NO団体名主な企画内容
46 一般社団法人 広島県山岳連盟(広島県) 「わんぱく登山部」
登山活動の普及を通して、長期的な社会貢献を目指す活動。その一環として「こども山遊びクラブ」を開催。山登りや沢登りで、子どもたちに「楽しい」「好き」といった気持ちの原体験を提供する。同時に登山の活性化や「山行中の屎尿の持ち帰り」などを実践し、社会に提言する。

わんぱく登山部 特別例会(1)実施レポート 夏のアルプス遠征隊

日程    : 8月7日(金)〜12日(水)5泊6日
場所    : ベースキャンプ 長野県松本市 上高地 小梨平キャンプ場(4泊)
        (目的地)奥穂高・前穂高、西穂高、焼岳
活動部員数 : 部員8人(男子6人 女子2人)※小学校5〜6年生
スタッフ  : 5人
ねらい

1.漠然とした夢やあこがれを、具体的な目標に変えて、それにむかって自分で行動し、かなえていくことの楽しさ。
2.宿泊をともなった日本の中央山岳登山の体験と、その楽しさ
3.リアルな世界の体験の提供とその楽しさ

遠征隊全体スケジュール
日程予定スケジュール(こども達の希望)実施スケジュール
6月中旬遠征隊隊員募集(下旬決定)左記同
7/4(土)事前勉強会&保護者説明会左記同
8/7(金)移動日(貸切バス)、上高地入り左記同
8/8(土)前穂高・奥穂高(14時間予定)休養(天候判断)明神池など散策ほか
8/9(日)休養日前穂高登頂 ※約12時間
8/10(月)西穂高(14時間予定)休養(台風9号接近の為)お土産散策?
8/11(火)焼岳(午前中)、撤収、平湯温泉旅館泊左記同   ※焼岳 約8時間
8/12(水)高山市内観光、移動(広島へ)左記同
9月保護者報告会

予定スケジュールの山行計画は本プログラムのねらいや目的に照らし合わせ、7月の事前勉強会でのこども達の希望がそのまま反映されたものになっています。現実的にはかなりハードなスケジュールです。このままの山行計画は、通常、小学生におすすめ出来るものではありませんので予めご了承ください。(この遠征の参加者は、同じスタッフが同行しての登山経験がすでに1年〜2年以上・回数にすると10回〜20回以上あり、また参加者同士の関係性もある程度出来ています。)
実施の際は、天候やこども達の体調など全体的にみて、最終的に現地で大人が判断しています。
実施された山行は
 ●9日  上高地からの前穂高 日帰り往複
 ●11日 焼岳 日帰り往複         です。
※8日に予定していた前穂高・奥穂高は、8日の天候がぐずついていること、翌9日の天候が良い方向に向かっている(実際はあまり変らなかった)様子からスケジュールを変更。
※9日の前穂高・奥穂高は、天候とこども達の体力、時間から前穂高往復に変更。(奥穂高をキャンセル。判断は前穂高山頂にて。)
※10日は台風9号の発生と接近のため中止・休養日になっています。

7月4日(土)事前勉強会  晴れ
時間内容
9:30山岳連盟事務所 集合
「遠征隊とは!?」
9:50「上高地にある山を検証!」
行く山をきめて、それから地図にルートを書いてみました。
10:30「山のごはん:実習編」(昼食)
11:30昼食
12:40穂高連峰と焼岳の実際のスライド
13:50行動食の計画と報告書について
14:30終了・解散
16:30保護者説明会
18:30保護者&スタッフ懇親会
8月7日(金)移動日・キャンプ地へ  天気:現地 雨
時間内容
7:30広島駅新幹線口出発
17:00上高地バスターミナル着
18:00小梨平キャンプ場・テント設営
19:00夕食
20:30就寝(韓国隊到着)
8月8日(土)休養日  天気:雨時々晴れ 夕方から雷雨

 休養日に変更。小梨平キャンプ場で自由に過ごす。明神池や河童橋なども散策。明神池のカモをつかまえてあそぶ。キャンプ場の青大将を捕まえる。梓川とキャンプ場で大いに遊ぶ。

