第2回 自然楽習会 in 大川 ~都会の川を散歩しながら、虫を探してみよう!!~日時 2010年08月07日(土)午前9時30分~午後00時30分
活動の目的
場所 大阪府大阪市 きんき環境館・大川・大阪天満宮 参加者 小学生10人・指導者&保護者11人(親子1組キャンセル) 講師 石山郁慧(いしやま・ふみえ) 水遊びすらできない都会の川に、果たして生きものがいるのだろうか・・・。それを実際に、自分の目で確かめることが目的です。参加者は、奈良県・兵庫県・大阪の北摂部など、自然豊かな地域に住んでいる家族、そして、大阪市中央区に住む家族。都会と里山での生物多様性の違いを感じて、生きものの気持ちを想像してもらう。そして、生きものが少ない理由を子どもたち自身に考えてもらい、次代の河川の在り方を模索してもらいたいと願って開催しました。 天満橋の周辺には、地下に京阪電鉄天満橋駅と、大阪市営地下鉄天満橋駅があり、地上には大阪市営バスのバスターミナルがあります。ひと言で言えば、官公庁が点在するビジネス街。天満橋交差点を挟んで、京阪シティモールや大阪OMMビルなど、商業施設も密集しています。しかし、そこには、古くから一級河川の大川(旧淀川)が流れています。街の姿は、年々進化していますが、川の流れは古の頃から変わりません。ですが、人間の快適性のために公園や遊歩道などが整備され過ぎ、エコトーンがないため、川の周辺は生きものが住みにくい状態です。 指導者・保護者11人で、子どもたちの見守りを。指導者には、国交省・淀川管区の河川レンジャーやアメリカ在住歴20年のライフセーバーも含まれ、万一の時、迅速に対応できる体勢を整えました。さらに、環境省きんき環境館協力のもとで開催したので、イベント告知だけでなく、ロケハンや会場の確保、資料提供、アンケートなどをサポートしていただけました。なお、危険箇所を発見するための下見は、3回実施。 午前09時30分 きんき環境館に集合・当会からの挨拶 ●散策ルート ※子どもたちが虫取りに夢中なので、保護者に確認し、散策時間を途中で30分延長しました。 午前11時40分 きんき環境館に到着・捕獲生物の解説 ■インドアでの捕獲生物の解説 ※上記2項目に関して、詳しくは、最後に掲載する「講義記録」をご覧ください。 何が捕れるかワクワクするね!! 天満橋は長くて、2階建てなんだよ。 小さいけれど、大川唯一の砂浜があるよ。 虫はどこ? お母さん、一緒に探そ!! 肩車をしてもらった、ちょっとコワいな。 河川レンジャーのおじさん、見つけるのが早い! クマゼミ、アブラゼミが捕れたよ。 嬉しい、初めて素手でセミが捕れた!! 変なキノコがいっぱい生えていたね。 おじいちゃん、草むらには何がいるの? 2人で捕れば、パワーも倍増だ!! 天満宮には、どんな虫がいるのかな? 公園よりも、セミの抜け殻が少ないな。 星合池にはミシシッピアカミミガメが。 遊歩道の花壇にはチョウがいるね。 小村先生から生物のお話を聞いたよ。 セミの標本を見比べると、違いがわかるね。 今日、見た生きものをスケッチだ!! 子どもたちの心が詰まった感想文。 お土産は、アユの絵本と観察セット。 ※イベント終了後のアンケート調査より ※イベント終了後のアンケート調査より 子どもは子どもらしく、そして大人も童心に戻って、虫を追いかけてドキドキ、ワクワクする体験をして欲しい、都会でもたくさんの生きものたちが支え合って生きているということを感じて欲しい、という想いで楽習会に関わらせていただきました。 きんき環境館(環境省近畿環境パートナーシップオフィス)スタッフ 成山博子 インターネットの普及によって、写真だけでなく、動画も無料配信される現代社会。記録すること、記憶することの必要がなくなり、現在進行形で、過去を振り返ることが可能になりました。今、見逃しても、いつでも再生できる時代ですが、それでは、バーチャルな体験しかできないはず。図鑑や映像での勉強は、すぐに忘れてしまうものです。どんなに些細なことでも、実体験することが大切です。一生懸命に虫を捕まえるからこそ、捕った虫に興味を持って調べたり、疑問をもったりするものです。 環境カウンセラー・プランナー 石山郁慧 (1)「都会だから、生きものがいない」と決めつけていませんか。子ども時代の心に戻り、先入観を捨てて、街を散策してみてください。ひっそりと何かが暮らしているものです。 (2)保護者同伴のイベントを開催すれば、安全管理が分厚くなります。指導者は全体的に参加者を見守り、保護者は自分の子どもを中心とした局所的な見守りが可能になります。 (3)官公庁や市町村のPR資材を提供していただくと、子どもたちにプレゼントすることも。今回は観察冊子・下敷き・ハンドタオル・メモ帳・ボールペン・うちわ・クリアファイルを提供していただきました。 きんき環境館は、近畿2府4県を対象として、持続可能な社会の実現をめざして、市民、NGO/NPO、行政、企業等による「環境パートナーシップ」の取り組みが活発におこなわれるようサポートを行っています。多様な主体のニーズに応じて、環境情報を受発信したり、無料で使えるフリースペースを提供。環境に関する書籍、資料なども、館内で自由に閲覧できます。さらにメールマガジンに登録すると、毎月2回、環境に関する最新情報を入手したり、団体のイベント情報を投稿することも可能です。 http://www.kankyokan.jp/pc/ ■7月20日(火)13:30~15:30 ■8月03日(火)16:00~17:00 ■8月05日(木)6:00~11:30 ■アウトドアでの河川の解説・・・担当・石山郁慧 ●大川(一級河川の看板前で) 天満橋は、天神橋、難波橋と並ぶ「浪華三大橋」の一つです。橋の北側は北区、南側は中央区となります。大阪では珍しい、2階建ての橋なんですよ。そして、この川は「大きな川」と書いて「大川」と言います。 河川にはそれぞれ看板が立ててあり、この川は一級河川です。一級河川は「とくに重要な水系だ」と法律で認められた川で、国土交通大臣が管理しています。河川には一級・二級はありますが、そろばんや習字のように、三級とか四級はありません。それ以外は、準用河川、普通河川と呼ばれています。今日は国土交通省の淀川管区河川レンジャー・中島先生が参加されているので、保護者の皆さん、ぜひ河川のことを歩きながら質問してみてください。 この大川は皆さんがご存知のように、春は桜の名所、夏は天神祭の開催場所です。旧淀川とも言いますが、元々は、淀川本流。明治18年に発生した大洪水がきっかけで、新淀川が放水路として開削されて、今の淀川の姿になりました。十三の辺り・柴島の辺りを流れている大川よりも、巨大な川が現在の淀川です。今の淀川と大川を隔てているのは、毛馬閘門と毛馬排水機場です。これらによって、淀川の水量が調整され、洪水を防いでいます。 皆さんも耳にしたことがあるかと思いますが、橋下知事が「大阪の水都再生事業」を展開しています。平成22年度の予算、1億3,000万円の税金を費やして、大川沿いにリバープールを作ろうという構想です。天満橋よりも上流にある桜ノ宮の貯木場跡プール、帝国ホテルの対岸あたりに、昔の貯木場跡が四角いプールがあって、そこに浄化施設を作って、大川の水を濾過して引き込むそうです。 この計画では、プールの横に水生生物を観察できる干潟も作られるそうですが・・・。実は、スッポンの聖地らしいんですよ! 今回の計画によると、埋め立てられる予定です。スッポンたちは、どこで生きたら良いんでしょうね。水質は見てのとおりです。川いい会のスタッフにプロのダイバーがいるので、冬の間に潜ってもらいましたが、視界はほぼゼロ。ヘドロで底が見えず、底に足がついても、手で掴めるのはヘドロと貝の死骸ばかりだったそうです。橋下知事が胸を張った大川のビーチは、来年の夏にオープン予定すが、どんなビーチが誕生するのでしょうか。皆さんもニュースなどを見ていてくださいね。 ●南天満公園(唯一の砂浜前で) ここには、大川唯一の砂浜があります。今日は潮が引いているので、見ることができましたが、満ちていると砂浜は水没します。この公園は、天満青物市場跡です。17世紀に開設され、1931年に福島区の中央卸売市場に統合されるまで、この地に野菜卸売市場があった場所だそうです。 さてさて、生きもののお話ですが、大川にはたくさんの巨鯉が住んでいるのを知っていますか。釣りに興味のある方の間では、有名なお話ですね。コイ以外では、アユは海から川に遡上しますが、その通り道、今の淀川に通じる裏道になっているらしく、毛馬あたりのコンクリート護岸には、アユの食み跡、コケを食べた跡がくっきり残っていると、潜ったダイバーが言っていました。その他には、オイカワ・ボラ、外来種ではブルーギル・ブラックバスなどの魚がいます。