NO団体名主な企画内容
35 人を自然に近づける川いい会(大阪府) 「自然楽習会 〜都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!〜」
琵琶湖・淀川水系の5ヶ所で、川に生きる生物たちを観察・捕獲し、都会の河川に棲む生きものと、自然あふれる田舎の河川に棲む生きものの違いを体験を通じて学ぶ。治水・利水だけでない、生物を育む川を地域コミュニケーションの場とする活動。

第5回 自然楽習会 in 北川  〜福井県の山で、アユを捕ってみよう!!〜

日時  2010年09月12日(日)午前9時30分〜午後03時00分
場所  福井県・小浜市・北川
参加者 幼児3人・小学生8人・中学生2人・高校生1人・指導者&保護者10人
講師  渡辺正雄(わたなべ・まさお)
活動の目的

当会事業の淡水魚調査において、アユの遡上は外せない調査ですが、最近では濁水の発生・棲息域の狭量化・外来種の増加などにより、漁協からもアユの漁獲量が低下していると聞いています。そのような背景から、アユをはじめとする様々な生物が自由に行き来する川づくりに参加してきました。その一環として、子どもだけでなく水面下の激変を知らない大人にも、アユの生態(海で育ち、生まれ故郷の川で産卵する一年魚)、生きものにやさしい川づくりを現場で伝えることが目的です。日本の食卓にアユが上がることは、珍しいことではありません。そのときは、アユの一生をいただく気持ちで余すところなく「命」を食べつくしてほしいと願っています。

フィールドの概要

北川は、福井県の南西部を流域とする一級河川です。福井県・滋賀県の県境に位置する三十三間山の東麓に発し、福井県小浜市から小浜湾に注いでいます。昭和56年から24年連続、近畿地方の一級河川水質(BOD)ランキング1位を保持。「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル河川」として整備されています。自然豊かで、魚類相も豊富です。アユをはじめ、ヤマメ・ウグイなど清流を好む魚がたくさん棲んでいます。水質階級1(きれいな水)の指標生物であるカワゲラ・サワガニ・ウズムシなどが、小さな子どもでも簡単に観察できます。

リスクマネジメント

例年通り、2ヵ月前からアユの遡上・成長度合いを調査。琵琶湖支部のメンバーが7月に2回、8月に3回、イベント1週間前と前日に行いました。その際、魚道の様子や野生生物の状況を視察。今年は雨量が少ないため、アユは小ぶりですが、淵に集まっているので潜って観察しやすい状態です。1週間前にはシカの糞があちこちにあるのを確認し、前日にはシマヘビを発見。当日は、熱中症予防のためにテントを張り、指導者・保護者10人で子どもたちの見守りを。生後1ヵ月の赤ちゃんを川デビューさせたので、付近のムカデも駆除しました。なお、捕獲したアカザ・オオヨシノボリ・タカハヤなどは、大阪市水道記念館に寄贈。館の水槽展示に利用していただく予定です。

実施内容

前日     千葉支部長・猪名川支部の子ども2名が大阪に集合
       横浜支部長が滋賀県入り
午前06時00分 大阪チームが出発
午前07時30分 琵琶湖チームと合流
午前09時30分 福井県・北川に到着
午前09時35分 開始・注意事項の伝達
午前09時45分 アユの捕獲
午後00時00分 火起こし・アユの解説
午後01時00分 アユの塩焼き定食
午後02時00分 アユ以外の淡水魚の捕獲 
午後03時00分 終了・片付け

■捕獲生物の解説
講師は、当会・千葉支部長の渡辺正雄先生。川の中ではタモ網の使い方やアユの追い込み方、川での泳ぎ方を教わり、陸ではアユの生態・火の起こし方・アユの焼き方などを解説していただきました。

※詳しくは、最後に掲載する「講義記録」をご覧ください。


だーれもいない、静かな川です。

生後1ヵ月で、川デビュー!!

鹿のあごの骨と肩甲骨を拾ったよ。


水の中にはアユがいっぱいだ。

高校生は、投網の特訓。

小学生は、投網で捕られる?!


モクズガニも食べられるよ。

飛び込む!! 飛び込む!! 飛び込むぞー!!