8月9日(日)前穂高岳 登山    天気:雨のち曇り
時間内容
3:00起床・朝食
4:20キャンプ場出発
4:50登山口出発
7:00岳沢ヒュッテ跡
10:30紀美子平(ザックをデポ)
11:00前穂高山頂(11:25折り返し)
12:00紀美子平・軽昼食(12:40下山開始)
14:30岳沢ヒュッテ跡
16:30登山口へ下山
16:50キャンプ場着
17:30入浴(小梨平施設利用)
21:00就寝
8月10日(月)休養日        天気: 雨 時々曇り

 午前中いっぱい雨で気温も低い。大人テントにこども達があつまって、ひっつきもっつきごろごろ遊んでいる。韓国の友人たちが残していった「辛ラーメン」に、韓国の青唐辛子をいれて調理したものをおもしろがって食べる。「これを食べられんと韓国と交流できん!」といかなんとか。
 その他、はがきを書いて上高地郵便局に投函しにいったり、でも間違えて松本郵便局のポストに入れてしまったり。(そのあと、13:30の集荷を待ち伏せして、懇願してハガキを返してもらったとのこと。)
 梓川であそんでいて、名古屋の人と仲良くなったと言っていました。河童橋でお土産も買った模様。

8月11日(火)焼岳・撤収 平湯温泉へ移動  天気:晴れ
時間内容
4:00起床・朝食
5:00キャンプ場出発
5:40登山口到着
7:50焼岳小屋到着
9:25焼岳山頂
9:50下山開始
12:00登山口到着
12:50キャンプ場到着・14:00撤収
14:45シャトルバス出発(団体貸切)
15:20旅館到着
8月12日(水)移動日  天気:晴れ
時間内容
7:00朝食
7:30旅館出発
9:00高山市内見学(1時間程度)
20:30広島駅新幹線口着 解散
運営ポイント

 自分の荷物はメインザックを使用し、自分で背負う。(テント・寝袋・団食料などは大人が荷揚げ)
 事前勉強会を実施し、自分達の登山のイメージを出来るだけ具体的にする。
 行動食など部員自身で計画、準備。また、報告書の作成義務も。
 屎尿はナルゲンボトルで各自持ち帰り。(各自におしっこボトルを持参)
 時間管理が安全管理に大きく関わるため、出来ていなければ大人もどんどん話しをし、指示を出して。

安全管理ポイント

(参加者) 事前勉強会での山行イメージの具体化。山行を自分のものに。
      モチベーションのUP。動機付け。
      持参品の選定。(登山専用の衣服や装備など)
      参加者の選抜
(登山装備)前穂高に関しては、岳沢ヒュッテ跡地からヘルメット着用。
      紀美子平から前穂高往復は軽量化・時間短縮のため、こどもはザックをデポ。
(食事)  軽量化を考えず、できるだけ通常食で、栄養・カロリーがとれるよう配慮した。
(生活)  軽量化を考えず、住居製の良いテントを選択。出来る限り休養できるように。
      寝袋は全員シュラフカバーを着用させた。(雨天が予想されたため)
(活動形態)小梨平キャンプ場をベースに日帰り登山。
      ※但し、標高差1600m、12時間行動など登山自体はハードな設定になっています。
(バックアップ) ベースキャンプマネージャー1名

危険な事、それらを回避するための方法など、どんどん教えて実行させる。
(水分の補給、行動食、歩き方、休憩など、それぞれの意味と知識、方法を。また登山を成功させるための自己管理の意味や方法についても)

実施の概要

 広島県高等学校体育連盟 登山専門部の‘09合同夏合宿への、わんぱく登山部の参加。

■方法:部内で参加希望者(隊員)を公募 ※6月中旬
■定員:若干名 (今年度は8人が決定)
■選考:応募者の中から、基準に達している者を決定。「体力」「気力」「山が好き!楽しい!」「人と交流したい!」という気持ちの他に、応募が本人のビジョンかどうか、などを考慮して決定。
※選考実施の理由は「安全管理」。
■ 活動:①事前勉強会 
②5泊6日遠征登山(高校生夏合宿への参加)
③保護者説明会&報告会

