NO団体名主な企画内容
47 宇城市立青海小学校(熊本県) 「ふるさとを愛し、豊かな心を育む体験活動 〜サトウキビ栽培から黒砂糖作りまでの全過程の取組を通して〜」
教育目標である、「ふるさとを愛し、夢に向かって頑張る子どもの育成」を目指した総合学習。ふるさとの産業の歴史や伝統文化について語れることができるように、30年前から続いている活動である。

速報レポート11  「生き物となかよし(虫をさがそう~虫とさよなら)」

日時   9月21日(水)14:20~15:05
     ※「虫とさよなら」は10月4日(火)の放課後
場所   1年教室 サトウキビ畑 
参加人数 1年生10人 学校職員1人 (9月21日:虫をさがそう)
     1年生11人 学校職員2人 学校支援ボランティア1人 (10月4日:虫とさよなら)
今回の活動の目的

●生き物を大切にすることができる。
身近な生き物を探したり、飼ったりして、それらの生息環境や、変化や成長、生き物は生命を持っていることに気付き、生き物の立場ですみかや世話の仕方などを考え、生き物への親しみを持ち、適切な世話をし、大切にすることができるようにする。
●生き物を自分で育てたいという思いをもつ。
校庭や草むらなどで虫を探し、それらの生息している場所の特徴に気づくとともに、捕まえた虫を教室で飼育したいという思いを持つことができるようにする。

活動内容

●サトウキビ畑へ行き、虫を見つけ観察する。約2週間飼育し、再びサトウキビ畑へ行き、虫を逃がす。

活動の様子

1 サトウキビ畑にて
 生活科の授業では、これまでも校庭や畑でいろいろな虫を見つけ、観察したり、飼育したりしてきた。そこで、「教室から見えるサトウキビ畑にも虫たちはいるはずだ。行ってみたい。」ということになり、虫探しに行った。
 サトウキビ畑に着くと、子どもたちは、自分の背丈の倍以上に伸びたサトウキビと背比べをした。そして、サトウキビ畑の上を飛び回っているたくさんのトンボを見て大喜びだった。しばらくして、子どもたちに、サトウキビ畑の中にも虫がいると思うので、しっかり見るようにうながした。子どもたちは、サトウキビ畑の中を外から覗いて見た。しかし、しばらくは何も見つけることができず、「先生いません。」という声が、あちこちから聞こえてきた。そこで、「騒がずに静かにして、しっかり見て、聞いてみることが大事です。」と声をかけた。すると、虫たちの小さな鳴き声が聞こえてきた。みんな「聞こえた、聞こえた。」と言い、しばらく鳴き声を聞いていた。そして、「虫たちの鳴き声が、かわいい。きれい。」と言い合っていた。静かにじっとしていると、虫たちの小さな動きが見えてきた。バッタやコオロギがサトウキビの根元や草むらに隠れていたり、飛び回ったりしているのに気づいた。そして、サトウキビの葉でけがをしないように注意しながら、バッタやコオロギを捕まえた。とても楽しそうだった。


少しの間に、ずい分伸びたよね。

僕たちの背丈よりも、ずっと高いよ。

虫たちがいないね。静かにしてみよう。


何かな?小さな虫がいたよ。

こんなところにバッタがかくれていたよ。

コオロギがいっぱいいるよ。

2 教室に帰って
 教室に帰って、なぜはじめに虫たちを見つけることができなかったか話し合った。「虫たちの声が小さかったり、鳴かなかったりするからだろう。」「自分の体の色と似ているところにいるから、見つけられなかったのだろう。」「人間が来たから怖くてじっとしていたのだろう。」という感想が出た。高く伸びたサトウキビが生えている秋の畑は、虫たちの大切な住み家になっていることや、小さな虫の声なき声を、心で聞いてみようという話をすることができた。そして、虫かごに入れて、教室にもちかえった虫たちをしばらくの間、飼育することにした。
 そして、約2週間、子どもたちは、バッタやコオロギたちを飼育した。飼育は楽しい。しかし、虫の命に限りあることや、大切にしないと死んでしまうことなど、教室の中で、みんなで考えることができた。みんなで一緒に「限りある命」を考えることができたことが学びであった。

3 命を大切にする(虫とさよなら)
 10月4日(火)、サトウキビ畑に出かけて、虫たちにさよならした。大きなバッタも、コオロギも、しばらくの間一緒に生活した子どもたちの手から、元気よく離れていった。(何匹かの虫は、数日前に、担任が子どもたちと相談して、弱る前に、畑に返した。)子どもたちは、まだしばらくの間飼育したい気持ちの子どももいたが、担任が命の話をすると、子どもなりに「虫さんも生きているから、畑に帰った方がいいと思います。」と言うことができた。このような、担任と子どもの会話に、しっかりと生き物の命の重さを感じる内容があり、子どもに伝わっているということが、教育として大切なことではないかと思う。


いよいよ虫さんと、お別れです。ちょっとさびしい。

私たちの虫さんです。ほんとうは、もっと飼いたい。

一緒に連れて行こう。


さあ、サトウキビ畑に行きますよ。虫かごに注意!

足下に注意して、周りを見ながら畑に入ります。

みなさん、虫さんにさよならしてください。


ありがとう。

僕たちも、ありがとう。

虫さんたち、バイバイ。

サトウキビ畑で虫を逃がした後、教室に帰り、虫の気持ちを体で表現してみる活動を行った。子どもたちは、人間は気持ちを周りに伝えることができるけれど、虫は伝えることが難しいと感じることができた。人間には、表情がある。虫には表情がない。虫は自分が「いやだ」「きつい」「くるしい」など、人間に伝えることが難しいので、飼育するときには、人間がしっかりと虫のことを考えなければならないと、みんなで考えた。今回の飼育を通して、虫の飼育だけではなく、犬や猫、水槽の金魚など、自宅のペットの気持ちなども考えることができた子どもたちだった。黒板に「わらう」「なく」などの感情を表す言葉を書き、子どもたちに役割演技をしてもらったことは、楽しく、また、心に残る活動になった。


虫さんの気持ち。「うれしい」

虫さんの気持ち。「かなしい」

虫の命について、しっかり考えましたね。

得たもの

心優しい子どもたちである。虫に触るときにも、「そっと。」とか「やさしく。」とか声が出る。虫を教室で飼うにあたり、えさをきちんとやり、虫かごの掃除をすることや、弱る前に逃がすことなど、しっかりと理解することができた。「生き物の命」について、虫とのふれあいの中で、体験として感じることができたことが大きな学びであった。この速報レポートでは2コマの活動の紹介だけだが、約2週間の飼育活動の中には、たくさんの子どもたちのドラマがあった。みんなで一緒に「限りある命」を考えたことは、自分を大切にしたり、人を大切にしたりすることにもつながっていくと考える。
なにより、虫たちの命をサトウキビ畑と関連させて感じさせることができたことがよかった。1年生はサトウキビ畑のサトウキビが黒砂糖になることなどの理解は、まだ難しいところがある。12月に、実際にサトウキビから黒砂糖になる過程を体験するまでは、とりあえず畑のサトウキビそのものに興味をもたせることが大切である。今回の取組により、サトウキビ畑への興味・関心は高まった。



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