モクズガニ・クロベンケイガニ・シジミ、その他にカモメ・カモ・カワウなどの鳥が飛んでいたり、ミシシッピアカミミガメが泳いでいたりします。 それでは、皆さん。難しい話はこれで終わりにして、お待ちかねの虫取に移りましょう。陸上にどんな虫がいるのか、探してみましょう。 ●大阪天満宮(正門付近で) 毎年7月24日・25日に行われる天神祭は、日本三大祭、大阪三大夏祭りの一つです。そのお祭りが、この神社で行われています。菅原道真をまつっているのですが、道真が優れた学者であったことから「学問の神様」ともされ、多くの受験生が合格祈願に詣でます。みんなも、頭が良くなるようにお願いしておきましょう。ちなみに、参拝してから筆を買うと、受験に利益があるそうですよ。 2月頃になると、庭の梅の木にはメジロが渡ってきて蜜を吸っていたり、秋にはジョウビタキが来ることもあります。さぁ、神社の中で、セミ以外の生きものを見つけることができるかな? 先ほどのセミをいっぱい捕った公園に比べて、幼虫がはい出した地面の穴が少ないですね。これは参拝客が地面を踏み固めたり、神社の人が毎日きれいに掃除をするため、寝床となる落ち葉などがないからですね。みんなと同じ、フカフカの布団がないと、幼虫も暮らしにくいんですよ。 ●星合池(池の前で) この池は、「亀の池」とも呼ばれています。2005年頃までは、ミシシッピアカミミガメだらけでした。天神祭でカメ釣りをやった人が、この池に捨てていって増えたんだと思います。その頃は、カエルやトンボも結構いましたが、今はどうでしょう。 実は、この池に架かる橋は「愛嬌橋」と呼ばれ、その昔、この橋の上で出会った男女は結ばれると、言い伝えられていました。それで、毎年7月7日・七夕の日に、天満宮と商店会が「星愛七夕まつり」を開催しようということになって、汚い池の水を抜いたそうです。50匹以上いたカメは、業者に頼んで引き取ってもらい、その代わりに、コイの稚魚を200匹入れたそうです。でも、その稚魚は・・・大阪城をねぐらとするアオサギに食べられてしまいました。それから、また毎年の天神祭でミドリガメが捨てられて、今の状態です。チラホラ泳いでいる亀は、1~3歳のまだ小さいものばかりですね。 池の上をトンボが飛んでいますね。 コシアキトンボのオスです。アジアイトトンボもいますね。アメンボも、いっぱいです。梅の木の辺りをアシナガバチが飛んでいるので、後ろ足でゆっくりと遠ざかりましょう。急に動くと、ハチも驚いて襲ってきますから、慎重にゆっくりと。黒い服を着ている人は、とくに注意してください。ハチが警戒して寄ってきますよ。 ●中の島公園(天神橋の上で) この下は、中の島公園です。そして、尖った島の部分は「剣先」と呼ばれ、「剣先公園」と言います。剣先の東側に流れるているのが大川なんですが、ここで北側の堂島川、南側の土佐堀川とに分かれます。川に線引き表示はされていませんが、名前が変わります。水都大阪を代表する、水の回廊となっていますから、機会があれば中の島公園を散歩して、古い橋や大大阪時代の建物などを見物してみてください。 この公園には、2007年までホームレスの人たちがいっぱい住んでいました。でも・・・大阪市役所が「中の島公園が水都大阪の顔にふさわしい、水とみどりが調和した快適な公園となるよう再整備」をうたい、ホームレスを追い出したんです。その後、京阪電鉄が新線を拡張し、きれいな公園に整備されました。人間にとっては芝生があって美しいと感じるかもしれませんが、虫がいる場所は立入禁止です。また、下見の時にコンクリート護岸の隙間にいるクロベンケイガニ3匹を捕りましたが、子どもたちには危ない場所なので、館に戻ってから観察しましょう。 ●八軒家浜(川の駅で) ここが、八軒家浜と呼ばれる地です。江戸時代、京都・伏見と大阪を結ぶ三十石船の発着場で、8軒の船宿があったから、この名前となりました。京都から船に乗り、「八軒家浜」を経由して熊野詣でをしたことから、熊野街道への起点としても知られています。 京阪電鉄ができるまでは、流通、交通の要所だったわけです。土佐堀通りにある「永田屋昆布店」の軒先に、石碑が建っているので、イベントの帰りにでも見物してみてください。 2008年3月、往時の八軒家浜の賑わいを水都大阪の再生の拠点とするため、この「八軒家浜 船着場」が開港。その後、「川の駅・はちけんや」がオープンして、大川沿いに、天神橋まで続く遊歩道が整備されました。 