 今年はこども8人の遠征隊。隊員は、上高地や周辺の山々について各自勉強して、得た知識を事前勉強会へ持ち寄り、互いの知識をシェアし、スケジュール(登山にあてられるのは4泊5日)の中でいける隊の目的の山を決定。自分たちのスケジュールをもって遠征に臨んだ。
 梅雨明けが全国的に遅れ、また、日本の太平洋近海で発生した台風9号の影響も受けて、スケジュールは随時変更されながら実施。奥穂高、西穂高はキャンセルしたが、目的の山4つのうち2つ(前穂高、焼岳)を登頂。去年の5人から8人に増え、上高地でのいつもより多めの休養日も自分たちのものにして大いに楽しみ、素晴らしい6日間にしてすべてを終えることができた。

こども達の様子

「行ってよかった」今年もそう思えるような良い遠征になった。登山、休養日、キャンプ地での時間など、こども達が彼ら自身の力でのびのびと楽しいものに作り上げていっていた。前穂高往復は1600m標高差でそれは大変きびしいものだったが、彼らはそこから大きな自信とリアルな世界の中で生きる楽しさを見出したと感じる。
今年は、昨年の立山・剣岳を経験した子どもと、今年新たに挑戦する子ども達がまじりあってのグループ構成であったので、それぞれにモチベーションも動機も認識も個人差があった。8人という「多めの人数」もこども達に影響を与えていた。事前勉強会の時点では「うまくまとまらない」感じ。それぞれになんらかの逃げ道があり、事前勉強会の方向性も散漫になってしまう。
よって事前勉強会の機能は昨年と比べると少し弱いものになってしまった。
それがいずれ本番で顕著に表れてくる。昨年の経験者と今年新たにチャレンジするものと、それぞれの意識の差が山行や体調に表れた。

昨年経験者は初めからやる気満々。「去年楽しかった!また絶対行きたい!」。調べものの量も質も昨年とは飛躍的に違う。自宅から事務所までの道のりも交通機関を使い、また、大きなザックに寝袋まで詰め込んで「トレーニング」をかねてやってくる。
新たな挑戦者はそれぞれに様子が違う。去年からチャレンジを温めていた者、今年迷いに迷って不安な自分を乗り越え、思い切ってチャレンジを決めた者、漠然としたイメージの中で「何か」を求めてきた者…などなど。

新たな挑戦者の中には、山行イメージが固まらずなんとなく本番を迎えてしまったものもおり、それは彼らにとって「思いがけないしんどさ」をもたらすことになった。
しかしだからといって、この遠征が彼らにとってなんの成果ももたらさなかったかというとそうではない。「リアル」に触れた彼らは、やはり昨年のこども達がそうであったように、すべてのスケジュールを終えて「クリア」な雰囲気を得た。
つまり、「なんだかしっかりした感じ」を周りが感じるようになったのである。
昨年から引き続いての経験者は、昨年とはまた違った楽しさを見つけたに違いない。余裕がある分「仲間」というものが視野に入ってきていて、また、自分なりのチャレンジをそれぞれ持ってきていた。漠然としていた楽しさが、明確な形になり、更に大きくなったという感じ。

今年は梅雨明けが8月にずれこみ、また台風の影響もあってほぼ全日程雨という天候。山行予定を変更したり中止したりすることも多かった。自然、ベースキャンプで待機する時間も多くなったが、このような時間も彼らは「楽しい時間」に変えて上手に過ごしていた。キャンプ場に流れる小川や梓川(めちゃめちゃ冷たい!!)に入って遊んだり、蛇を捕まえたり(大きな青大将…)明神池前のカモを捕まえて反撃されたり、他のキャンパー達と交流して仲良くなっていたり、猛ダッシュの鬼ごっこをしてみたり、河童橋お土産を物色したり、遊びはつきない。どんな時も上手に楽しくすごしている。

