NO団体名主な企画内容
47 宇城市立青海小学校(熊本県) 「ふるさとを愛し、豊かな心を育む体験活動 〜サトウキビ栽培から黒砂糖作りまでの全過程の取組を通して〜」
教育目標である、「ふるさとを愛し、夢に向かって頑張る子どもの育成」を目指した総合学習。ふるさとの産業の歴史や伝統文化について語れることができるように、30年前から続いている活動である。

速報レポート7 「通学合宿で、黒砂糖風味のデザートを作りました!」

日時   9月14日(水)~9月16日(金)
場所 郡浦地区市民館 
参加人数 4年生3人 5年生8人 6年生10人 行政職員3人 区長13人 補導員2人      
        高齢者学級2人 民生委員1人 学校職員6人 消防団6名 食生活改善推進員2人
        ボランティア(メディカルカレッジ青照館)4名 PTA会長等応援者10人 計70人
今回の活動の目的

活動全体のねらい
 通学合宿を通じて、地域と家庭(保護者)・学校が連携し、子どもたちを取り巻く地域社会が一体となって「地域の子どもは地域で育てる」心の醸成を図り、地域教育力の向上と地域活性化に寄与することを目的に実施する。また、地域住民の協力を得て、日常生活の基本的体験や集団生活を行い、感謝の気持ちや協力する心、仲間への思いやりの気持ちを培い、地域の次代を担うリーダーの育成を目指す。
子どものねらい
 異年齢の子どもたちが共同生活することにより、社会の中で自己を律しながら生きる力(責任感・協調性・他人を思いやる力・規範意識・我慢する力など)を育てる。
地域のねらい
 PTA・自治会・ボランティア団体等が協同することにより、地域教育のネットワークの拡大を図り、地域の子どもは地域で育む機運を高める。
家庭のねらい
 親にとって「子離れ」を体験するこの期間を、我が家の家庭教育を見直す機会とする。

活動内容

 2泊3日の共同生活をしながら通学する。(宿泊に関しては、子どもは全員、大人は数名が宿泊する。)

活動の様子

この活動は、平成17年度に始まってから12年目になった。始まった当初は、どのような進め方をするのか、地域の教育力をどのように活用するのかなど、社会教育を推進する教育行政のメンバーも、地域の中心になる方々も知恵を絞った。今では、青海小学校の校区である郡浦(こうのうら)地区と大岳(おおたけ)地区の二つの地区が役割を分担して、地域住民の理解により、実施できるようになった。昨年は大岳地区が担当したので、今年は郡浦地区が担当するというふうに、隔年ごとに通学合宿の中心的な役割を担う地域が、交代しながらこの取組を継続している。つまり、子どもたちを支援する区長や消防団などのメンバーについては、今年は郡浦地区から出るということである。
前述の目的に記しているが、地域の子どもは地域で育てるという思いで、効果的な取組が実践されている。サトウキビ作りの取組も、まさに地域の子どもは地域で育てることにつながっていて、通学合宿とサトウキビ作りの取組は、そのねらいで密接に関連している。どちらも子どもたちの健全育成の取組そのものであるともいえる。
学校まで徒歩で20分の距離に会議や調理、宿泊などができる郡浦市民館がある。2泊3日の、男子と女子の二部屋に別れた共同生活が始まった。
できる限り子ども自身に考えさせ、自分で動くようにさせ、生活の中で必要なことに取り組ませ、大人はできる限り、最小限のサポートを行う。1日の流れは次のようになる。起床は6:00、自分たちで起きる。洗面等を済ませ、食事の準備をする。包丁に慣れない子も、包丁を握る。食事の準備は自分たちで行うのが基本である。しっかり食べて、食器をてきぱきと洗う。身支度をしたら、全員で登校する。学校が終われば、全員一緒に下校する。郡浦市民館へ到着すれば、それぞれの役割分担での活動をする。買い物に行く班は、「にんじん500グラム」など、買い物リストのメモにあるものを手に入れるために集中する。掃除や洗濯などの班員は、その役割に集中する。準備が整ったら、夕食が始まる。通学合宿での「いただきます」「ごちそうさま」の意味は大きい。家庭でない空間で、家庭を思い出し、「食」の意味を子どもたちは考える。
食事の後は風呂に入りに行く。入浴施設ではなく、地域の方が自宅の風呂を提供するのである。子どもたちは、消防団の方々の車で、提供してくださる方の家へ行く。この地域で「もらい湯」という。素敵な響きの風呂である。まさに地域の温かさを肌で感じる取組である。子どもたちは、お風呂を頂き、感謝の言葉を述べた後、消防団の方の車で郡浦市民館へ向かう。帰ったら宿題をする。そして一日を反省して、22:00に眠る。
ゲームやテレビもなし。緊急の場合を除いて家との連絡もなし。生活の基本とは何か、大切なものは何か、大切なことは何かをしっかりと考える時間がここにある。一例に「はし」作りの時間にふれる。