ライフジャケットで安心だね。


とれたてのアユ、おいしそ〜

焼く前に、火起こしだ。

アユを持ったか、今から焼くぞ。


渡辺先生の調理実習に大人も感心。

中学生はゆっくりと漂って。

水がきれいだから、よく見えるよ。


滝に打たれて、修行中・・・

箱眼鏡で水中をのぞいたよ。

ドジョウやヨシノボリが見えたね。


疲れたら浮いているだけでも楽しい。

みんな集合!! 片付るよ〜

子どもたちの声

※イベント終了後の聞き取り調査より 

・アユの塩焼きがおいしかった。頭からしっぽまで食べたよ。
・高い所から飛び込むのが、いちばん楽しい。
・アカザがナマズの種類だということ、毒があることを知りました。
・アユとウグイの違いがわかりました。
・投網って重いんだ。なかなか広がらなくて難しいな。
・ムカデを初めて見た。気持ち悪い〜

保護者の声

※イベント終了後の聞き取り調査より

・近畿県の水質No,1だけに透明感があって、本当に気持ちがいい所ですね。
 また来年も、家族で参加したいと思います。
 子どもたちに清流を体感させることができて良かったです。
・猪名川もきれいだけど、北川はもっとすごい。
 投網はまだまだ上手にできないけれど、タモ網でアユ5尾が捕れたから満足です。(高校2年生)
・第1回の自然楽習会の時は胎児の状態で参加(?)しましたが
 今回は生後1ヵ月を過ぎていたので、思い切って川デビュー。
 自然の風や音が心地よいのか、家よりも落ち着いてぐっすりと寝ていましたよ。(赤ちゃんの母)
・自然死した鹿の骨を娘が見つけたのに驚きました。
 小村先生の話によると、右下あご・肩甲骨・頭蓋骨の一部だそうです。
 いいお土産、家族の思い出になりました。
・子どもたちの笑顔に囲まれて、横浜から来た甲斐がありました。 
 地元の方からアユの習性を利用した捕り方を教えてもらい、楽しかったです。
 いつもは釣りですが、来年はアユ網にも挑戦したいですね。(横浜支部長)

講師の感想

今や日本は、核家族化の時代です。近所づきあいがどんどん希薄になって、隣に住む人の顔を知らないことも多いでしょう。そのような中、私はこの7年間、川いい会の活動を通じて、多くの子どもたちの成長を見続けてきました。イベント前日には子どもたちと食事をしたり、布団を並べて寝たり。イベント当日には一般参加の子どもに魚とりを教えたり、常連の子どもから学校の話を聞いたり。独身の身でありながら、子どもたちだけでなく家族の成長を感じることができました。
今回は運動会や文化祭など学校や地域の行事と重なり、参加できる家族が少なかったようですが、一段と逞しくなって泳ぎ回る男子、アユの焼き方を教えてもらう女子を見て、大変嬉しく思います。自分の親でなくても、大人の注意を聞く耳をもっている。大人のスタッフに家族の内緒話をするなんて、かわいいものです。半年ぶりに横浜支部長とも会えたし、千葉から駆けつけて本当に良かったと思っています。

東芝キヤリア株式会社 本社勤務・人を自然に近づける川いい会千葉支部長  渡辺正雄

他団体へのメッセージ

1 釣りや特別な漁具を使用する際には、魚券が必要です。指定販売所に遊漁料を納付して、魚券を交付してもらいます。禁漁期間や禁漁区域については、その地域の漁協に問い合わせてみましょう。

2 早朝には、シカやイノシシなどの野生動物に出会うこともあります。ヘビが草むらに潜んでいるかもしれません。現場に着いたら、まず指導者がチェックすることです。

3 空缶・弁当の空箱・ビニール類・残り餌は、川や川岸に捨てないで持ち帰ること。地元の人の生活や仕事に、迷惑がかからないよう子どもたちに指導しましょう。

トクトク情報

国土交通省近畿地方整備局・福井河川国道事務所の「ふくいの川と道」というサイトでは、福井県の川と道の様子がリアルタイムで確認できます。道路の工事通行止情報、路面状況などが事前にわかるため、安全&スムードにドライブできます。また、川のライブ映像が見れるので、事前チェックが可能。水位が1時間おきに表示されているため、リスク管理に役立ちます。
「親子で学ぼう」のコーナーでは、水生生物や魚類の紹介、川の名前の由来などが掲載。子どもたちの自由研究に役立つ情報が満載です。

http://www.fukui.kkr.mlit.go.jp/

講義記録

1 イベント概要と注意事項

■主宰・石山

おはようございます。川いい会の石山です。北川での自然楽習会は、毎年夏休みに行っており、今回で4年目を迎えます。最近、全国的に雨量が少なく、どこの川でも水量が減っています。川の様相も去年とはかなり違いますが、淵にアユが集まっているので投網で捕獲しやすいでしょう。