話は変わりますが、川の用語で「右岸」「左岸」という言葉があります。川を上流から下流を見て、左側が左岸、右側が右岸です。では、先ほど見た「砂浜」は右岸でしょうか、左岸でしょうか。答えは・・・右岸ですね。この場所の呼び名は「八軒家浜」。それなのに、「浜」は、南天満公園で見た、砂浜しかありません。あの小さな砂浜、カニや貝にとって、すごく大切なんだとわかるでしょう。 ■インドアでの捕獲生物の解説・・・担当・小村一也 ●クマゼミ 成虫の体長が6~7cmほどで、アブラゼミやミンミンゼミに比べ頭部の幅が広いこと、羽が透明で黒い体色と腹部にある白い2つの斑紋が特徴です。日本産のセミの中では、ヤエヤマクマゼミに次いで大きな体をしています。羽化から数日までの個体は、背中側に金色の微毛があることも特徴です。 1980年代以降、大阪市などの西日本の都市部では、セミ全体数に対するクマゼミの割合の増加しています。それまではアブラゼミの方が多く、最も普通に見られており、温暖な西日本地域に多いクマゼミは、大阪では珍しいセミでした。しかし、今では最も普通に多く見られるようになったんです。また、1990年代頃から関東地方や北陸地方でも、クマゼミ生息地の東進・北上が報告されています。このようなクマゼミ増加の原因として「地球温暖化が起因している」と言う節もありますが、定かではありません。 ●アブラゼミ 成虫の体長が6cm以下で、クマゼミより少し小さいです。頭部は胸部より幅が狭く、上から見ると頭部が丸いこと、体は黒褐色~紺色、前胸の中央に大きな褐色の斑点が2つ並ぶことが特徴です。セミの多くは、翅が透明なのですが、アブラゼミは前後とも不透明な褐色をしています。世界中でも珍しい、翅全体が不透明のセミであることが一番の特徴と言えるでしょう。 抜け殻はクマゼミとよく似ていますが、クマゼミにはデベソのような出っ張りがあります。アブラゼミは35mm以下で、全身にツヤがあり、抜け殻に泥がついていないのも特徴ですね。ちなみに、アブラゼミの名前の由来は、その鳴き声が「天ぷらやフライを揚げているときの油が爆ぜる音」に似ている事からです。 アブラゼミは、夜鳴きをすることでも知られています。薄暗く湿度の比較的高い時間帯を好むため、最も盛んに発声活動をするのは夕刻時です。夜に鳴くのはこれの延長ですが、数が多くなる時期にしか、普通は夜鳴きしません。その他のセミも、同じ条件下で夜鳴くことはありますが、アブラゼミはとくに夜鳴きをしやすいセミであるため、少しでも数が多く発生すれば、すぐに夜鳴きをする傾向があります。 ●ショウリョウバッタ オスの成虫は、体長5cm程度で細身です。それに対して、メスの成虫は体長9cmくらいで、全長(触角の先端から伸ばした後脚の先端まで)では、大きな個体で18cmほどにもなります。ショウリョウバッタのメスは、日本に分布するバッタの中では最大で、オスとメスの大きさが極端に違うのが特徴です。 頭部が円錐形で斜め上に尖っていて、他のバッタに比べると、前後に細長くスマートな笹の葉のような体型をしています。体色は周囲の環境に擬態した緑色のものが普通ですが、たまに茶褐色の個体も見られます。また、オスの成虫には目立った模様がありませんが、メスの成虫は体側を貫くように黒白の縦帯模様があります。 ちなみに俗説として、8月の旧盆=精霊祭の時季に発生して、精霊流しの精霊船に似ることから、この名がついたと言われています。オスは飛ぶときに「キチキチキ」と音を出すことから「キチキチバッタ」とも呼ばれています。メスは捕まえて、後脚を揃えて持った時に身体を縦に振る姿から「コメツキバッタ」とか「ハタオリバッタ」と呼ばれることもあります。 ●ショウジョウトンボ オスは、和名のショウジョウ(猩猩=ヒヒ)から連想できるように、鮮やかな赤色の体をしています。下見の時に捕獲したメスは、黄色みがかった茶色ですね。オスは単独で、池などの周囲を縄張りの縁に沿って哨戒飛行します。敵となるオスが現われると、時に激しく羽音を立てて格闘しますが、メスにはおおらかです。 飛翔は速くてパワフルであり、風に乗ってゆっくり飛ぶことはなく、哨戒飛行の後はすぐに縄張り内のお気に入りの基点に止まり、警戒を続けます。メスは同じオスの縄張りに居座らないで、産卵後はさっさと飛んでいきます。また、飛翔はオスに比べて、ゆっくり穏やかです。 ●コシアキトンボ コシアキトンボは、黒色を帯びた中形の種類です。