NO団体名主な企画内容
35 人を自然に近づける川いい会(大阪府) 「自然楽習会 〜都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!〜」
琵琶湖・淀川水系の5ヶ所で、川に生きる生物たちを観察・捕獲し、都会の河川に棲む生きものと、自然あふれる田舎の河川に棲む生きものの違いを体験を通じて学ぶ。治水・利水だけでない、生物を育む川を地域コミュニケーションの場とする活動。

第7回 自然楽習会 in 茨木市  〜茨木の生きものたちを、描いてみよう!!〜

日時  2010年10月2日(土)・3日(日)午前10時00分〜午後04時00分
場所  大阪府・茨木市・クリエイトセンター
参加者 幼児・小学生・中学生・保護者含め約100人・指導者4人
講師  馬場玲子(ばば・れいこ)
活動の目的

当会のホームグラウンドである茨木市では、毎年、環境フェアが行われます。5年前より、そのフェアにおける市民団体活動コーナー運営委員を当会の石山郁慧が担っており、市との協働にて運営しています。当会のブースでは、昨年に引き続き、茨木の生きものを細密に描く「えんぴつ画教室」を開催。茨木市に棲む生きものの解説だけでなく、細密に描く手法を指導し、来年の自然体験の同定に役立ててもらいます。

リスクマネジメント

市のイベント会場なので、館内のあちこちに市の職員がスタッフとして配備されています。使用する道具は、鉛筆・消しゴム・再生上質紙・鉛筆削り・教材類等だけなので、とくに危険はありません。2日間とも、当会スタッフ4名が講師として指導しながら、子どもたちを見守っていました。

実施内容

1日(金)    
13時00分  搬入・展示
15時00分  市との打ち合わせ

2日(土)・3日(日)
09時00分  スタッフ集合・準備
10時00分  教室スタート
12時00分  休憩
13時00分  教室スタート
16時00分  終了
16時30分  撤収・解散

■生物の解説
理学博士・馬場玲子先生、博物画家・小村一也先生に生物の特徴を聞きながら、生きものを描くポイントを教えていただきました。教材は、哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類・魚類・その他の生きものの写真や絵を掲載した、オリジナルの冊子を使用(小村一也先生が編集したもの)。参加した子どもたちには、お土産として教材を持って帰ってもらいました。
※詳しくは、最後に掲載する「講義記録」をご覧ください。


10席を用意し、随時指導できる体勢に。

オリジナル教材をセッティング。

展示物を熱心に見る親子。


馬場先生が鉛筆の使い方を説明。

魚の話を聞きながら描くと楽しい。

中学生も、描く・描く・描く!


子どもショーの間はお年寄りも参加。

精密に描くのは根気がいるなぁ〜

私はチョウを描いてみたい。


僕は大好きな虫を何匹も!!

今年で3年も教えてもらってまーす。

描いているうちに特徴が見えてきたよ。


教材を見ているだけでも面白い。

兄弟でも、描くものは違うんだ。

パパ、きれいに描けてるかな。


僕の自信作だ!!

ママといっしょに描いたよ。

子どもとの対話は大人の元気。


子どものリクエストに応えて・・・

小村先生の絵がいっぱいになりました。

子どもたちの声

※描きながらの聞き取り調査より 

・茨木でミヤマクワガタが捕れることを教えてもらった。来年は、自分で捕りたい。
・動物が好きで、絵を描くのも好き。5年続けて教えてもらって、絵がうまくなりました。
 (最初に来た時は小学生だったが、現在は中学生になっていた女子)
・安威川に魚がいっぱいいることがわかった。
・しっぽを切らないように、トカゲを捕る方法を教えてもらった。
・ハチやアブが、ハッカ油に弱いと初めて知った。

保護者の声

※描きながらの聞き取り調査より

・ナマズやウナギを捕って食べることは、昔、茨木の人もやっていたが
 川いい会の人は今も食べてはるんですなぁ。
・マムシを酒に漬ける方法を知りました。ヘビの皮のむき方は難しそうですね。
・来年は、子どもと一緒に川のイベントに参加したいです。
 どのように情報発信をされていますか?
・メダカの孵化に失敗し続けているので、成功ポイントを教えてもらって助かりました。
 来年こそ、赤ちゃんメダカを育てたいと思っています。
・今年は暑すぎて、セミの数が少なかったですね。
 気のせいかもしれませんが、農作業時に襲ってくるハチやアブも少なかったように思います。
・子どもに混ざって絵を教えてもらいましたが、私の方が熱中してしまいました・・・

講師の感想

学生時代にオヤニラミという淡水魚の研究で、博士号を取得しました。テーマは、托卵という方法でオヤニラミの繁殖に便乗する淡水魚、ムギツクの影響。現場での観察中には、直接「托卵」を目にすることは出来なかったのですが、地道な観察から、直接目で見ることの出来ない生きものたちの営みを推理する楽しさを味わいました。この時の経験から、生きものはただ1種だけで独立して生きているのではなく、良きにつけ悪しきにつけ、様々な他の生命体との結びつきの中で暮らしているのだということを実感しました。

