NO団体名主な企画内容
35 人を自然に近づける川いい会(大阪府) 「自然楽習会 〜都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!〜」
琵琶湖・淀川水系の5ヶ所で、川に生きる生物たちを観察・捕獲し、都会の河川に棲む生きものと、自然あふれる田舎の河川に棲む生きものの違いを体験を通じて学ぶ。治水・利水だけでない、生物を育む川を地域コミュニケーションの場とする活動。

第0回 自然楽習会 ~都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!~

日時  2010年07月08日(木)午後2時25分~3時30分
場所  大阪府・茨木市立天王小学校
参加者 小学4~6年生の自然観察クラブ員25人・学校の先生3人
講師  小村一也(こむら・かずや)
活動の目的

2010年6月に小学校より依頼があり、学内で自然楽習会を実施。身近な川の生物を紹介し、夏休みに観察しやすいように促しました。8月22日(日)に開催する「自然楽習会 in 大正川」には、クラブ顧問の先生が引率し、クラブ員が参加する予定なので、今回は現場に入る前の事前楽習会となりました。
(よって、第0回と表記しています)

フィールドの概要

小学校の正門前を流れる大正川は、子どもたちの遊び場のひとつ。春には遡上してきたコイを抱き捕りしたり、夏には小魚やカメ捕りを楽しんでいる姿を見かけます。2面コンクリート護岸で、夏場はCOD8以上と決して美しい川ではありませんが、生物層は豊かです。大阪府レッドデータブックに掲載されている魚種も棲んでいます。

リスクマネジメント

小学校内での講義なので、教員の方々3人に子どもたちを見守っていただきました。





実施内容

子どもたちが日ごろ親しんでいる大正川の成り立ち、生態系・生物の多様性を「大正川・トリビアの泉」的に質疑応答形式で講義しました。

1 歴史と成り立ち・・・河川名称の説明/地理的な知識
2 生物多様性・・・・・魚種を中心に解説/絶滅危惧種の多様さ
            回遊する生物層/大阪湾からの連続性
3 水質・・・・・・・・過去数年の水質調査から/生活排水の影響
4 四季・・・・・・・・季節毎の生物層・群の移動 (資料・生物時計を配布)





子どもたちの様子

・地元で減少している生物、絶滅した生物について熱心な質問がありました。
・水生昆虫の代表「アメンボ」「ミズカマキリ」がカメムシやセミと同類だということに、みんなが驚いていました。
・外来種の問題やミドリガメ等のペットを捨てることへの問題意識と命の大切さについて、真剣に聞き入っていました。

学校の先生の声

・普段のクラブ活動ではなかなか教えられないこと、指導者も気づいていない事実を聞き、今後の指導内容に取り入れていきたい。
・このような機会を通年で、定期的に実施したい。
・ここで学んだことを活かして、現場での自然観察や学習に役立てたい。

講師の感想

生物観察や学習の場では、捕まえる・見るが主体になりがちだが、自然環境や生態系を広範囲のエリアで考えたり学んだりすることも、子どもたちには大切な学習であることを考えさせられた。
河川環境を学ぶときは、表面的・局所的に知るだけでなく、その成り立ち・治水や利水から、現在の生物環境と人の関わりを子どもたちの目線に合った説明をすることが意外となされていない。ただ生き物と触れ合うだけでなく、マクロな世界観で自分たちが住んでいる地域・流域の生物環境を知るカリキュラムの必要性を感じた。
総体的に、地元の自然環境をしっかりと解説・触れ合い方等を教えられる指導者の存在が重要だと確信する。
(藤田保健衛生大学 医学部 客員準教授・博物画家 小村一也)

