝転がりながら星を眺めた。流れ星もいくつか見られ、夏の大三角や蠍座などについて教師から解説を加えると、子どもたちは星座を探したり、自分で星座をつくってみたりとそれぞれに星を楽しんだ。

 午後9時、学校に戻った子どもたちは、体育館に寝具を運びこみ、いつでも寝られる支度をした。そして一番楽しみにしていた「肝試し」だ。係の合図で全員玄関前に集合し、係から歩くルートやルール、注意することなどを解説した。その間教師は、サポートしていただいている保護者、特に男性に脅かし役などを依頼した。そんなことも知らず、子どもたちはいつも当たり前に利用している校舎が夜間になると一変して不思議な空間になるのを感じ、心躍る思いで係の説明を聞いていた。男女が別々にくじを引き、同じ番号の友だちとペアになって行く仕組みだ。肝試しが始まると、校舎内ではあちこちから悲鳴が聞こえた。保護者が隠れているところからはとりわけ大きな悲鳴が聞こえる。学校の近所から、何事が起こったのかと問い合わせがないかと心配したぐらいだった。全員が肝試しを楽しんだのは予定の午後9時30分を少し回ったくらいだった。予定した日程通りになった。その後、子どもたちは寝る準備をしてそれぞれ用意した寝具に入った。疲れた子どもたちは横になるとすぐに寝てしまったが、友だちとの会話を楽しんでいた子どもたちは12時過ぎまで起きていたようだった。1時間おきに交代で子どもの様子を観察した保護者と教師は、少し離れたところで待機していた。4名の保護者が徹夜で子どもたちを見守ってくださった。

 子どもたちの朝は早かった。午前5時には起きて友だちと遊んだり話したりしている子どもが増えた。午前6時、全員が起床した。多くの子どもたちはシュラフを持参していたため、たたんで袋に入れるのが難しい。担任がシュラフのたたみ方を教えた。毛布やタオルケットを持参した友だちはたたんで大きな袋に入れるだけだったが、シュラフはコンパクトにするのに随分苦労した。体育館で寝ることは、安全管理、健康観察、夜間の気温調節等に優位性があり、学校長、保護者、子どもたち皆が認める場所だった。

 体育館から撤収した子どもたちはカセットコンロを用意して鍋でお湯を沸かし始めた。
朝食は「災害時用非常食」の試食を兼ねている。平成16年と18年に伊那谷をおそった集中豪雨によって伊那市では多くの方が公的施設に避難した経験がある。しかし子どもたちにその記憶が無い。東日本大震災で被災された方々にとっての食事はどうだったか、子どもたちには報道を通してしか知るすべは無かったが、良い機会だった。伊那市から賞味期限が近づいている「備蓄非常食」を提供していただいた。子どもたちは、お湯を含ませるだけでご飯ができ、容器もスプーンもあってその簡便さにビックリしながらも「味はどうかな。」「おいしいいかな。」などと興味を持ちながらお湯がわくのを待った。サポートをしていただいた保護者にも試食していただいた。非常食はアルファ米を使った五目ご飯で味がある。「意外とおいしいな。」「量がちょっと少ないな。2杯いけるぞ。」などと言いながら食べた。朝食はお湯を沸かす時間、非常食が出来上がる時間、食べて片付ける時間と1時間以内で済ますことができた。子どもたちは「簡単で、思ったよりおいしかった。」「でもこんなものばかりでは飽きてしまう。」「生の野菜類も食べたくなる。」などの感想を言った。


体育館で寝る

朝食は非常食

成果と課題

 初めての宿泊活動は、学校職員、保護者、駐在さん等様々な方にサポートをしていただいて実施できた活動だった。

 子どもたちにとっては、普段の生活では考えたりしたりしないようなことをたくさんした。

現在、この活動の「ふりかえり」を班ごと行っている。どの班でも、友だちと力を合わせて食事をつくったり、活動をしたりでき、友だちと協力して困難を乗り越える経験をした
良さを感じているようだった。また、夜の3つの活動はそれぞれに意義があり、子どもたちの暮らしを豊かにするきっかけとなった。

 早くも次の宿泊活動では、次のようなめあてが出されている。

(1)カセットコンロでなく、火をおこして薪で料理をしたい。
(2)班で使う予算をもっと減らし、できれば1000円以内で行いたい。
(3)野外で宿泊したい。そのためにテントをつくりたい。
(4)登山やカヌー遊びなど、野外活動をもっとやりたい。

 第1回の宿泊活動では子どもたちに確かな自信と多くの期待感を持たせたのでは、そういう意味でも大成功だった。

 サポートしていただいた教職員、保護者の皆さんには感謝申し上げる。



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