自分が食事するときの「はし」は自分で作る。

ナイフよりも、竹を動かした方が削れるよ。

マイ「はし」の完成です。これでいただきます。

自分が食事をするための、食べるための「はし」を自分で作らなければならない。竹を小さく割った材料は、地域の方が山から切り出してきた。子どもたちは材料を手にし、ナイフを動かす。大人は安全のための指導を行ったら、後はできるだけ子どもに任せる。子どもたちは自分で考えて、ナイフを使う。ちょっと危なっかしい。間違えたら指や手を切るだろう。しかし、自分で生きるための作業を行う。子どもから尋ねられれば教えるという感じで、大人も自分の「はし」作りを行う。この「はし」作りの作業の説明が、そのまま通学合宿の精神の説明になると考える。
ナイフを使用するので、ちょっとした緊張感が走るが、豊かな心を育むことのできる、よき時間であった。
さて、いよいよ黒砂糖の料理についてである。合宿に限らず、規則正しい集団生活の中での食事の楽しみは非常に大きい。伝統的な技法で作られた黒砂糖を保存していた方からのプレゼントがあった。黒砂糖はデザートのお菓子作りに活用されることになった。


黒砂糖はこうすると、さくさく切れますよ。

ほんとだ。力を少し入れながら、押すように切ります。

切るというより、感じとしては削るだね。


「先生これでいいですか?」「はい、とてもいいですね。」

あちらでも、こちらでも、黒砂糖の準備が進みます。

「これを黒砂糖と混ぜて冷やすのよ。」

さわやかな黒砂糖の冷菓が完成した。冷蔵庫で冷やして、みんなで食べた。今年12月にサトウキビを収穫して、黒砂糖作りを行うが、その前に黒砂糖を用いたお菓子を作り、みんなで食べることができたので、関係者全員で喜んだ。12月10日(土)と12月11日(日)の二日間を振り替えて、サトウキビビの収穫から黒砂糖作りまで、全校児童、保護者、地域の方々と行う作業が楽しみである。
通学合宿の一部だけの報告になるが、子どもたちは、いろいろな場面で、たくさんのことを学んだ。


食べることは大切です。

掃除も大切です。

勉強も大切です。

通学合宿の最後には、一人一人に通学合宿の修了証が渡される。また、一人一人の感想発表もある。楽しく、そして、たくさんの思い出と、今後につながる学びを得た通学合宿も終わろうとしている。


2泊3日、力を合わせてがんばった人!

一人一人に修了証を渡します。

応援してくださった皆様、ありがとうございました。

最後に、閉校式で「あいさつ、思いやり、決まりを守る、感謝の心、責任を果たす」の「5つの取組目標」に迫ることができたか確認があった。子どもたち一人一人が自分の言動を振り返っていた。修了証は郡浦区長会長から渡された。そして、どの子も感想の発表が見事だった。
終了後、通学合宿のフィナーレのそうめん流しを行った。そして、子どもたちは満足した顔で、それぞれの保護者の迎えの車に乗り込んだ。

子どもの感想

 閉校式で、子どもたちに、「もし、今夜も泊まれるなら泊まりたい人?」と話をしたら、ほとんどの子どもが笑顔で「はい」と手を挙げた。感想発表では、通学合宿に参加してよかったという内容ばかりだった。〈5年生児童の感想〉
 通学合宿に参加して本当によかったです。最初の日に「はし」作りがありましたが、ナイフの使い方がとても難しかったです。でも、削り方を教えてもらい、自分の「はし」を作ることができました。できたときはとてもうれしかったです。ご飯もおかずも、とてもおいしかったです。自分の家では、掃除や洗濯をあまりしていなかったので、これからは家でも、通学合宿でしたように、やりたいです。お風呂も入らせてもらいましたが、とても親切にしてもらいました。うれしかったです。私も人に親切にしなければと思いました。2日間、郡浦市民館に泊まって、家族のありがたさがわかりました。来年も参加したいです。わたしたちのために、いろいろお世話してくださった大人の人に感謝したいと思います。本当にありがとうございました。

得たもの

 やはり、人と人とのつながりの中で生かされている自分たちであり、自分自身であることを自覚できたことに尽きるのではなかろうか。一例が「はし」作りである。自分で作った「はし」でご飯を食べることで、これまで当たり前だったことに変化が生じる。もったいないとか、ちゃんとしなければとか、日常の中で、軽んじていたり、見過ごしていたりすることに気がつく。自分たちが誰かのお陰で生活ができ、快適な環境を与えてもらっていることに対する感謝の心が湧いてくる。 



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