2日前の天気予報では「80%雨」で、今回の楽習会を中止にしようかと迷いましたが、1日前には「40%雨」となり、本日は、なんと「晴天」となりました!! 皆さんの日頃の行いが良かったのでしょうか。神さんが見方をしてくれたように思います。今回は、千葉や横浜、兵庫、大阪、滋賀とバラエティに飛んだ地域から参加者が集まりまっています。やはり北川という清流の魅力でしょうか。ぜひ、それぞれが住んでいる地域と福井・北川の違いを肌で感じてください。

それと、嬉しい報告がひとつあります。琵琶湖支部長のお子さんは、生後1ヵ月で本日、川デビューです。大人のみなさんは、ムカデの駆除やテント張りなど、赤ちゃんの環境を良くするお手伝いをお願いします。また、お母さんは日頃の育児で疲れていると思いますので、交代で赤ちゃんを見守るなど気を配ってあげてください。お母さんも泳ぎたいですよね〜。ぜひ、きれいな北川でストレスを洗い流してください。

なお、HP等で今回のイベント概要を掲載するため、スタッフが撮影します。肖像権の問題があるので、撮られたくない人は挙手をお願いします。皆さん、OKのようですね。それでは、アユを捕ってみましょう。捕り方が分からない人は、スタッフに声をかけてください。では、川に入りましょう。

2 アユの解説

■渡辺先生
みんな、頑張ってたくさんのアユをつかみましたね。
この川の水はすごくきれいなので、アユもスイカやキュウリのようないい匂いをしていますよ。
みんな、まず匂いをかいでみましょう。

■子どもA
川と同じ匂い・・・スイカやキュウリじゃなくて、川の匂い

■渡辺先生
そうだね。生きた状態だと川の匂いだ。
でも、腸ごと食べると、藻類の匂いが口の中に広がるよ。
それは、あとのお楽しみ。では、アユのことを紹介しましょう。

全長は10〜30cm。去年の今頃は25cmぐらいのものがたくさん捕れていましたが
今年は雨が少ないので、ちょっと成長が悪いですね。
でも、このサイズは天ぷらやフライにするとおいしいですよ。
持って帰る分は、お母さんに揚げてもらってください。

さて、みんなも知っているように、アユは日本の川魚の代表的な種類で
食用の川魚として親しまれています。
つい最近まではサケ目の魚として分類されていたけど、今ではキュウリウオ目になっています。
やはり、その香りも味も、分類?名前?も、ふさわしいほうが良いですよね。
ではアユはどこに棲んでいるかわかりますか?

■子どもB
川・・・北川・・・琵琶湖にもいる

■渡辺先生
実は、海と川を移動する魚です。難しい言葉になりますが、「回遊魚」と言います。
秋に川の下流で生まれて、そのまま海へ下ります。
そして、海でプランクトンを食べて成長し、春頃に再び川へ遡上。
生まれた場所である川の下流を通過して、さらに上へと向かいます。
この頃にはプランクトンの他に、水生昆虫や川に落ちてきた昆虫も食べています。

さらに成長する頃には初夏を迎え、川の中流に到達。
すると遡上をやめて、今度は石に付着する藻類を食べてどんどん成長します。
成長したアユの成魚は、夏が終わり秋になる頃、今度は川を下りはじめ、どんどん下って、下流まで移動します。
そして、自分が生まれた場所付近で産卵。産卵したアユは、たった1年の短い一生を終えるのです。

■保護者A
1年しか生きないのですか。すごい成長スピードですね。

■渡辺先生
そうなんです。1年で生涯を閉じる魚を「年魚」と言います。
人間で例えると、幼児の時代は、人生の3分の1を海で暮らしています。
夏になれば、中学生・高校生のようにアユは急成長します。今がちょうど、その時期ですね。

人間でも中高生の頃はたくさん食べる時期ですが、アユも同じです。
石に付着した藻類を食べるんですが、えさが多い場所を守るために「なわばり」をつくります。
なわばりの広さは、1平方メートルほどかな。
自分の陣地に別のアユが入ってくると、体当たりして追い出します。

その習性を利用した捕り方に「友釣り」があります。
昨日、今日と、横浜支部長がやっていた釣り方です。
おとりのアユを針に付けて泳がせ、自分の陣地に入ってきたと勘違いをさせてアユを寄せるんです。
この友釣りと言う捕り方は、人間の知恵を使った頭脳的な捕り方なんですよ。

■子どもC
何月ぐらいまで、アユを食べることができますか?