さて、目で直接見ることは出来ない生きものたちの世界を、他人にいち早く知ってもらうには、その様子をビジュアルに示すことが最適な方法です。百聞は一見に如かずといいますものね。当時、指導教官がその様子をビデオで撮影しましたが、鮮明で分かりやすい画像はなかなか撮れませんでした。ビデオの画像から想像できる、水面下の不思議なドラマを、絵で表現できたらと心から思ったものです。当時は技術も知識もなかったので、単純な線画を1枚描いた程度でした。細密画の手法を学んだおかげで、現在では、大概のことは自分の力で表現できるようになっています。

今、私は大阪府庁に勤務しており、林学系の仕事をしています。その関係で、里山で見られる生きもの、例えば林床植生や棚田で出会う植物から、林業や農業への厄介者、害獣・害虫との関わりが高いです。初めて見た植物などをスケッチするために細部を観察すると、よく似た植物との違いをハッキリさせることができます。また、細かく観察することで、その生きものが生きやすい環境は、どんな敵や味方がいて何を利用して生きているのか、などといったことに思いを馳せることができるのです。

環境フェアのボランティア講師は、今年で3年目でした。毎年、子どもたちなりのイメージで、描き出されていく生きものたちの姿を、新鮮な気持ちで見ています。描くという作業を通して、子どもたちが物事に向き合う真摯な気持ちや我慢強さを培い、じっくり物事を進めていくことの面白さに触れてほしいと願っています。子どもたちが経験した生きものとのふれあいの話を聞いたりしているうちに、子どもたちがこちらに心を開いてくれるのが楽しいですね。今回は異常な気象で、野外では山に虫が少なかったり、川が渇水して魚が捕れなかったりと、不安な兆候を知らせる情報が舞い込んできています。描くだけではそうした変化を直接感じることはできませんが、絵を通して「知りあった」生きものたちの暮らしに、想像力でアプローチしてもらえたらと思っています。

大阪府 環境農林水産総合研究所 
食とみどり技術センター 環境研究部
理学博士   馬場玲子   

他団体へのメッセージ

1 会の活性化のために、地元行政のフェアには積極的に参加しましょう。これまでの活動報告をしたり、次のイベントを告知したりできます。

2 特別な道具を用いなくても、ネイチャーアートは楽しめます。子どもたちの心をくすぐる言葉をいくつか用意しておいて、描く面白さを伝えましょう。

3 大きなフェアには、各種団体だけでなく、企業も参加します。助成金や協働事業の話など、会の活動に役立つ情報を収集するのもいいでしょう。

トクトク情報

大阪府では、緑化の推進及び良好な自然環境の保全のため、みどりの基金を設置。街にうるおいや、やすらぎをもたらしてくれる“みどり”を増やすために、この基金を利用して、さまざまな緑化事業を実施しています。地域住民が協働して行う地域緑化活動に対して、無償で苗木を配付し、地域と連携した市街地の緑化を推進しています。活動助成・施設助成があるので、緑化をお考えの団体なら一見の価値があるでしょう。

http://www.pref.osaka.jp/midori/kikin/index.html

講義記録

1 描き方のコツ

今日は、茨木に棲む生きものたちをまとめた図鑑を使って、自分の好きな生きものを描いてみましょう。
まずは鉛筆の使い方ですが、鉛筆は立てて描くと、細く鋭い線が描けます。
少し寝かせた状態にすると、太く柔らかい線が描けます。
この2つを使い分けると、よりリアルに描くことが可能です。

何を描くか決まったら、構図を考えましょう。
縦に長いものは紙を縦使いで、横に長いものは紙を横使いで。
全身を描くのか、顔だけを描くのか、背景も描くのか。
それによっても、紙の縦横で印象が変わります。

構図が決まったら、最初は大まかな輪郭を薄く下描きします。
絵が苦手という人は、○△□の組み合わせでもいいですよ。
そして、生きもののの部分部分を見ながら特徴を捉え、徐々に濃く描いていきましょう。
少しぐらい歪んでも大丈夫、それが絵の個性となりますから。
うまく描こうとせず、正しく描くように。
例えば、カメなら脚は4本。前脚の爪は5本・後脚の爪は4本です。
図鑑で見えない部分を描きたい時は、私か小村先生に聞いてくださいね。
生きものの正しい姿をお教えしますので。
では、皆さん、自分の好きな生きものを描いてみましょう。

2 生きものの解説

■哺乳類
茨木市の山奥には、タヌキやキツネが棲んでいます。イタチやドブネズミは、街中でも走っているのを見かけますね。シカはかわいい動物ですが、農家の方にとっては天敵ともいえます。今は数が増え過ぎて、日本中で害獣扱いされています。