8人というこどもの人数は、こどもの力が大きくなる感じがする。大人に対抗するだけのパワーをおびる。それは「こどもをコントロールできていない」感じがして大人を恐れさせるが、こどものパーソナリティースペースというかプライバシーができることは良いことだと感じる。
彼らはこどもの時間や空間をつかって、上高地の自然の中で大いに遊びこみ、自分たちの力で8人のチームにまとまっていった。それは大人がコントロールしたものよりも自然でダイナミックで見事だ。そうして得た体験や共有したものは、それ自体がとても自由で生き生きとしていて、彼らの成長と幸福に良い影響を与えたと感じる。

運営について

事前勉強会がこちらの準備不足もあり、思っていたようなレベルでの方向づけができなかった。
全体的には隊員同士顔合わせをし、なんとなくこのメンバーで行くのだ、という感じで終わってしまった。動機づけの部分では個人差が大きく、トレーニングや準備に励んだ者もいれば、認識できたがどのような準備をすれば良いかまではイメージ出来なかったもの、ほとんど認識できず何も行えなかった者など様々。結果的にそれらの差が本番で顕著にあらわれ、勉強会の如何によってはもう少し体験を引き上げられた者もいたように思う。
 ただ、終わって大きく全体から見ると上記の違いは微細なもの、という感じもする。事前勉強会のおおまかな機能は果たされていたと感じるし、本番の経験があまりにもリアルで大きすぎて、プログラムのいちいちこまかな成果の云々など、はっきりいってこれで吹き飛ばされてしまう。人が「重要だ」と思ってこまごま考えていることは、本当は意外とたいしたことではないような気がした。

 今回は、スタッフ・こども達ともにベースキャンプでの体調管理に力をいれた。軽量化を考えず、住居性の良いテントや出来るだけ通常通りの食事などを心がけた。上高地バスターミナルからキャンプ場まで距離がないのでこのような計画が可能になった。

食料計画
8/7(金)
雨・夜中雷雨
SAフードコート利用お弁当
8/8(土)
雨のち晴れ(休養)
お雑煮ホットケーキ・バタージャム・ケーキシロップカレーライス/米8合フルーツ・杏仁豆腐
8/9(日)
くもり時々雨
(前穂高)
ゆで卵とコーンビーフのサンドイッチ・スープ(行動食)スープ・味噌汁サンドイッチの残りなどきのこと青菜のごはん/米7合豚の味噌汁キムチ・韓国のり・梨
8/10(月)

(休養)
雑炊辛ラーメン(韓国の青とうがらし入り!)他、残り物色々。黒米ちらし寿司/米6合しめじ汁・高野豆腐オイルサーディン・杏仁豆腐
8/11(火)
晴れ(焼岳)
棒ラーメンお雑煮(行動食)棒ラーメンで軽食旅館夕食
8/12(水)旅館朝食道の駅お弁当

 大人がお茶の時間を楽しめるようにお茶類も色々各種取り揃えた。しっかり食べられたことは精神的にも余裕ができてよかった。
 今回は用意できなかったが、山行の朝は「カップめん」が便利でよさそう。あたたかいスープが一緒にとれて体を温められ、食事も取れる。調理もお湯を沸かすだけで簡単。早朝は寒いので、いかに早く温められるかは重要だった。(かさばるのが難点・・・)

プログラムの設定について

 昨年の経験者がいること、全体的に高学年がそろったことなどもあって、当初、スケジュール組みからこども達は出来るのではと思い(山の大きさや時間からチャレンジする山を調整してスケジュールを作成していくなど)ねらいに組み込んでいたが、蓋を開けてみると子ども達、まだその辺りの準備(興味)は出来ていなかった。
よって、今年も昨年とほぼ同じ設定。未知の世界に飛び込んでみる、自分にチャレンジしてみることで、自分の可能性を発見したり、自信を得たい、といった感じ。1年に1回の遠征だし、小学生の設定としては、この辺くらいかなと思っている。
 この遠征によってこども達はぽや〜んとした雰囲気から、一気にクリアな雰囲気をおびる。普段の活動でも生き生きとして、仲間にも活動にも積極的になり、楽しそうな感じが倍増、という雰囲気になるので、なかなか良いプログラムなのかもしれない。これは特別例会なんだけど・・・出来るだけ毎年企画してあげたいな、と思い始めた。
 時間があれば、次回は事前勉強会に「テント設営実習」なども組み入れても良いかも。
 なお、「8人」という数字はこのプログラムではぎりぎり。