他団体へのメッセージ

1
活動フィールドの水質や環境と共に、その成り立ちや歴史・治水面での構造的特徴を学ぶことで、生物環境と人の関係を学ぶ機会を創ることが大切です。

2
子どもたちが興味をもつテーマ、意外と知られていない生物の面白い豆知識を織り交ぜながら、楽しく感心をもってもらう仕掛けが必要です。

3
身近な自然や生物が、実はとても希少な種であったり、減少傾向にあることを教えてあげましょう。自然環境を守る心を育むため、汚染やゴミの問題などを取り上げるなど、とくに子どもたちの目線と心に働きかける課題で、知らせる効果を考えて実行することが重要です。

トクトク情報

簡単な水質検査に、COD検査があります。川の水を入れ物に入れ、薬剤チューブで吸い取るだけです。薬剤が水中の汚れと結合して、数分たつと水の色が変化するので、水質を色で判断できます。きれいな水の代表として、水道水と比べてみるといいでしょう。
なお、財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構では、市民による水質調査活動を行っています。調査隊員に水質調査セットを無料で提供するだけでなく、調査結果を集計してHPで閲覧できるようにサポートしてくれます。当会でも利用しており、毎年、季節ごとに測定しています。琵琶湖・淀川水系に住み、川に興味がある方であれば、どなたでも応募できますので、詳しくは下記URLをご覧ください。
http://www.byq.or.jp/kankyo/waqu.html

講義記録

1 両生類と爬虫類の発生学的な違い

■小村先生
トカゲやカメ、カエルやヘビをなんとなく、ひと括りの生物群のように思っている人はいませんか? 爬虫類と両生類の違いを言える人はいるかな?

 ※結果は、明確に答えられな子どもがほとんど

単純に両生類は、子ども時代はエラ呼吸です。カエルの子どもと同じように、イモリやサンショウウオにも、オタマジャクシ(幼生)時代があって、水中でエラ呼吸をしています。そして、手足が生えて(亜生体)になってはじめて、空気中で肺呼吸するようになります。
トカゲやヘビは生まれてから一生、肺呼吸することが決定的な違いです。つまり両生類とは、一生のうち水中でエラ呼吸する時期と陸上で肺呼吸する時期があり、2つの生息域があるから両生類なのです。

 ※ホワイトボートに略図を描きながら説明

両生類は水中で卵を生むので、水中に適した寒天質の覆いのある卵です。それに対して、爬虫類は空気中で生まれるから、乾燥した所で卵が乾かないように殻で守られています。また、後に進化していく、鳥類の卵の殻はより丈夫になっています。

 ※子どもたちは、言葉の意味として両生類の概念がよく解ったよう

■子どもA
じゃあ先生、爬虫類とは、どんな意味があるのですか?

■小村先生
爬虫類の「爬」という漢字は「地面を這う」という意味があります。トカゲ・ワニ・ヘビ・ヤモリにカメ、ほとんどの爬虫類は地面を這うように移動します。ただし、バシリスクなど一部の俊敏なトカゲは、二足歩行で走ることがありますが、あれは敵から逃れるなど緊急時だけ。普段は地面を這って移動してます。

■子どもB
でも、ティラノサウルスやディノニクスは、二足歩行だよ。

■小村先生
恐竜と爬虫類の違いを知っているかな。オオトカゲの骨格から、その違いを説明していきましょう。
爬虫類の前後肢は正面から見てM字形状で、地を這うのに適した造りをしています。それに対して、恐竜は鳥類や哺乳類と同様に、腰骨や肩甲骨から真っすぐ形成されています。よく似たカタチをしていますが、恐竜は、トカゲやワニとは違う生物群だったのですよ。

 ※男の子たちは興味津々。先生方も「へーぇ~」と感嘆

■小村先生
先生は医学大学で、人体解剖実習の研究をする准教授の仕事をしています。人のからだの構造を詳しく勉強しているのですが、大好きな身の回りの生き物たちについても解剖学的に勉強し、研究しています。なので、先ほどの恐竜と爬虫類の骨の話のついでに、もう一つ、骨の面白話をしましょう。