■鳥類
四季を通じて観察できるのが、鳥類です。春になると、町中ではまず、メジロが目につきます。スズメたちに混じって黄色いハネが目立つ鳥を見かけますが、それはカワラヒワです。あと、赤茶色っぽいムクドリくらいの鳥、ツグミも見られますね。
夏になると河原や水辺では、サギ類やカワセミが活発に小魚やカエルを捉えています。秋〜冬はカモ類の季節ですね。あと、海鳥のイメージがありますが、ユリカモメは、茨木と摂津の境界あたりに飛来していますよ。山間部では、フクロウやアオバズク、オオタカ、オオルリと言ったバードウオッチャーのあこがれの野鳥たちに出会えます。春夏秋冬、それぞれの季節に渡って来る鳥も、年中見られる鳥も、茨木市は平野部から山間部まで、多種多様な野鳥たちが棲息しています。

■爬虫類
どんな爬虫類を見たことがあるかな? ヘビは山や川にいますね。古い家なら、縁の下にアオダイショウが棲み着いていることもあります。茨木のキャンプ場辺りでは、マムシがいますよ。これに噛まれたら、毒をもっているので大変です。この図鑑をよく見て、模様を覚えておきましょう。
ヤモリやトカゲ、カナヘビは、とくに危険はありません。すばしっこいですが、捕まえてみると、しっぽの長さや脚の形状など、じっくり観察できます。川に行けば、カメさんもいますね。クサガメ・ニホンイシガメ・スッポン。そして、京都市で天然記念物に指定されているミナミイシガメも、茨木市で捕ったことがあります。大阪では希少な生きものなので、川いい会から大阪市の水道記念館に5頭を寄贈し、種の保存をお願いしています。

■両生類
安威川の上流部には、オオサンショウウオがいます。国の天然記念物に指定されているので、捕まえたりはできません。頭が大きくてユーモラスな姿をしていますが、鋭い歯をもっているので危険ですよ。
カエルは、たくさんの種類が棲んでいます。その中には大阪府の準絶滅危惧種であるモリアオガエル、要注目のシュレーゲルアオガエルも含まれています。そういえば、昔は水辺にたくさんいたイモリも、現在は要注目に指定されています。その反面、日本全国の課題ですが、茨木市でもウシガエルが増え続けています。特定外来生物に指定されているので、いち早く防除する必要がありますね。

■昆虫類
チョウやトンボは、街中でも見ることができます。飛んでいるのを見かけたら、色と大きさを目で覚えておきましょう。そして、家に帰って図鑑やインターネットで、種名や特徴を調べましょう。ひとつの種を細密に覚えると、違う種を見た時に比較して覚えやすくなります。例えば、シオカラトンボをよく観察して、色とか大きさを頭に描けるようになると、それに比べてオニヤンマはすごく大きい。ハグロトンボはハネが真っ黒。イトトンボは細くて小さい。そうやって比較する対象をひとつ固定してしまうと、簡単に覚えられます。来年は、この図鑑を持って、茨木の大きな公園や見山の郷、キャンプ場などで観察してみてくださいね。

■魚類
茨木市には、35種類ほどの魚類が棲息しています。安威川には大阪府レッドデータブック絶滅危惧種に指定されているアジメドジョウがいますね。この種は、茨木市の生きた宝です。もし捕れたとしても、川にリリースしてやってください。
海から川に上がってくるウナギやアユ、ハゼもいます。でも、やっぱり・・・。オオクチバスやブルーギル、カダヤシといった特定外来生物に棲息地を奪われて、日本固有の魚たちが減ってきています。

■その他の生きもの
田んぼに水が入ってしばらくすると、ホウネンエビやカブトエビが出てきますね。川にはモクズガニ・サワガニもいるし、テナガエビやミナミヌマエビもいます。アメリカザリガニは、スルメで釣ったりすると楽しいですね。今のシーズンでも簡単に捕れますから、お父さんとやってみたらいいでしょう。



第0回 自然楽習会 ~都心部で、里山で、生きものを捕ってみよう!!~
第1回 自然楽習会 in 藤ノ木川 ~比叡山坂本で、生きものを捕ってみよう!!~
第2回 自然楽習会 in 大川  ~都会の川を散歩しながら、虫を探してみよう!!~
第3回 自然楽習会 in 大正川  〜茨木市の街中で、生きものを捕ってみよう!!〜
第4回 自然楽習会 in 正修寺  〜茨木の里山で、虫を探してみよう!!〜
第5回 自然楽習会 in 北川  〜福井県の山で、アユを捕ってみよう!!〜
第6回 自然楽習会 in 藻川  〜猪名川の支流・藻川で、生きものを捕ってみよう!!〜
第7回 自然楽習会 in 茨木市  〜茨木の生きものたちを、描いてみよう!!〜

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