総合評価

《全部を終えて・・・今思うこと。》※隊員の報告書から

『北アルプスちょうせん』 小学校5年生 男子
 今回の北アルプスちょうせんは、とてもなやんでいました。とても高い山だと母さんに聞いていたからです。でもぼくは、ちょうせんしたい気持ちでいっぱいでした。今までたくさんの山に登ったけど、まだまだ自分には力があると思っていたからです。
 北アルプスの天気はあまりよくありませんでした。雨がふったり、くもったり、晴れたり、雷が鳴ったり色々でした。でもいろいろな天気の山が見れてぼくは幸せでした。
 山登りはやっぱりとてもきつかったです。歩いても歩いても足がいたくなって頂上にはつきませんでした。頂上には絶対行きたかったのでがんばりました。しかも、岩ばかりでびっくりしました。ロッククライミングもしました。
 前穂高岳から見る景色は高い山がたくさん見えてとてもきれいでした。とてもつらかったけど、がんばったから良かったと思いました。登ったかいがあってよかったと思いました。こういうけいけんはなかなかできないなあ、と思いました。
 奥穂高岳には行けなかったけどよかったです。行ってたらたぶん死んでると思います。
 焼岳にも上がりました。もくもくとけむりが出てによう(いおう)のにおいがしました。へんな山だなと思いました。でも景色はとてもきれいです。山から見る景色はどこにいって最高です。
 へびをつかまえたり、カモの赤ちゃんをつかまえたりする人がいておもしろかったです。山の友達とも楽しくすごせてラッキーでした。
 僕は、本を読むのはきらいだけど、いろいろな景色の写真を見るのは好きです。でも写真の景色を見るより、本物の景色を見るほうがもっといいです。山のにおいや風は本にはないからです。
 北アルプスなやんだけど行って良かったです。がんばれば苦しくてもできるんだなあと思いました。今度は奥穂高岳にいきたいです。

『やっぱり山はいい!』 小学校5年生 女子
 6月18日に北アルプス遠征隊隊員募集のメールが来ました。その時、私はぜったいに行こうと思いすぐに「行きたいです。」と返事をしました。そして、行く山は、穂高でした。前より高い山だしマンガ『岳』に出てくる山だし前から山の本で見てかっこいいなと思っていた山だったので何が何でも隊員になりたいと思いました。隊員に決まるまでの間、去年がんばったので入れるかな〜?今年は無理かな〜?と不安でした。6月30日隊員に決定!!やった〜!!
 行くまでのトレーニングは、去年ほどは、できなかったけど近所の山の山頂まで何度か登ったり歩いて買い物に行ったり新聞配りをしました。トレーニングが山でいかされていたと思います。
 山に入っていきなり休養日になりました。でも、次の日の朝、前穂は、岩と石だらけで登山ぐつをはいていても足のうらがいたくなりました。あと、危険な場所がたくさんあり、まっさんの「ここに落ちたら死ぬぞ〜」と言う声を聞きながら一歩一歩慎重に歩きました。ずっと小雨だったけど、頂上でときどき雲の間から奥穂、上高地が見え感動でした。登ったかいがありました。一番の目標の奥穂には、残念ながら登れませんでした。残念、残念、残念・・・。
 次の日の西穂も中止。またまた残念。
 そして11日にやっと晴れました。晴れたときの景しきは、ばつぐんでした。
 焼岳は、見て分かるほど生きていて、いつふん火するかと思うと焼岳からできるだけ早く遠くににげたかったです。ふんえんは、なまあたたかくてますますこわくなりました。

 今回登った穂高は、険しくて、大きくて、きれいな山でした。8人のメンバーは、おもしろくて、やさしくて、山でも、キャンプ場でも、バスでも、ホテルでも楽しく過ごすことができました。
 まっさん、いのっち、サンギ、まゆちゃん、けいご、どいっち、いしばしそう、かげやま君、のむかん、こうき、いっしょに行ったみんなありがとう。
 やっぱり山はいいね〜〜〜〜最高〜〜〜!!