生物の骨格は、それぞれの生活や習性に適した構造と機能をもっています。そして、普通、脊椎動物は「背骨=脊柱」を構成している脊椎の数が決まっています。しなやかに泳ぐ軟骨魚類のサメなら400。獲物を広い大空で探す猛禽類は35。私たち人間は、34あります。背骨のある生き物の中で、最も脊椎数が少ないのは、実はカエルなのです。

カエルの脊椎数は、たったの9。こんなに少なければ、背を丸めたり、柔軟体操のようにクネクネと胴体を動かすことができません。では、なぜカエルはこのような不便な背骨になったのでしょう? 解る人はいませんか。

 ※子どもたちは首をかしげるばかり

その理由は・・・カエルたちはジャンプするために、脊椎の数を減らす方向へと進化したのです。敵から逃れるために、勢いよくジャンプするカエルたち。実はジャンプする時に、とても大きな重力負荷が背骨にかかるのです。もし人間がカエルと同じくらいジャンプしたならば、たちまち背骨を痛めてしまい、致命傷になってしまいます。カエルたちは、脊椎の数を減らすことで、とても頑丈な背骨を獲得し、あのすばらしい跳躍力を手に入れたのですね。
皆さんが田畑や川辺で見かけるカエルたちは、今から2億年以上前、ペルム紀からトリアス紀に発生し、徐々に進化し続けて、敵から自らを守る最大の武器、ジャンプ力を手に入れました。その代わりに、背骨のある生きものの中で、最も脊椎数が少ない生きものにになったのです。

 ※高学年の子どもたちは熱心にメモをとる
 ※理科の先生たちは、後に「こんなネタ知りませんでした。すごく面白い話ですね」
  と喜んでくださいました。

2 回遊魚と大正川の連続性の話

■小村先生
ここ大正川は、四季を通じて色々な魚たちが行き来しています。海や河口から、川までを一定の時期に行き来するものを回遊魚と言います。では、皆さん、回遊魚の中で知っている種類はありますか?

■子どもC
ウナギがいます。

■子どもD
アユも回遊魚だと思います。

■小村先生
よく知っていますね。アユは、海から川に遡上し、大人になってやがて卵を生んだりしてから、また海に帰る回遊魚の代表です。ウナギは外洋の深海で生まれて、シラスウナギの姿で河口に、そして10センチ程度に成長して川を遡上し、5年程で大人になって海に戻り深海で産卵する回遊魚です。でも、ここ大正川には、その他にも様々な回遊魚がいるんですよ。

たとえば、ボラやマハゼ・ウキゴリなどです。これらの種は、春に小魚たちが大阪湾に近い河口あたりからゆっくりと遡上し、6月頃に皆さんの学校付近で落ち着き、生活をはじめます。そして11月頃に充分に育ち、大人になって再び河口へ帰っていきます。そして、河口で産卵され、生まれた小魚たちが繰り返し、毎年、遡上するのです。

大阪湾から神崎川、安威川、そして大正川へと続く川の道。大きな堰や障害物もなく、また、この地域は海抜8m程度と非常に緩やかな平野なので、魚たちが自然に行き来できるのです。

そしてもう一つ。「大潮」と言って、潮の満ち引きが最も大きくなる「満潮」の時に、大正川が逆流することを皆さんは知っていますか?

■子どもたち
「えぇ~っ!!」と驚きの声を上げました。

■小村先生
大潮の時は、今いる天王地区より少し下流の摂津市・摂津高校の付近まで、川が海の潮に押し戻されるのです。そんな状態のとき、この付近まで、ナント、海の魚であるキチヌが回遊してくるんですよ。すごいね。茨木市や摂津市は、海とはすごく離れていますが、海からキチヌがやって来るのですね。