■渡辺先生
秋になったら、オスの体はダイダイ色と黒色になり、「さびあゆ」と呼ばれます。
また、産卵のために下流へ移動するので、「落ちアユ」とも言いますね。
大昔の言葉で、「落ちる」を「あゆる」という表現があって、アユの名がそこから来たとも言われています。

アユは甘露煮や寿司にすると、旨いですよ。
だいたい10月末ぐらいまでは食べられますが、水温が低くなるので捕るのは大変です。
もし、食べたいのなら、投網名人の川島捕獲番長に捕ってもらいましょう。

それでは、火を起こして食べる準備に入ります。
まず、河原に落ちている小枝を拾ってきてください。
着火剤や炭を使用すると、川が汚れるので使いませんから、結構たくさんの量が必要です。

・・・・・

さてと、枝が集まったようなので、火をつけます。
火は酸素が少ないと燃えませんから、風が通るように枝を組み上げます。
一番下には、杉の葉など燃えやすいものを置いて、そこに火をつけます。
大きな枝に火が移るまでは、頑張ってうちわで扇ぎましょう。

火の番はお母さん方に任せて、お父さんにお湯を沸かしてもらいます。
その間、子どもたちは塩焼きの準備です。
アユの腸は旨味でもありますが、苦いのが苦手な人は取っておきましょう。
ここが肛門です。胸ビレから肛門まで、腹をつまみながら糞を押し出します。ほら、出てきた。

次は、まな板にアユを並べて塩をふりかけます。
塩をまんべんなくふるには、高い位置からかけること。
塩が一部にしか付いていないとおいしくないですよ。
両面に塩をしたら、軽くもみ込み、口から串を刺しておきます。
それでは、火の回りに串を刺して、強火の遠火で焼きましょう。

実は、新鮮な天然アユを、生で食べる料理法もあります。
骨ごと薄く輪切りにしたものを「せごし」と言います。
骨が気になる人は、3枚に下ろして普通に刺身にしてもいいでしょう。
寄生虫が心配な方は食べませんが、私はあとで、こっそりと造りますよ。

さぁ、塩焼きができたようなので、お母さんにご飯やカップヌードルを用意してもらって食べましょう。
お汁を残すと処理が大変だし、そこらに流すと川が汚れるので、全部飲みきってね。

■子どもD
魚の煮付けは好きやけど、塩焼きは嫌いやった。
でも、このアユはちょっと苦いけど、おいしい。

■子どもE
もっと焼いて食べてもいいですか?

■渡辺先生
さっき下ごしらえの方法を教えましたね。先生は何も言わないから、自分一人でやってみて。
焼く係・火の係を交代しながら、どんどん焼いて食べましょう。
お父さんたち、もっとアユを捕ってきてください。
お母さんたち、下ごしらえが間違っていないか見守ってあげてください。

・・・・・

満腹になったようですね。
おいしいアユに感謝、恵まれた自然に感謝、北川に感謝して「ごちそうさま」。
腹ごなしに、アユと一緒に泳ぎましょう。



第0回 自然楽習会 ~都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!~
第1回 自然楽習会 in 藤ノ木川 ~比叡山坂本で、生きものを捕ってみよう!!~
第2回 自然楽習会 in 大川  ~都会の川を散歩しながら、虫を探してみよう!!~
第3回 自然楽習会 in 大正川  〜茨木市の街中で、生きものを捕ってみよう!!〜
第4回 自然楽習会 in 正修寺  〜茨木の里山で、虫を探してみよう!!〜
第5回 自然楽習会 in 北川  〜福井県の山で、アユを捕ってみよう!!〜
第6回 自然楽習会 in 藻川  〜猪名川の支流・藻川で、生きものを捕ってみよう!!〜
第7回 自然楽習会 in 茨木市  〜茨木の生きものたちを、描いてみよう!!〜

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