《アルピニズムの瞬間》
一番びっくりしたのは彼らが真剣に「西穂に行きたい」と思っていることだった。12時間30分、上高地から前穂高の往復、1600mの標高差をやり終えた日の夜のことである。
1600mの往復は通常大人でもやろうと思わない。出来なくはないがきついのである。
足が痛い。熱帯低気圧の影響か、はたまた水の多い上高地の風土のせいなのか、前穂高への道のりは小雨の中、登山中もむしむしと暑く、必要以上に疲労を促しもしていた。
西穂に行くなら明日しかない。しかし、足がもう痛い。体もきつい。
「明日はもう登りたくない。」
多分、こども達はそう言うだろうと予想した。こどもの体力である。休養日にするのが安全のためにも賢明だ。西穂は厳しい。
少しさびしい気持ちも感じながら、私は休養の判断をくだした。
「明日は一応休養日にするよ。でも、まっさんが西穂に行くそうです。行きたい人はまっさんについていってもいいですから、決めた人は準備もあるので事前に教えてください。」
すると彼らは、なんと真剣に悩み始めた!西穂高に行きたいという気持ちは、彼らの中で今生まれたばかりのように新鮮なままだったのだ。

「その山に行きたい。行ってみたい。」
どんな状況におかれても、そう言う気持ちを持っていること。なんと、こんなに小さくても、彼らは立派なアルピニストだった。明日は止めだな、と思った私のアルピニズムは、彼らのそれにくらべるとなんとひ弱なことか。

「あー!俺、こんなに真剣に悩んだの、生まれて初めて〜!あ〜どうしよ!!」と、ひとりの男の子がまったく頭をかかえて思わずこう唸った。山登りが彼にとってこんなにも真剣な選択肢になっている事実に私は心底衝撃を受けた。そして、そんな彼の人生の一瞬に立ち会えた幸福に心から感謝した。
「俺?俺は行くよ!」と、悩める者たちを尻目に、とっととデイバックの準備をする子。みんなが心揺れる中一人ゆるぎない彼は、悩みに悩みぬいて今年初めて北アルプスを決めた彼だった。
「ねえ、いのっち。来年も俺、選んでね?絶対よ、絶対!約束よ!?」
君はさっき、前穂もよたよた登っていたのだろう?あんなにきつい思いをして、今それが楽しかったと言えるのか。自分の目の前で起こっていることが信じられないような面持ちで、しかも感動的だった。

そして彼らの何人かが腹から絞り出すように決断した。「西穂に行く!」と。
リスクを背負い、自ら決断してからの彼らの行動はまったく見事だった。力強かった。
私も気合いを入れられた。彼らを西穂に連れて行こう。覚悟した。
「俺はいかない」と言っていた子でさえ、他の仲間が決断する姿に背中をおされ、夜の間に「行かない」から「行く」に変わっていたので、結局全員が行く気になって朝を迎えたらしい。
これはすごい山行になるぞ。

 8月10日(月)午前3時起床。日本の南で発生し、その後各地で大きな被害をもたらした台風9号が日本に向かって北上していた。盛り上がっていた西穂高の計画は、こうして台風によって強制的に中止となった。いつも間違いなく頂上を取れるのが山登りではないから、こんな経験も山登りのひとつである。

でも、もしあの西穂高山行がかなっていたら。どんな山行になったのだろう。たらればだけれど、思わず今でも想像してしまう。
幻の西穂高になってしまったけれど、私の中ではあの夜こそが今回の遠征の核心だったと思っている。あの夜の、力強くも頼もしいあの瞬間。ちいさなアルピニスト達のアルピニズムが立ち現れた、本当に見事な、最高の瞬間だった。

















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