皆さん、この大正川がいかに緩やかに海とつながり、自然な流れであるか、わかりましたね。魚たちにとって、住み心地の良い川であることを思わせますね。

 ※子どもたち・先生たちが大きくうなづく
 ※釣り好きの子どもは「キチヌが釣れるかも」とワクワクしていました。

3 昆虫たちの進化と面白い話

■小村先生
皆さん、赤とんぼを知ってますよね。実はこの赤とんぼ、初夏に羽化して、ある日突然、大正川で見かけなくなる時期があります。皆さん、夏休みに大正川をのぞいて見てください。ギンヤンマやコシアキトンボ、ハグロトンボなどを多くみますが、赤とんぼは見られませんよ。その訳はね、実は赤とんぼたちが夏休みしているんです。夏休みと言っても、家で宿題してるのではないですよ。

 ※先生方にウケる

赤とんぼと言われるアカネトンボたちは、真夏の暑い時期、ここよりもずっと涼しい山間部へ避暑旅行に行っているのです。大正川で生まれたアカネトンボたちは、9月から10月の初旬まで、茨木市の里山で涼しく暮らします。そして、充分に子孫を残せるまで成長し、初夏の頃より赤く染まった姿で大正川に戻ってくるのです。

 ※子どもたちは「ヘェ~っ」と感心
 ※先生たちは「ホォ~っ」とメモを取る

では、ついでにトンボも含めた昆虫と、それに近い仲間の話をしましょう。
皆さん、セミやカブトムシ、チョウは昆虫ですよね。
では、ダンゴムシは昆虫かな? クモは? ムカデは? 
何人かは、違うって解っているようですね。

そう、昆虫は脚が3対6本。胴体が頭と胸と腹に分かれています。でもクモは?
脚の数は、8本ですね。クモは実は昆虫ではなく、ヤドカリやタラバガニに近い仲間なんですよ。

 ※子どもたちは「グェ~っ」と驚く

ムカデもダンゴムシも、昆虫ではありませんよね。確かに形はよく似ていて、虫っぽい生き物は数多くいます。昆虫以外の外骨格生物、つまりからだの中に骨を持たずに、筋肉や神経・内蔵だけで構成されていて、骨の代わりに外側に頑丈な鎧を着ている生き物たちの歴史を少しだけお話しましょう。

今から約3億5千万年から2億9千万年前の石炭紀、沼沢林(しょうたくりん)と言われる植物層がいっぱいだった頃、二酸化炭素が大量に吸収され、酸素がたくさん供給されるようになった時代です。

現在の酸素濃度は21%くらいなのですが、この時は最高で約35%もあったと言われています。このことで、巨大な生き物が多く出現したと考えられています。なぜなら、昆虫も含め外骨格生物がどこまで大きくなるかは、呼吸可能な酸素の量で決まると考えられていて、一度に吸収できる酸素が多ければ、それだけ大きく成長できるからです。

石炭紀時代のもので、約2mに成長した猛毒のムカデ類やサソリの化石が、見つかっています。中でもスゴいのは、タカほどの大きさまで成長していたトンボ「メガニウラ」です。3億2000万年前に死んだ、このトンボの化石が見つかっていますが、羽を広げた大きさが75㎝もあったのです。それまで、外骨格生物は海中で進化し続けていましたが、大気中の酸素をエネルギーに、浮力のない地上で重力に負けない丈夫なカラダを手に入れて、繁栄していったのがこの時代です。

でも、その進化の歴史には謎も多いのです。昆虫がなぜ空を飛ぶようになったかは、今もよく解っていません。昆虫の羽は、太陽光を集めて体を温めるなど、体温調節器官が発達したものだという説や、求愛や示威行動に利用されていた色鮮やかな器官から進化したという説、と実に様々です。

鳥の翼は進化の過程がほぼ解明されていますが、こんなに身近で普通に飛んでいる昆虫の羽については、まだ解らないことだらけです。もし、今も酸素濃度が石炭紀の頃と同じなら、巨大カブトムやオオワシのようなアゲハチョウが飛び回っていたかも・・・。
今の時代では、昆虫を含めて外骨格生物は、私たち肺呼吸の生き物と違って、限られた大きさまでしか成長できないのですね。