腹部の基方節が白色または黄色で、ここだけが色が抜けたように見えるため「腰が空いた」トンボという名になったと言われています。幼虫は樹陰のある池沼に育ち、初夏の頃に羽化します。 若い成虫は樹上や上方の空間を飛んでいますが、成熟したオスは池や川の表面近くに降りて、水際を徘徊して交尾します。分布域は広く、本州以南の日本、さらに朝鮮半島と台湾、中国の中・南部およびトンキン湾にまで分布する、平地の普通種として知られています。 ●アジアイトトンボ アジアイトトンボは、日本産イトトンボ属の中で、最も小さい種です。アオモンイトトンボに似ていますが、ひとまわり小柄です。腹長は大きくても2.5cm程度。北海道から九州、沖縄にかけて分布し、国外では朝鮮半島、中国、台湾、ロシアに分布しています。 成熟した成虫は、おもに平地から丘陵地にかけての池や湿地など止水域で見られ、環境適応性も高く、少しでも植生があれば人工的な水域や河川の淀みなどでも見られます。春、最も早く現れるトンボですが、出現期はとても長く秋まで見られます。 ●アメンボ 池で見たアメンボですが、翅や口吻など体の基本的な構造は、あの臭い匂いを出すカメムシ類と同じです。即ち、カメムシ、さらにはセミと遠い親戚なのですね。中脚と後脚が細長く発達していて、脚全体に細かい毛が密生しています。これで水の表面張力を利用して水面上に立ち、自由に移動することができるのです。 また、脚以外の全身も水を弾く構造になっています。水面を蹴って、滑るように移動し、水面の蹴り方によっては素早いジャンプもできます。ただし、水に洗剤などの界面活性剤が含まれていると、表面張力が弱くなって、アメンボは浮くことができず、溺れ死んでしまいます。 ついでに、クモはどうして糸に引っかからないか知っていますか? アメンボが水をはじくように、クモも糸が絡まないような体なのでしょうか? 実は代表的なクモの網である円網では、横糸に粘液のついた糸が張ってあって、獲物に粘り着くようになっています。クモが網を歩く時にはこの横糸を使わず、粘りのない縦糸を伝って歩くので、自らは網に引っかからないのです。 ついでにクモ「蜘蛛」の漢字についての豆知識です。中国発祥の漢字においては、「蜘」がオスのクモを指し、「蛛」がメスのクモを指すので、雌雄あわせて「蜘蛛」と表記するのですね。雌雄別々の漢字が割り当てられているのは、クモが日常的になじみのある生きものであること、雌雄の区別が比較的たやすいことからです。 ●クロベンケイガニ 下見の時に捕れたこのカニは、クロベンケイガニです。汽水域周辺の草むらや河川敷、石積みされた護岸の隙間などで、最も普通に見かけます。水辺の土手などに巣穴を掘って生活していて、大川周辺では護岸のブロックの隙間などに潜んでいます。甲長は4cm程度。甲羅はデコボコしていて、脚には硬くて長い毛があり、ハサミは紫がかった色をしています。 河口近くに棲むこのカニがいることで、大川は海にほど近く、汐の影響があることが理解できますね。この3匹のカニは、きんき環境館で飼育するので、また来る機会があれば、ゆっくりと観察してください。エサを食べる姿は、可愛いですよ。 ●その他 その他に少数ですが、ヤマトシジミチョウ・モンシロチョウ・アオスジアゲハ・ヒョウモンチョウの一種が見られました。アシナガバチも飛んでいましたね。そして、今日はあまり観察しませんでしたが、アリ2種類、太いミミズ、ダンゴムシ、ハムシなども地面にいました。自分たちで同じルートを歩く機会があれば、地面の虫たちも見てください。雨が降った後は、とくに活発に動きまわりますよ。 第0回 自然楽習会 ~都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!~ 第1回 自然楽習会 in 藤ノ木川 ~比叡山坂本で、生きものを捕ってみよう!!~ 第2回 自然楽習会 in 大川 ~都会の川を散歩しながら、虫を探してみよう!!~ 第3回 自然楽習会 in 大正川 〜茨木市の街中で、生きものを捕ってみよう!!〜 第4回 自然楽習会 in 正修寺 〜茨木の里山で、虫を探してみよう!!〜 第5回 自然楽習会 in 北川 〜福井県の山で、アユを捕ってみよう!!〜 第6回 自然楽習会 in 藻川 〜猪名川の支流・藻川で、生きものを捕ってみよう!!〜 第7回 自然楽習会 in 茨木市 〜茨木の生きものたちを、描いてみよう!!〜 プログラム検索に戻る |