 ※男子たちは、巨大カブトムシを想像して微笑む

4 小さな水生生物ア・ラ・カ・ル・ト

■小村先生
話が脱線して時間が足りなくなってきましたので、ここからは手短かにお話ししましょう。

昆虫類は約300種類以上が目で見て確認できますが、それぞれが小さかったり、区別がつきにくいものが多いので、この地区で減少しているミズカマキリの仲間を紹介します。ミズカマキリやタイコウチ、コオイムシは、以前多く生息していましたが、今では激減しています。川の中だけでなく、辺りに棲める場所がなくなってきたからでしょうね。

■子どもE
水があれば、大丈夫じゃないの?

■小村先生
水生昆虫はアメンボと同じように、空を飛んで移動して繁殖したり、餌を探したりします。だから、棲みにくい場所だと、すぐに引っ越ししてしまう。水質が悪くなったり、天敵がいたりと、原因はいろいろ考えられますね。じゃあ、今紹介した昆虫たちは、何に近い仲間かな?

 ※子どもたちは答えられず

答えはカメムシの種類です。さらに言えばセミの親戚ですよ。顔をよく見てください。どれもストローのような口ですよね。ミズカマキリたちは生物の体液を、カメムシやセミは樹木や草花の汁を吸っているんですよ。

 ※子ども・先生たちが揃って「へぇ~っ!!」

昆虫の話はキリがないので、その他の水生生物の種類を教えましょう。
大正川の大型甲殻類は、スジエビ・ヌカエビ・ミナミヌマエビ・テナガエビ・ミナミテナガエビ、モクズガニ、そしてアメリカザリガニです。
さて、皆さんも含めて、上級生や大人の人で「ニホンザリガニを見た」と言っている人はいませんか?

■理科の先生
青っぽい、小ぶりのザリガニをたまに見ますが、あれですね。

■小村先生
残念。あれは、アメリカザリガニの色の個体差です。赤っぽいのも、青っぽいのもいますよ。この付近はもちろん、関東以西・以南には、実はニホンザリガニは生息していません。秋田や青森周辺のきれいな湧き水がある、涼しい流域にしかいないのです。
昔から大阪でニホンザリガニと勘違いされているのはまず、アメリガザリガニの青っぽい個体でしょう。まぁ、一種の都市伝説ですね(笑)。

 ※全員「へぇ~っ!!!!!」でした。

5 大正川の注意と危険生物

■小村先生
皆さんが自然観察や生物観察、そして川遊びを楽しんでいる大正川にも、実は色々な危険が潜んでいます。

大正川は大雨の時に一気に水量が増えて、流量・流速が増大する危険な一面があります。周囲の小さな水路が大雨でいっぱいになると、自動的に水門が解放されて大量の水が放水され、大正川に降り注いだ雨と合わさって、ほんの数分で沈水敷き、つまり遊歩道より水位が上がります。

だから皆さん、大雨の後や夕立、いまはゲリラ豪雨とも言いますが、その後すぐに川遊びをするのは危険です。また、どんよりとした雲が近づいてきたり、急に吹く風が強く冷たくなったときは、素早く陸に上がって川遊びを中止してくださいね。もし、流されたら・・・数日後には大阪湾に浮かんでいることもあるんですよ。

 ※子どもたちは「怖い~っ!!」

さて、川の水の危険とともに、危険な生き物の話をしましょう。簡単に注意事項を説明するので聞いてください。大正川に生息している水生生物は、皆さんより強い生き物はいませんが、中には注意しなければいけない生物もいます。

まず、スッポン。これは、イシガメやクサガメと同じく大正川の在来種です。スッポンは自ら攻撃したり、噛み付いたりしない臆病な生き物ですが、皆さんが面白がっていじめたり、不用意に捕まえようとすると、長い首を伸ばして噛み付いてきます。スッポンは怖くて逃げたくて噛み付くのですが、その噛む力はとても強く、30㎝を超える大きな個体に噛まれると、大ケガをします。

また、最近、大正川の下流で違法に放流、多分捨てられたのでしょうけど、カミツキガメが発見されています。もし、クサガメやイシガメ等の見慣れたカメ以外の変わったカメを見つけたら、絶対に近づかないでください。ガメラのような大きなカメを見た時は、大人の人、とくに警察官に連絡すると良いでしょう。

小さいうちはミドリガメと言う名前で呼ばれいる、ミシシッピアカミミガメも多く生息しています。このカメは噛む習性があるので、スッポン同様に気をつけた方がいいでしょう。カメの正しい捕まえ方等は、8月の自然楽習会で解説します。

あと、夏の終わりから秋にかけて飛び回るスズメバチは、次回の自然楽習会の頃が繁殖期となり、とても気が荒くなります。このハチに対処方法も次回に説明します。

ついでに、あまり皆さんは好んで触らないでしょうけど、ガの幼虫はむやみに触れないでください。中には強い毒のあるチャドクガの幼虫がいて、その針が刺さるととても痛いし、しばらく腫れが引きません。この成虫の蛾は羽の鱗粉が毒ですので、目に入ったりしたら大変です。このことも、また今度に解説します。

6 大正川の外来種について

■小村先生
さきほど、カミツキガメやミシシッピアカミミガメの話をしましたが、これらも含めて、大正川には多くの外来種が生息しています。

順を追って説明しますとまず、カメの場合、北アメリカのフロリダ周辺が原産地のカメが多く、ミシシッピアカミミガメ・フロリダニシキガメ・リバークーター等が混在しています。天敵のいない日本のカメと違って、繁殖力がとても強い種です。これらのカメは、ミシシッピー等の湿地である天敵との生存競争で、繁殖力を高めました。その天敵が何か知っていますか?

■子どもF
ワニガメとか、カミツキガメですか?

■小村先生
はい、実はその天敵とは、アリゲーターというワニです。カメたちはワニに食われる確立が多いので、いっぱい子孫を残す能力を身につけました。なので、ワニなど天敵のいない日本の川で、日頃のんびりしている日本のカメたちを追い立て、たちまち大繁殖したのです。だから今では大正川だけでなく、全国各地の河川・池沼でミシシッピアカミミガメばかりになっているのですね。

※ダイヤモンドバックテラピンの生体を見せる

さて、皆さん、このカメを見たことがありますか? 
このカメは、どう見ても日本のカメではないですよね。名前は、ダイヤモンドバックテラピンと言います。実は、このカメは大正川に捨てられていたものです。近所の人がペットとして飼っていて、飽きてしまったのか、川に捨てたのでしょう。アメリカ本国では絶滅を危惧されている種で保護されていますが、日本に持ち込まれて繁殖させたペットは誰も保護していません。
大正川で捕獲した当時は全身カビだらけで、肺炎を起こしていました。腹甲に穴が空き、鼻を垂らしてかわいそうな姿だったんです。でも、毎日、きちんと水換えをしてエビなど栄養のあるものを与えていると、徐々に元気になりました。先生の所にやってきて、もう4年になります。皆さんも、ペットとして生きものを飼うなら、命の最期まで責任をもってくださいね。お願いですよ。

皆さん、生き物は自ら好き好んで、本来は住まなかった場所に住んでいるのではありません。私たち一人一人が命の大切さ、生態系の大切さを考え、もしペットとして飼うならば、その命に責任をもってあげる心が大切ですよね。

ここで、カメ以外のお話もしておきましょう。
皆さんが聞いた事のある魚、ブラックバスやブルーギルも同様に、外来種です。日本産に比べて繁殖力が高く、魚食性なのであっという間に、大正川のタナゴやモツゴ、オイカワなど日本の在来種を食べ尽くしたり、追いやったりしているのです。

あと、大正川でよく捕れるメダカのような魚。これはカダヤシといって、やはり外来種です。この魚は一見メダカに似ているので、注意して観察してください。海の魚・ダツの親戚であるメダカは、ダツやサンマと同じく背ビレが体のかなり後方にありますが、カダヤシの背ビレはほぼ中央にあります。また、カダヤシのオスは、針の様なとがった尻ビレなので一目で分かります。

さらにメダカのメスは卵を生みますが、カダヤシはグッピーと同じように卵胎生で、メスのお腹からいきなり小魚の姿で出て来ます。卵が他の魚に食べられる心配がないので、とても繁殖力・生存力が高い。生息域が重なるメダカは、あっという間に駆逐されてしまうんです。

あと、大正川で普通に見られるアメリカザリガニ・ウシガエルは、もちろん外来種。ブタクサハムシなど、小さな外来昆虫もいます。アサザやホテイアオイ、アレチウリやミズヒマワリは、どこからか誰かが移入した外来植物です。このように大正川も、今では外来種の宝庫(?)になってしまいました。今のところ、幸いにもアライグマやヌートリア、セアカゴケグモの報告はありませんが、油断禁物ですよね。

 ※子どもたちは、この問題を良く知っているのか大きくうなづいてくれた

7 特定外来種について

■小村先生
さて、最後に特定外来種のについて、少し説明しておきましょう。

先ほど解説しました、カミツキガメ、ウシガエル、オオクチバス・ブルーギル・カダヤシ、アレチウリ・ミズヒマワリは、国が特定外来種として指定している動植物です。これらの生き物はもし見つけても、持って帰ったり、飼育したりしてはいけません。また、よそに放したりすることはもちろん、捕まえたものを再び元に返してやることも禁じられています。

理由は先ほども話しましたが、その繁殖力の強さから日本の在来種を追いやって生態系バランスを破壊するからなのです。では、飼育、移動、リリースも出来なければ、いったいどうすればよいのでしょう?

■子どもG
絶対に触らないようにします。

■子どもH
大人の人に相談します。

■小村先生
はい、答えは、その場で生命を断つです。

 ※子どもたちはショックを受ける

大変残酷なお話ですが、それが日本の法律なのです。特定外来種は、特別な許可を持っている人や施設以外では、捕まえた時点で処分しなければならないのです。
これらの外来生物は、自分で好んで日本に来たのではありません。でも、彼らも命があるかぎり、一生懸命生き残って子孫を増やそうとします。人が勝手に連れて来て、困ったから、今度は処分・・・。生き物たちには、ぜんぜん罪はありませんね。

本当に罪深いのは、誰でしょうか? 
また、クラブの中で話し合ってみてください。

今日は色々とお話しましたが、大正川についての話はまだまだ、たくさんの驚きや面白トピックスがあります。今度は8月の自然楽習会で、実際の生き物に触れながら色々な話の続きをしましょう。


第0回 自然楽習会 ~都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!~
第1回 自然楽習会 in 藤ノ木川 ~比叡山坂本で、生きものを捕ってみよう!!~
第2回 自然楽習会 in 大川  ~都会の川を散歩しながら、虫を探してみよう!!~
第3回 自然楽習会 in 大正川  〜茨木市の街中で、生きものを捕ってみよう!!〜
第4回 自然楽習会 in 正修寺  〜茨木の里山で、虫を探してみよう!!〜
第5回 自然楽習会 in 北川  〜福井県の山で、アユを捕ってみよう!!〜
第6回 自然楽習会 in 藻川  〜猪名川の支流・藻川で、生きものを捕ってみよう!!〜
第7回 自然楽習会 in 茨木市  〜茨木の生きものたちを、描いてみよう!!〜

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